【完結】身勝手な旦那様と離縁したら、異国で我が子と幸せになれました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

文字の大きさ
116 / 122

116.お披露目のパレードが始まる!

しおりを挟む
 エンパイア風ドレスが運び込まれる。宮殿で結婚式に着たドレスとよく似たデザインだけど、色とスカート部分が大きく違った。宮殿で着た白と青のドレスは銀刺繍で、スカート部分は薄絹を何枚も重ねていた。

 こちらは胸元の白が徐々に黒く染まっていく。裾へ向かって、オスカルの髪色になるの。まるで彼自身に包まれたみたいだわ。それに刺繍が金糸で、スカートはシンプルに二枚が合わさる形だった。アルムニア公国の国花とされるイバラよ。大公家の紋章が、そのまま公国の象徴になっていた。

 全体に淡い印象の結婚式に比べ、強烈な束縛を感じる。それが嬉しいなんて、私ったら。もしかしたら違う意図かも知れないのに、妄想が激しくて恥ずかしいわ。

 赤い宝石は紅石ではなく、柘榴石だった。黒に合わせても浮かず、しっくりと馴染む。濃赤の柘榴石は、公国の鉱山で採れると聞いた。名産品を使うのは、とても素敵なアイディアね。

「準備が出来た? あら、髪を結わなかったのね」

 お母様に指摘された通り、今回は髪を流している。上の方だけ少し編んで、髪飾りを付けた。実はリリアナのアイディアなの。彼女も同じように銀髪を流し、人形のマリアも揃えた。

「私も揃えようかしら。あ、お母様に相談しなくちゃ」

 お母様は慌ただしく出ていく。明るい緑のドレスの裾を摘んで早足で遠ざかる後ろ姿を見ながら、リリアナと笑った。

「お祖母様、転ばないといいけど」

「平気よ。少なくとも私より運動が得意なの」

 エリサリデ公爵夫人である母の話題でリリアナと盛り上がり、支度の終わったリリアナと手を繋ぐ。幸いにして、彼女が風邪を引くことはなかった。それでも、心配でこうして触れてしまう。

「今日は何を運んでくれるのかしら」

「お披露目で使う花びらよ。これを馬車の上から撒くの」

 アルムニア公国は気候が温暖で、花びらから香水や香油を抽出する技術に優れていた。そのため、お披露目の馬車から季節の花を撒く習慣がある。国民も持ち寄った花びらを投げ、沿道を美しく彩るのだとか。

「お片付けが大変そうね」

「大丈夫です。前に見た結婚式では、花を食べるウサギを放していました」

 食べて片付けてくれるから、一石二鳥なのね。得意げに語るリリアナを撫でて「物知りね」と褒める。この子は褒めて育ててあげたい。きっと寂しがりやだわ。

 オスカルは黒に金刺繍、ラベンダーのシャツを選んだみたい。互いに互いの色を纏う。これから一緒に国を治めるのだから、相応しい装いね。こんな素敵なドレスが用意されてると思わなかったから、驚いたわ。

「ティナ、準備は……っ、す、すごく綺麗で……似合ってる」

 オスカルは入り口で固まってしまい、側近のアドリアンが後ろから突く。

「ご自分で手配して、何照れてるんですか。急いでください、時間が……うわっ、本当にお似合いですね」

 明るい髪色に暗い色のドレスはよく似合うのよ。微笑んでお礼を言い、隣でピンクのワンピースドレスを纏うリリアナを押し出した。

「こちらの淑女も見てあげて。とても可愛いんだから」

 口々に褒めてもらい、私達は機嫌よく歩き出した。ドレスの色が黒だから、金髪を流して目立たせる。刺繍と相まって、軽い印象になるわ。屋根のない馬車に乗り込むと、リリアナを真ん中に座らせた。

