【完結】聖女と結婚ですか? どうぞご自由に 〜婚約破棄後の私は魔王の溺愛を受ける〜

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

文字の大きさ
203 / 238
本編

第200話 証人は初舞台を踏む

しおりを挟む
「あなたは、その瓶の中身を知っていますか?」

 一度覚悟を決めたからか、証言する料理人は淀みなく答える。

「はい、毒薬です」

「ほう……なぜ毒だと思ったのですか」

 メフィストの尋ね方は、核心をずらした位置から攻めてくる。この男のやり方をよく知る、イヴリースの口元が笑みに歪んだ。

「毒を盛ると言われたからです」

「なるほど。それをスープに入れましたか?」

「は、はい。殺すと脅され、入れました。ですが、手が震えて瓶を落とし、

 割れたのではない、割ったのだ。つまり料理人は脅されて従ったが、ぎりぎりのところで踏みとどまった。微量の毒が入ったスープは、王妃の命を仮死状態にとどめ……何らかの刺激で息を吹き返したと思われる。

「故意に割ったのですね。ご立派です。誰から瓶を受け取りましたか?」

「ゾンマーフェルト侯爵様の執事です。侯爵様ご自身の前で受け取りました」

 ここで檻の中にいる侯爵が暴れた。音は遮断されているが、ジタバタと手旗信号のように何か伝えようとした。

「メフィスト殿、ここで被告の言い訳を聞いてみてはいかがでしょう」

 ベルンハルトが穏やかな口調で促す。舞台はまだ幕が上がったばかり。断罪シーンまで引っ張るには、もう少し彩りが必要だ。残酷な笑みを浮かべた甥に、国王ノアールは顔を引き攣らせた。

 満足げに同意するカサンドラ。姑になる彼女と笑い合うヴィルヘルミーナ。どちらも女性は恐ろしいとノアールは背筋が凍る思いを味わった。舞台上安全な位置にいるのに、被告席に座った気持ちだ。

「そうですね。反論の機会は与えてもいいでしょう」

 ぱちんとキザな所作で指を鳴らすと、ゾンマーフェルト侯爵の声が広間に響いた。

「そいつは嘘つきだ! 私は知らんぞ! こんな男みた。そうだ、知らん!!」

「初めて?」

 きょとんとした顔でアゼリアが首を傾げる。それから記憶をさらい、間違いないと頷く。

「初めてのはずがないわ。だって、牢にいらしたんでしょう?」

「な、何の証拠がっ!?」

 喚く侯爵から庇うように前に立ったイヴリースが、魔法陣をひとつ床に投げた。そこに記された名はゼパル。召喚魔法陣が発動して呼び出された男は、肩にペットの蜥蜴を乗せていた。

「証拠を見せてやれ」

「承知しました」

 ゼパルは手にした魔道具を床に置き、右手を左から右へ大きく振った。その動きに合わせ、大きな窓のカーテンがすべて閉まっていく。薄暗くなった広間に、魔道具の光が浮かび上がった。

「これは俺が入ってた牢の状況です。血腥い表現がありますんで、気の弱い方はお気をつけください」

 芝居上演の注意に似た文言を口にすると、一部の女性が扇で顔を覆った。賢い選択だろう。興味や好奇心が先に立つ者の方が多いのは、獣人の国ならではだった。

「ではご覧ください」

 芝居がかった所作で一礼する。ゼパルの魔力が込められた記録魔道具から、音声と映像が流れ始めた。
しおりを挟む
感想 109

あなたにおすすめの小説

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて

奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】 ※ヒロインがアンハッピーエンドです。  痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。  爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。  執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。  だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。  ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。  広場を埋め尽くす、人。  ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。  この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。  そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。  わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。  国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。  今日は、二人の婚姻の日だったはず。  婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。  王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。 『ごめんなさい』  歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。  無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

昨今の聖女は魔法なんか使わないと言うけれど

睦月はむ
恋愛
 剣と魔法の国オルランディア王国。坂下莉愛は知らぬ間に神薙として転移し、一方的にその使命を知らされた。  そこは東西南北4つの大陸からなる世界。各大陸には一人ずつ聖女がいるものの、リアが降りた東大陸だけは諸事情あって聖女がおらず、代わりに神薙がいた。  予期せぬ転移にショックを受けるリア。神薙はその職務上の理由から一妻多夫を認められており、王国は大々的にリアの夫を募集する。しかし一人だけ選ぶつもりのリアと、多くの夫を持たせたい王との思惑は初めからすれ違っていた。  リアが真実の愛を見つける異世界恋愛ファンタジー。 基本まったり時々シリアスな超長編です。複数のパースペクティブで書いています。 気に入って頂けましたら、お気に入り登録etc.で応援を頂けますと幸いです。 連載中のサイトは下記4か所です ・note(メンバー限定先読み他) ・アルファポリス ・カクヨム ・小説家になろう ※最新の更新情報などは下記のサイトで発信しています。  https://note.com/mutsukihamu ※表紙などで使われている画像は、特に記載がない場合PixAIにて作成しています

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

聖女は友人に任せて、出戻りの私は新しい生活を始めます

あみにあ
恋愛
私の婚約者は第二王子のクリストファー。 腐れ縁で恋愛感情なんてないのに、両親に勝手に決められたの。 お互い納得できなくて、婚約破棄できる方法を探してた。 うんうんと頭を悩ませた結果、 この世界に稀にやってくる異世界の聖女を呼び出す事だった。 聖女がやってくるのは不定期で、こちらから召喚させた例はない。 だけど私は婚約が決まったあの日から探し続けてようやく見つけた。 早速呼び出してみようと聖堂へいったら、なんと私が異世界へ生まれ変わってしまったのだった。 表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ――――――――――――――――――――――――― ※以前投稿しておりました[聖女の私と異世界の聖女様]の連載版となります。 ※連載版を投稿するにあたり、アルファポリス様の規約に従い、短編は削除しておりますのでご了承下さい。 ※基本21時更新(50話完結)

死んでるはずの私が溺愛され、いつの間にか救国して、聖女をざまぁしてました。

みゅー
恋愛
異世界へ転生していると気づいたアザレアは、このままだと自分が死んでしまう運命だと知った。 同時にチート能力に目覚めたアザレアは、自身の死を回避するために奮闘していた。するとなぜか自分に興味なさそうだった王太子殿下に溺愛され、聖女をざまぁし、チート能力で世界を救うことになり、国民に愛される存在となっていた。 そんなお話です。 以前書いたものを大幅改稿したものです。 フランツファンだった方、フランツフラグはへし折られています。申し訳ありません。 六十話程度あるので改稿しつつできれば一日二話ずつ投稿しようと思います。 また、他シリーズのサイデューム王国とは別次元のお話です。 丹家栞奈は『モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します』に出てくる人物と同一人物です。 写真の花はリアトリスです。

虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。

ラディ
恋愛
 一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。  家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。  劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。  一人の男が現れる。  彼女の人生は彼の登場により一変する。  この機を逃さぬよう、彼女は。  幸せになることに、決めた。 ■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です! ■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました! ■感想や御要望などお気軽にどうぞ! ■エールやいいねも励みになります! ■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。 ※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。

処理中です...