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本編
第199話 証人をここへ
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「罪人扱いする気か! 出せっ、そこの、はやく開けろ」
騎士を指さし出せと命じるが、侯爵の命令に従う者はいない。そもそも開けようにも扉も錠も存在しない檻だった。魔法で作る結界の応用なので、出入り口は必要ない。術を掛けたイヴリースが魔力を遮断すれば、すぐにでも解除されるのだから。
「カバは寡黙な動物だと思っておりましたわ」
ヴィルヘルミーナが眉を顰めた。この後に及んで逃げるつもりなのも、自分の命令を聞く者がいると考えている辺りも、明らかにおかしい。
ゾンマーフェルト侯爵の騒ぎで、王妃の舞台が中断した。むっとした顔の国王ノアールが、イヴリースに尋ねる。
「口を塞いでもらえますかな?」
「鼻も塞げばよいではないか」
「陛下、それでは息が止まります」
イヴリースの恐ろしい提案に、メフィストが待ったをかける。呼吸ごと止めるのは早すぎると、檻の周りに音を遮断する結界をメフィストが作った。だが断罪の内容が当人に聞こえるよう、一方通行にするのは忘れない。この辺りが黒い性格が滲んでいた。
「では続けましょう。まず、私の話を聞いた貴族の皆様は気づいているでしょうね。私は病のような症状だったのです。毒を盛られた、という表現はおかしいですわ」
病で死んで生き返った。そう聞こえるよう印象を操作したのに、毒殺と言い切ったのは妙だ。ざわつく貴族の疑いの眼差しが、ゾンマーフェルト侯爵の檻に注がれる。
「それから……証人が死んだ、と断言しましたね。残念ですが、生きておりますわ。牢を襲撃されましたけれど、その話を知っているのは数人の牢番だけ。彼らは魔法による誓約で口止めをしております」
笑顔で続けた衝撃の内容に、ゾンマーフェルト侯爵も周囲の貴族も固まった。ぎぎぎ……と軋んだ音がしそうなぎこちなさで、ゾンマーフェルト侯爵が王妃を見る。そんな侯爵を貴族達が凝視した。
音が消えたような空間で、ブリュンヒルデが声を上げた。
「証人をここへ」
騎士に付き添われた形の料理人が現れる。震えながら、俯いていた。ゾンマーフェルト侯爵と絶対に目を合わせない。肉食獣の前の小動物状態だった。滝のように汗が流れ、それをハンカチではなくタオルで拭う。
「あなたが依頼された役割を証言できますか?」
「は、はは、はいぃっ」
王妃の暗殺未遂事件に関わった不名誉を、証言により軽くしてもらえる。確実に主犯を捕らえて罰するから報復はない。そう確約された彼は、話し終えたらクリスタ国へ亡命予定だった。
「何を依頼されましたか」
ここで質問役はメフィストが引き継いだ。笑顔のブリュンヒルデに代わり、証人の前に立った灰色の髪の悪魔に、証人は震えながら必死で言葉を紡いだ。
「……毒を、渡された瓶の中身……を、王妃、様のスープ、へ」
そこで一度唇を噛み締めて覚悟を決めたらしい。一気に言い切った。
「王妃様のスープに入れろ、と言われました!」
貴族達のざわめきが大きくなり、ゾンマーフェルト侯爵を責める声が混じり始める。
断罪の舞台は、まだ演目が残っていた。
騎士を指さし出せと命じるが、侯爵の命令に従う者はいない。そもそも開けようにも扉も錠も存在しない檻だった。魔法で作る結界の応用なので、出入り口は必要ない。術を掛けたイヴリースが魔力を遮断すれば、すぐにでも解除されるのだから。
「カバは寡黙な動物だと思っておりましたわ」
ヴィルヘルミーナが眉を顰めた。この後に及んで逃げるつもりなのも、自分の命令を聞く者がいると考えている辺りも、明らかにおかしい。
ゾンマーフェルト侯爵の騒ぎで、王妃の舞台が中断した。むっとした顔の国王ノアールが、イヴリースに尋ねる。
「口を塞いでもらえますかな?」
「鼻も塞げばよいではないか」
「陛下、それでは息が止まります」
イヴリースの恐ろしい提案に、メフィストが待ったをかける。呼吸ごと止めるのは早すぎると、檻の周りに音を遮断する結界をメフィストが作った。だが断罪の内容が当人に聞こえるよう、一方通行にするのは忘れない。この辺りが黒い性格が滲んでいた。
「では続けましょう。まず、私の話を聞いた貴族の皆様は気づいているでしょうね。私は病のような症状だったのです。毒を盛られた、という表現はおかしいですわ」
病で死んで生き返った。そう聞こえるよう印象を操作したのに、毒殺と言い切ったのは妙だ。ざわつく貴族の疑いの眼差しが、ゾンマーフェルト侯爵の檻に注がれる。
「それから……証人が死んだ、と断言しましたね。残念ですが、生きておりますわ。牢を襲撃されましたけれど、その話を知っているのは数人の牢番だけ。彼らは魔法による誓約で口止めをしております」
笑顔で続けた衝撃の内容に、ゾンマーフェルト侯爵も周囲の貴族も固まった。ぎぎぎ……と軋んだ音がしそうなぎこちなさで、ゾンマーフェルト侯爵が王妃を見る。そんな侯爵を貴族達が凝視した。
音が消えたような空間で、ブリュンヒルデが声を上げた。
「証人をここへ」
騎士に付き添われた形の料理人が現れる。震えながら、俯いていた。ゾンマーフェルト侯爵と絶対に目を合わせない。肉食獣の前の小動物状態だった。滝のように汗が流れ、それをハンカチではなくタオルで拭う。
「あなたが依頼された役割を証言できますか?」
「は、はは、はいぃっ」
王妃の暗殺未遂事件に関わった不名誉を、証言により軽くしてもらえる。確実に主犯を捕らえて罰するから報復はない。そう確約された彼は、話し終えたらクリスタ国へ亡命予定だった。
「何を依頼されましたか」
ここで質問役はメフィストが引き継いだ。笑顔のブリュンヒルデに代わり、証人の前に立った灰色の髪の悪魔に、証人は震えながら必死で言葉を紡いだ。
「……毒を、渡された瓶の中身……を、王妃、様のスープ、へ」
そこで一度唇を噛み締めて覚悟を決めたらしい。一気に言い切った。
「王妃様のスープに入れろ、と言われました!」
貴族達のざわめきが大きくなり、ゾンマーフェルト侯爵を責める声が混じり始める。
断罪の舞台は、まだ演目が残っていた。
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