「いいの?」

「花びらを撒くのはリリアナのお仕事よ。私達は手を振るのに忙しいから、ここはリリアナの指定席」

 嬉しそうなリリアナの銀髪を、髪飾りに気をつけて撫でる。エルを膝に乗せた私も馬車に乗り込んだ。

 アルムニア公国の空は、やや薄曇り。パレードには良いお天気ね。
しおりを挟む
感想 360

あなたにおすすめの小説

虐げられていた次期公爵の四歳児の契約母になります!~幼子を幸せにしたいのに、未来の旦那様である王太子が私を溺愛してきます~

八重
恋愛
伯爵令嬢フローラは、公爵令息ディーターの婚約者。 しかし、そんな日々の裏で心を痛めていることが一つあった。 それはディーターの異母弟、四歳のルイトが兄に虐げられていること。 幼い彼を救いたいと思った彼女は、「ある計画」の準備を進めることにする。 それは、ルイトを救い出すための唯一の方法──。 そんな時、フローラはディーターから突然婚約破棄される。 婚約破棄宣言を受けた彼女は「今しかない」と計画を実行した。 彼女の計画、それは自らが代理母となること。 だが、この代理母には国との間で結ばれた「ある契約」が存在して……。 こうして始まったフローラの代理母としての生活。 しかし、ルイトの無邪気な笑顔と可愛さが、フローラの苦労を温かい喜びに変えていく。 さらに、見目麗しいながら策士として有名な第一王子ヴィルが、フローラに興味を持ち始めて……。 ほのぼの心温まる、子育て溺愛ストーリーです。 ※ヒロインが序盤くじけがちな部分ありますが、それをバネに強くなります ※「小説家になろう」が先行公開です(第二章開始しました)

【完結】虐げられて自己肯定感を失った令嬢は、周囲からの愛を受け取れない

春風由実
恋愛
事情があって伯爵家で長く虐げられてきたオリヴィアは、公爵家に嫁ぐも、同じく虐げられる日々が続くものだと信じていた。 願わくば、公爵家では邪魔にならず、ひっそりと生かして貰えたら。 そんなオリヴィアの小さな願いを、夫となった公爵レオンは容赦なく打ち砕く。 ※完結まで毎日1話更新します。最終話は2/15の投稿です。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

治療係ですが、公爵令息様がものすごく懐いて困る~私、男装しているだけで、女性です!~

百門一新
恋愛
男装姿で旅をしていたエリザは、長期滞在してしまった異国の王都で【赤い魔法使い(男)】と呼ばれることに。職業は完全に誤解なのだが、そのせいで女性恐怖症の公爵令息の治療係に……!?「待って。私、女なんですけども」しかも公爵令息の騎士様、なぜかものすごい懐いてきて…!? 男装の魔法使い(職業誤解)×女性が大の苦手のはずなのに、ロックオンして攻めに転じたらぐいぐいいく騎士様!? ※小説家になろう様、ベリーズカフェ様、カクヨム様にも掲載しています。

【完結】公爵令嬢に転生したので両親の決めた相手と結婚して幸せになります!

永倉伊織
恋愛
ヘンリー・フォルティエス公爵の二女として生まれたフィオナ(14歳)は、両親が決めた相手 ルーファウス・ブルーム公爵と結婚する事になった。 だがしかし フィオナには『昭和・平成・令和』の3つの時代を生きた日本人だった前世の記憶があった。 貴族の両親に逆らっても良い事が無いと悟ったフィオナは、前世の記憶を駆使してルーファウスとの幸せな結婚生活を模索する。

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!

仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。 ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。 理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。 ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。 マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。 自室にて、過去の母の言葉を思い出す。 マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を… しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。 そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。 ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。 マリアは父親に願い出る。 家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが……… この話はフィクションです。 名前等は実際のものとなんら関係はありません。

【完結】召喚された2人〜大聖女様はどっち?

咲雪
恋愛
日本の大学生、神代清良(かみしろきよら)は異世界に召喚された。同時に後輩と思われる黒髪黒目の美少女の高校生津島花恋(つしまかれん)も召喚された。花恋が大聖女として扱われた。放置された清良を見放せなかった聖騎士クリスフォード・ランディックは、清良を保護することにした。 ※番外編(後日談)含め、全23話完結、予約投稿済みです。 ※ヒロインとヒーローは純然たる善人ではないです。 ※騎士の上位が聖騎士という設定です。 ※下品かも知れません。 ※甘々(当社比) ※ご都合展開あり。

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

処理中です...