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本編
第54話 召喚された将軍の本音
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あの小生意気なヘーファーマイアー公爵領を占拠して、彼らの財産を没収するつもりだった。散々貯め込んだ財を吐き出させ、顔と体つきは優れた傲慢な女を地に這わせ、許しを請うまで犯す。それが正義だと、あの白い女も言っていた。
大人しく従うなら、アゼリアを手元で飼ってやってもいい。獣のように首輪と鎖でつなぎ、裸で人前を歩かせて辱めてやろう。そのくらい当然だ。王太子である俺を馬鹿にしたのだから。王都の民も賛成してくれた。だから各々が手に武器を持ち、街道を歩き続ける。
あと少しでたどり着くところで、漆黒の獣に襲われた。最大国家ユーグレースの王太子を襲う獣と兵や民がぶつかるが……あっという間に別の男によって倒されていく。何が起きたのか、混乱する現場で王太子ヨーゼフは金髪をかき乱した。苛立ちが頂点に達する。
誰も彼もが俺に逆らいやがって――。
そこでヨーゼフの意識は途絶えた。誘導されるように吐き出した本音は、嫉妬と見当違いの憤怒に穢された汚い欲ばかりだ。大人しく聞いていたメフィストが溜め息をつく。足元に転がってきた首を前に、唸る主君へ苦言を呈した。
「陛下、勝手に殺してはなりません。まだ使い道があるのですよ」
「……我が妻となるアゼリアへの暴言を許せと申すか!」
「許さずとも結構です。そもそも簡単に殺してしまったら、これ以上苦痛を与えられないではありませんか。そのような温情を与えるのは間違っております」
宰相として魔王へ意見するメフィストは、ヤギの角を露わにした第二形態で首を横に振る。執事のように主君を立てて控える一面もあるが、残虐で容赦ない本性を併せ持つ魔族だった。高位の魔族ほど残虐性は強くなり、魔王イヴリースはそれを第一形態という仮の姿で抑え込んでいる。
獣の姿になれば、本性も本能も解放される最強の魔族は、苛立ちに牙を剥いて叫んだ。
「ならばなんとかせよっ」
怒りに任せて引き千切った顔は、激痛と恐怖に歪んでいた。金髪を掴んで拾い上げたメフィストは、仕方ないと苦笑いして部下を呼び出す。魔王の側近として名を馳せる魔王軍の指揮官であり、将軍職を預かる女性だった。
「バール――ゴエティアの首領たる者よ。我が主イヴリース様の名において、汝を召喚す」
最後まで詠唱する前に、愛らしい猫が飛び出した。全身がグレーのビロードに似た毛並みを持ち、割れた3本の尻尾以外は普通の猫に見える。にゃーと愛らしく鳴いた直後、イヴリースを視界に収めると猫はすぐに煙に包まれた。
その場に美しい女性が現れる。胸は薄いがくびれた腰やまろやかな臀部は、彼女の魅力を引き立てた。身体の線を強調するぴたりとした軍服を纏う、褐色の肌を持つ美女は長い金髪を揺らして膝をつく。
「我が君に忠誠を」
「よい。この首をつけろ」
嫌そうに命じる主君と、肩を竦めて呆れ半分の宰相を眺め……美女は不思議そうに口を開く。
「これ……でございますか?」
「急げ」
苛立った様子の魔王に頭を下げて生首を受け取ったバールは、困惑しながら転がる死体と首を並べて復元を試みる。不死鳥の血脈である魔王軍の女将軍は、己の指を噛み切った血を垂らして黄泉返りの術を施しながら、王太子ヨーゼフの顔をじっくり眺めた。
主君が興味をもつような存在ではなさそうだ。
「……変な顔」
ぽつりと零れた本音に、メフィストが吹き出した。
大人しく従うなら、アゼリアを手元で飼ってやってもいい。獣のように首輪と鎖でつなぎ、裸で人前を歩かせて辱めてやろう。そのくらい当然だ。王太子である俺を馬鹿にしたのだから。王都の民も賛成してくれた。だから各々が手に武器を持ち、街道を歩き続ける。
あと少しでたどり着くところで、漆黒の獣に襲われた。最大国家ユーグレースの王太子を襲う獣と兵や民がぶつかるが……あっという間に別の男によって倒されていく。何が起きたのか、混乱する現場で王太子ヨーゼフは金髪をかき乱した。苛立ちが頂点に達する。
誰も彼もが俺に逆らいやがって――。
そこでヨーゼフの意識は途絶えた。誘導されるように吐き出した本音は、嫉妬と見当違いの憤怒に穢された汚い欲ばかりだ。大人しく聞いていたメフィストが溜め息をつく。足元に転がってきた首を前に、唸る主君へ苦言を呈した。
「陛下、勝手に殺してはなりません。まだ使い道があるのですよ」
「……我が妻となるアゼリアへの暴言を許せと申すか!」
「許さずとも結構です。そもそも簡単に殺してしまったら、これ以上苦痛を与えられないではありませんか。そのような温情を与えるのは間違っております」
宰相として魔王へ意見するメフィストは、ヤギの角を露わにした第二形態で首を横に振る。執事のように主君を立てて控える一面もあるが、残虐で容赦ない本性を併せ持つ魔族だった。高位の魔族ほど残虐性は強くなり、魔王イヴリースはそれを第一形態という仮の姿で抑え込んでいる。
獣の姿になれば、本性も本能も解放される最強の魔族は、苛立ちに牙を剥いて叫んだ。
「ならばなんとかせよっ」
怒りに任せて引き千切った顔は、激痛と恐怖に歪んでいた。金髪を掴んで拾い上げたメフィストは、仕方ないと苦笑いして部下を呼び出す。魔王の側近として名を馳せる魔王軍の指揮官であり、将軍職を預かる女性だった。
「バール――ゴエティアの首領たる者よ。我が主イヴリース様の名において、汝を召喚す」
最後まで詠唱する前に、愛らしい猫が飛び出した。全身がグレーのビロードに似た毛並みを持ち、割れた3本の尻尾以外は普通の猫に見える。にゃーと愛らしく鳴いた直後、イヴリースを視界に収めると猫はすぐに煙に包まれた。
その場に美しい女性が現れる。胸は薄いがくびれた腰やまろやかな臀部は、彼女の魅力を引き立てた。身体の線を強調するぴたりとした軍服を纏う、褐色の肌を持つ美女は長い金髪を揺らして膝をつく。
「我が君に忠誠を」
「よい。この首をつけろ」
嫌そうに命じる主君と、肩を竦めて呆れ半分の宰相を眺め……美女は不思議そうに口を開く。
「これ……でございますか?」
「急げ」
苛立った様子の魔王に頭を下げて生首を受け取ったバールは、困惑しながら転がる死体と首を並べて復元を試みる。不死鳥の血脈である魔王軍の女将軍は、己の指を噛み切った血を垂らして黄泉返りの術を施しながら、王太子ヨーゼフの顔をじっくり眺めた。
主君が興味をもつような存在ではなさそうだ。
「……変な顔」
ぽつりと零れた本音に、メフィストが吹き出した。
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