【完結】聖女と結婚ですか? どうぞご自由に 〜婚約破棄後の私は魔王の溺愛を受ける〜

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

文字の大きさ
151 / 238
本編

第148話 策を練り、実行する娯楽

しおりを挟む
「さすがは勇猛果敢なユーグレース王国の跡取り」

「王太子殿下の御威光を知らしめましょうぞ」

 適当な煽て文句に踊るヨーゼフはご機嫌だった。あの恐ろしい化け物の巣に囚われ、一時期は死も覚悟したが……今になれば、あの恐ろしい場を堪えられたのも有能な俺のおかげだろう。側近達の笑顔に促され、戦の先陣を切ると言い始めた。

 当然、こちらとしては断る要因がない。問題は兵士だった。貴重な自国の兵力をこの阿呆に預けるのは気が引ける。だが有志を募ったとて集まらないのは目に見えていた。そこで高みの見物を決め込んだ4つの国に、ヨーゼフの名で兵力の要請書類を出す。

 残りの国々は賛同したぞ。そう書くことで、利権にあぶれまいと各国は兵を貸し出した。その「残りの国々」という表現が曖昧なことが、侯爵の策略なのだ。渋々だが自国の兵を多少出すことにより、曖昧な言い回しが現実味を増す。焦った他国の王族や将軍の顔を見ながら、侯爵は多少留飲を下げた。

 ベリル国に戦を仕掛けた5か国の中に唯一、女神信仰の国がある。国教の教義と女神のご加護を他国に見せつけようと、魔力による治癒を行える聖女が同行していた。実際に治癒能力を造作もなく使いこなす魔族から見たら、力の弱い魔術師風情に過ぎないが……。

 侯爵が所属するスフェーン国とベリル国の間にあるフローライト国だ。女神フローライトの名を、そのまま国と国教の名に戴いた小国だった。独特な文化があるが、治癒能力に恵まれた子供が生まれる事があり、なぜか女性ばかりだったことから、聖女と呼ばれるようになった。

 長い歴史を持つ魔族の記録を見ることができれば、その成り立ちがよくわかる。治癒に関する魔法が使える子どもが生まれるのは、フローライト国の地下に巨大なドラゴンが眠っているためだ。3代ほど前の魔王が封じた好敵手だった。

 ドラゴンが雌だったこともあり、生命を宿す女児に治癒能力が顕現し続ける。男では魔力を宿す子宮がないのだ。単純にそこまで解明された事実を、メフィストが知らないはずはない。そしてこの話を聞いたヨーゼフが自国の「聖女」制度を勘違いし、アゼリア姫に恥をかかせた事実も。

 ならば彼にも相応の恥をかいて死んでもらいましょう。魔族の手を汚すことなく、欲に塗れた脂肪の塊を処分する方法に策を練るのは、メフィストにとって娯楽だった。

 他国の聖女の話を聞いて勘違いし、自国で見つけたエルザを聖女として祭り上げた。それが勘違いだと知った後、彼が他国の聖女を見てどう判断するか。

「楽しみですね」

「被害者が出ないことを祈ります」

 メフィストの言葉の意味を、これから起きる戦場の結果だと思ったオスカーが静かに答えた。この答えは的外れだが、ベリル国の王弟に明かす必要はない。獣国の精鋭が牙を立て爪を研ぐ戦場へ、誘導するベリル国の兵士や騎士によって5カ国の兵士は追い込まれる。それに対する返答に頷き、メフィストは穏やかに口を開いた。

「ご安心ください。負けることはありませんよ」
しおりを挟む
感想 109

あなたにおすすめの小説

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。

ラディ
恋愛
 一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。  家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。  劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。  一人の男が現れる。  彼女の人生は彼の登場により一変する。  この機を逃さぬよう、彼女は。  幸せになることに、決めた。 ■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です! ■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました! ■感想や御要望などお気軽にどうぞ! ■エールやいいねも励みになります! ■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。 ※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

