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本編
第138話 援軍と参謀の安売り
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戦場が足りない。その言葉に含まれた意味に、クリストフが笑い出した。
「なるほど、援軍が集まり過ぎましたか」
「ええ。我が主君が魔王軍の精鋭を連れて参戦した上、獣国ルベウスが150人規模の派兵をしております」
お分かりいただけて幸いと告げるメフィストは、さっさと立ち上がって仕事を終えてしまおうと考えていた。だから結論を急ぐ。他国の王族だとて、いつまでも相手をするほど暇ではなかった。
「転移魔法陣を刻みますので、場所をご提供いただきたい」
「承知した。こちらへ」
兄王が頷くのを確認し、王弟クリストフは将軍としての正装で踵を返した。ひらりと揺れるマントを追い、メフィストは歩き出す。くるりと巻いた角を隠さない態度を、クリストフは好ましく思った。
「この場なら問題ない」
城門外のロータリーを見回し、メフィストは両手を広げた。その後ろへ下がった王弟に頷き、かつんと踵を鳴らす。直後に踵から光が走って魔法陣が形成される。すでに対となる魔法陣が存在するため、複雑な設計は不要だった。しっかりと石畳に焼き付ける魔法陣がぐるりと円を描いて止まる。内側の文字が刻まれ、最後にわずかな光を放った。
「刻んでおきましたので、多少の魔力を流せば数年は使えます」
常時発動が可能なタイプだと告げ、手本を見せるように魔力を注ぐ。再び光った魔法陣から獣の耳や尻尾を持つ逞しい兵士が現れた。南端のベリル国の地を踏んだ獣人達は、思わぬ敵に顔をしかめる。
「じめじめする」
「暑い……」
「この臭い、なんだ?」
海に接してないルベウスの民は、潮の匂いや湿気の多い暑さに驚く。次々と魔法陣から押し出された兵士達は、すぐに城門へ向かって整列した。
「援軍の皆様の勇気に感謝を。ベリル国将軍クリストフだ。開戦は明朝ゆえ、今夜は宿を用意させよう」
「出迎えに感謝いたします。ルベウス国で将軍職を預かるマルクスと申します」
熊や狼など大柄な種族中心にまとめられた志願兵を率いるのは、予想外にも小柄な青年だった。まだ成人したかどうか。目に眩しい金髪に緑の瞳、穏やかな笑みを浮かべるが放つ覇気は強い。
「黄金の虎将軍とは、随分と奮発しましたね」
メフィストが眼鏡の縁に触れながら呟く。その肩書は、人間より魔族の間で有名だろう。数年前に魔国で小さな小競り合いがあった。混乱に乗じて、一部の魔族が隣国ルベウスへ入り込む。獣国に被害を及ぼす前に討伐せよと命じられた魔王軍だが、女将軍バールが駆けつけた隣国はすでに侵入者を排除していた。
暴れる魔族を退治したのが、当時まだ少年だったマルクスだ。その時の圧倒的な強さと功績で将軍職を得たのは、魔国では有名な話だった。
「それほど大した者ではありませんよ」
単純な謙遜なのか、逆に牽制しているのか。穏やかな表情からは判断できず、メフィストは笑顔を返した。
「これはまたご謙遜を。このまま帰るつもりでしたが、折角です。私を参謀に据えてみませんか」
この若者の実力をわずかでも見ておきたい。そんな欲に駆られ、魔国の宰相は己を売り込んだ。
「なるほど、援軍が集まり過ぎましたか」
「ええ。我が主君が魔王軍の精鋭を連れて参戦した上、獣国ルベウスが150人規模の派兵をしております」
お分かりいただけて幸いと告げるメフィストは、さっさと立ち上がって仕事を終えてしまおうと考えていた。だから結論を急ぐ。他国の王族だとて、いつまでも相手をするほど暇ではなかった。
「転移魔法陣を刻みますので、場所をご提供いただきたい」
「承知した。こちらへ」
兄王が頷くのを確認し、王弟クリストフは将軍としての正装で踵を返した。ひらりと揺れるマントを追い、メフィストは歩き出す。くるりと巻いた角を隠さない態度を、クリストフは好ましく思った。
「この場なら問題ない」
城門外のロータリーを見回し、メフィストは両手を広げた。その後ろへ下がった王弟に頷き、かつんと踵を鳴らす。直後に踵から光が走って魔法陣が形成される。すでに対となる魔法陣が存在するため、複雑な設計は不要だった。しっかりと石畳に焼き付ける魔法陣がぐるりと円を描いて止まる。内側の文字が刻まれ、最後にわずかな光を放った。
「刻んでおきましたので、多少の魔力を流せば数年は使えます」
常時発動が可能なタイプだと告げ、手本を見せるように魔力を注ぐ。再び光った魔法陣から獣の耳や尻尾を持つ逞しい兵士が現れた。南端のベリル国の地を踏んだ獣人達は、思わぬ敵に顔をしかめる。
「じめじめする」
「暑い……」
「この臭い、なんだ?」
海に接してないルベウスの民は、潮の匂いや湿気の多い暑さに驚く。次々と魔法陣から押し出された兵士達は、すぐに城門へ向かって整列した。
「援軍の皆様の勇気に感謝を。ベリル国将軍クリストフだ。開戦は明朝ゆえ、今夜は宿を用意させよう」
「出迎えに感謝いたします。ルベウス国で将軍職を預かるマルクスと申します」
熊や狼など大柄な種族中心にまとめられた志願兵を率いるのは、予想外にも小柄な青年だった。まだ成人したかどうか。目に眩しい金髪に緑の瞳、穏やかな笑みを浮かべるが放つ覇気は強い。
「黄金の虎将軍とは、随分と奮発しましたね」
メフィストが眼鏡の縁に触れながら呟く。その肩書は、人間より魔族の間で有名だろう。数年前に魔国で小さな小競り合いがあった。混乱に乗じて、一部の魔族が隣国ルベウスへ入り込む。獣国に被害を及ぼす前に討伐せよと命じられた魔王軍だが、女将軍バールが駆けつけた隣国はすでに侵入者を排除していた。
暴れる魔族を退治したのが、当時まだ少年だったマルクスだ。その時の圧倒的な強さと功績で将軍職を得たのは、魔国では有名な話だった。
「それほど大した者ではありませんよ」
単純な謙遜なのか、逆に牽制しているのか。穏やかな表情からは判断できず、メフィストは笑顔を返した。
「これはまたご謙遜を。このまま帰るつもりでしたが、折角です。私を参謀に据えてみませんか」
この若者の実力をわずかでも見ておきたい。そんな欲に駆られ、魔国の宰相は己を売り込んだ。
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