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71.種族の垣根を越える
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どこに居城を作るか、で揉めたんだって。ディー達は近くがいいと言うし、ヴラドおじさんは魔族の領域内を主張した。主張は、こないだ覚えたばかりの単語なの。きっと、こんな時に使うんだと思う。
「ここ?」
ディーの背中に乗った僕は、アガリに支えられてお城に着いた。お母さんはお父さんの背中に乗ってるけど、自分でも飛べるんだ。降りるためのお庭があって、お父さんとディーが並んでも平気なくらい広かった。
お庭から見上げるお城は、空から見るより大きい。僕も何度かここに来た。お部屋を作る時に、見てほしいと頼まれたの。お母さんは明るい色のカーテンが好き、とか。絨毯はふかふかがいいとか。そんな話をたくさんした。
僕のお家の雰囲気に似せて、このお城の家具は揃えてある。中に入って確認すると、やっぱり広かった。こないだ僕が見た時より、外の塔が増えている。
「魔族の威信をかけ、最上級の品質でご用意しました」
ヴラドおじさんは知らない単語ばかり使う。僕には分かりやすく話してくれるけど、お母さん相手だと難しかった。
「ルンの好みで色は合わせたが、変更は可能だ」
ディーはお父さんに説明し、僕と手を繋ぐ。お父さんはお母さんの腰を抱いて、一緒に歩いていた。少し後ろを歩きながら、にこにこしてしまう。
二人が凍ってから、僕は何度も会いに行った。でもいつも二人とも動かなくて、触ろうとしても届かなかった。温かくないし、声も聞こえない。だけど、今は動いているんだよ。
嬉しいな。踊るみたいに足がぴょんぴょんしちゃう。
「ルン、ここで暮らすことになるけれど、大丈夫?」
お母さんの質問に、僕は首を傾げた。家族だから一緒に住むのは普通だよ。
「皆と離れてしまうが」
お父さんも変なことを言い出した。きょとんとした後、僕は繋いだ手を引っ張る。ディーは屈んで視線を合わせた。まっすぐに目を見て尋ねる。
「ディー、お父さん達が変だよ」
「いいや、そうじゃない。まだ説明していないから、勘違いしているんだ」
勘違い? じゃあ、説明したらいいんだね。
「あのね、皆でここに住むの。だから大きいんだよ。僕はずっと一緒なの」
今度はお母さん達の首が傾いた。不思議そうにしている。僕の説明は、いつも伝わらないんだよね。何が悪いんだろう。
「アガリ、お願い」
「はい」
僕の代わりに、アガリが説明してくれた。このお城は人間以外の象徴となる。今までは領域を分けてきたけど、皆で一緒に暮らす。魔王と竜王が同じ城に入り、魔族の領域と竜族の領土を併合する予定だった。
全部を混ぜて自由に住めるように変更する。寒いところが好きな竜は北へ移動するし、暖かい土地を目指す魔族は南へ。無理して区別しなくなる。好きなところへ住んでもいい。
両手を広げて一緒に説明した。魔族は北で竜が中央、南は人間がいる。その形が崩れたなら、この際完全に壊してしまえとなった。だからお城は、両方の種族が集まりやすいように、真ん中の土地に作る。それがここだよ。
じっと聞いていたお父さんとお母さんは、顔を見合わせてから微笑んだ。ヴラドおじさんも、ディーも、皆で説得したんだ。僕も手伝ったの。
偉かったねと褒めてもらい、僕は嬉しくなって声を出して笑った。
「ここ?」
ディーの背中に乗った僕は、アガリに支えられてお城に着いた。お母さんはお父さんの背中に乗ってるけど、自分でも飛べるんだ。降りるためのお庭があって、お父さんとディーが並んでも平気なくらい広かった。
お庭から見上げるお城は、空から見るより大きい。僕も何度かここに来た。お部屋を作る時に、見てほしいと頼まれたの。お母さんは明るい色のカーテンが好き、とか。絨毯はふかふかがいいとか。そんな話をたくさんした。
僕のお家の雰囲気に似せて、このお城の家具は揃えてある。中に入って確認すると、やっぱり広かった。こないだ僕が見た時より、外の塔が増えている。
「魔族の威信をかけ、最上級の品質でご用意しました」
ヴラドおじさんは知らない単語ばかり使う。僕には分かりやすく話してくれるけど、お母さん相手だと難しかった。
「ルンの好みで色は合わせたが、変更は可能だ」
ディーはお父さんに説明し、僕と手を繋ぐ。お父さんはお母さんの腰を抱いて、一緒に歩いていた。少し後ろを歩きながら、にこにこしてしまう。
二人が凍ってから、僕は何度も会いに行った。でもいつも二人とも動かなくて、触ろうとしても届かなかった。温かくないし、声も聞こえない。だけど、今は動いているんだよ。
嬉しいな。踊るみたいに足がぴょんぴょんしちゃう。
「ルン、ここで暮らすことになるけれど、大丈夫?」
お母さんの質問に、僕は首を傾げた。家族だから一緒に住むのは普通だよ。
「皆と離れてしまうが」
お父さんも変なことを言い出した。きょとんとした後、僕は繋いだ手を引っ張る。ディーは屈んで視線を合わせた。まっすぐに目を見て尋ねる。
「ディー、お父さん達が変だよ」
「いいや、そうじゃない。まだ説明していないから、勘違いしているんだ」
勘違い? じゃあ、説明したらいいんだね。
「あのね、皆でここに住むの。だから大きいんだよ。僕はずっと一緒なの」
今度はお母さん達の首が傾いた。不思議そうにしている。僕の説明は、いつも伝わらないんだよね。何が悪いんだろう。
「アガリ、お願い」
「はい」
僕の代わりに、アガリが説明してくれた。このお城は人間以外の象徴となる。今までは領域を分けてきたけど、皆で一緒に暮らす。魔王と竜王が同じ城に入り、魔族の領域と竜族の領土を併合する予定だった。
全部を混ぜて自由に住めるように変更する。寒いところが好きな竜は北へ移動するし、暖かい土地を目指す魔族は南へ。無理して区別しなくなる。好きなところへ住んでもいい。
両手を広げて一緒に説明した。魔族は北で竜が中央、南は人間がいる。その形が崩れたなら、この際完全に壊してしまえとなった。だからお城は、両方の種族が集まりやすいように、真ん中の土地に作る。それがここだよ。
じっと聞いていたお父さんとお母さんは、顔を見合わせてから微笑んだ。ヴラドおじさんも、ディーも、皆で説得したんだ。僕も手伝ったの。
偉かったねと褒めてもらい、僕は嬉しくなって声を出して笑った。
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