聖女は友人に任せて、出戻りの私は新しい生活を始めます

あみにあ
恋愛
私の婚約者は第二王子のクリストファー。 腐れ縁で恋愛感情なんてないのに、両親に勝手に決められたの。 お互い納得できなくて、婚約破棄できる方法を探してた。 うんうんと頭を悩ませた結果、 この世界に稀にやってくる異世界の聖女を呼び出す事だった。 聖女がやってくるのは不定期で、こちらから召喚させた例はない。 だけど私は婚約が決まったあの日から探し続けてようやく見つけた。 早速呼び出してみようと聖堂へいったら、なんと私が異世界へ生まれ変わってしまったのだった。 表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ――――――――――――――――――――――――― ※以前投稿しておりました[聖女の私と異世界の聖女様]の連載版となります。 ※連載版を投稿するにあたり、アルファポリス様の規約に従い、短編は削除しておりますのでご了承下さい。 ※基本21時更新(50話完結)

死んでるはずの私が溺愛され、いつの間にか救国して、聖女をざまぁしてました。

みゅー
恋愛
異世界へ転生していると気づいたアザレアは、このままだと自分が死んでしまう運命だと知った。 同時にチート能力に目覚めたアザレアは、自身の死を回避するために奮闘していた。するとなぜか自分に興味なさそうだった王太子殿下に溺愛され、聖女をざまぁし、チート能力で世界を救うことになり、国民に愛される存在となっていた。 そんなお話です。 以前書いたものを大幅改稿したものです。 フランツファンだった方、フランツフラグはへし折られています。申し訳ありません。 六十話程度あるので改稿しつつできれば一日二話ずつ投稿しようと思います。 また、他シリーズのサイデューム王国とは別次元のお話です。 丹家栞奈は『モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します』に出てくる人物と同一人物です。 写真の花はリアトリスです。

追放聖女の再就職 〜長年仕えた王家からニセモノと追い出されたわたしですが頑張りますね、魔王さま!〜

三崎ちさ
恋愛
メリアは王宮に勤める聖女、だった。 「真なる聖女はこの世に一人、エミリーのみ! お前はニセモノだ!」 ある日突然いきりたった王子から国外追放、そして婚約破棄もオマケのように言い渡される。 「困ったわ、追放されても生きてはいけるけど、どうやってお金を稼ごうかしら」 メリアには病気の両親がいる。王宮で聖女として働いていたのも両親の治療費のためだった。国の外には魔物がウロウロ、しかし聖女として活躍してきたメリアには魔物は大した脅威ではない。ただ心配なことは『お金の稼ぎ方』だけである。 そんな中、メリアはひょんなことから封印されていたはずの魔族と出会い、魔王のもとで働くことになる。 「頑張りますね、魔王さま!」 「……」(かわいい……) 一方、メリアを独断で追放した王子は父の激昂を招いていた。 「メリアを魔族と引き合わせるわけにはいかん!」 国王はメリアと魔族について、何か秘密があるようで……? 即オチ真面目魔王さまと両親のためにお金を稼ぎたい!ニセモノ疑惑聖女のラブコメです。 ※小説家になろうさんにも掲載

処刑された王女は隣国に転生して聖女となる

空飛ぶひよこ
恋愛
旧題:魔女として処刑された王女は、隣国に転生し聖女となる 生まれ持った「癒し」の力を、民の為に惜しみなく使って来た王女アシュリナ。 しかし、その人気を妬む腹違いの兄ルイスに疎まれ、彼が連れてきたアシュリナと同じ「癒し」の力を持つ聖女ユーリアの謀略により、魔女のレッテルを貼られ処刑されてしまう。 同じ力を持ったまま、隣国にディアナという名で転生した彼女は、6歳の頃に全てを思い出す。 「ーーこの力を、誰にも知られてはいけない」 しかし、森で倒れている王子を見過ごせずに、力を使って助けたことにより、ディアナの人生は一変する。 「どうか、この国で聖女になってくれませんか。貴女の力が必要なんです」 これは、理不尽に生涯を終わらされた一人の少女が、生まれ変わって幸福を掴む物語。

処理中です...