【完結】聖女と結婚ですか? どうぞご自由に 〜婚約破棄後の私は魔王の溺愛を受ける〜

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

文字の大きさ
204 / 238
本編

第201話 それは自供ですね

しおりを挟む
 薄暗いのは地下室のせいだろう。かろうじて灯りにより明るさを保つ牢に、似付かわしくない服装の男が立っていた。このシーンから始まる映像は、隠し撮りだろう。向かい側の牢に固定された魔道具は、男2人の尻や背を大きく映しだす。

『悪いが死んでもらう』

 男達が動く。映ったのはゾンマーフェルト侯爵だった。後ろ姿だが間違いない。わずかに顔を動かして、後ろの男に指示を出す。その際に横顔がしっかり映った。

『余計なことを知りすぎた』

 震える料理人が収監された牢の入り口を、後ろから現れた男が開ける。手にした鍵で錠を解除した。牢の鍵は大きな輪にすべての部屋の鍵がついている。しかし使った鍵は合鍵らしい。単独で鍵を持ち、左へ回すとあっさり鉄格子の扉が開いた。

『やめてくれ、何もしゃべらない。俺は……うわぁああ!』

 ずりずりと下がっていく料理人へ、無慈悲に短剣が突き立てられる。銀の刃が胸を貫き、痙攣する料理人が動かなくなった。囚人に与えられる灰色の服が、赤く染まっていく。

『これでご主人様の障害は消えました』

 一礼する執事の顔に、一部の貴族が反応した。ゾンマーフェルト侯爵家を訪問したことがあるご令嬢の中からも、息を飲む者が現れる。

 悪事を働く際、関わる人間を増やすほどバレる危険性が高まる。そういった意味で、黒幕本人と執事しか登場しないのは、賢い選択だった。彼らが互いに裏切らなければ、悪事の蜜月は保たれる。今回のように、記録されなければ……だが。

「なぜだ、お前のぞ!」

「ほう……死を確認、ですか? それは自供ですね」

 メフィストが軽く尋ねる。慌てた様子で侯爵が口を噤んだ。しかしこの場の王侯貴族は聞いている。今さら取り消しは通用しなかった。

「その料理人のだ! そうだ、そうに違いない。我が侯爵家を貶めるため、罠に嵌めるための偽物だ!!」

 生きているわけがない。大量の血が流れて、脈が停止したのを確かめたのだから。口から泡を吹きながら抗議する男へ、メフィストは穏やかな口調で種明かしを始めた。

「料理人は本物です。あなたが王妃殿下の毒殺を指示した料理人で間違いありません。ですが殺された被害者と証人は……別人でした。当然でしょう。獣人があれほどの刺し傷を負えば、死んでしまいますからね。安全な我がサフィロス国で証人を保護しました」

 魔王城の地下牢で保護した。これは事実で、否定する必要はない部分だ。牢を管理するメフィストの許可がなければ、ゴエティアすら近づけない牢に入れた。

「やっぱり! 俺は嵌められたんだぁ!!」

 取り繕った貴族の仮面にヒビが入った。一人称すら変わっている。罪を認めない男の下品な口調や振る舞いに、貴族達が眉を寄せた。罪人であれば己の罪を認め、素直に謝罪した方が家や親族も救われるというのに。

 殺したことを肯定した挙句、その理由が王妃殺害未遂の証人への口封じなのだ。獣人達にとって、到底許せる状況ではなかった。
しおりを挟む
感想 109

あなたにおすすめの小説

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

処刑された王女は隣国に転生して聖女となる

空飛ぶひよこ
恋愛
旧題:魔女として処刑された王女は、隣国に転生し聖女となる 生まれ持った「癒し」の力を、民の為に惜しみなく使って来た王女アシュリナ。 しかし、その人気を妬む腹違いの兄ルイスに疎まれ、彼が連れてきたアシュリナと同じ「癒し」の力を持つ聖女ユーリアの謀略により、魔女のレッテルを貼られ処刑されてしまう。 同じ力を持ったまま、隣国にディアナという名で転生した彼女は、6歳の頃に全てを思い出す。 「ーーこの力を、誰にも知られてはいけない」 しかし、森で倒れている王子を見過ごせずに、力を使って助けたことにより、ディアナの人生は一変する。 「どうか、この国で聖女になってくれませんか。貴女の力が必要なんです」 これは、理不尽に生涯を終わらされた一人の少女が、生まれ変わって幸福を掴む物語。

ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています

木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。 少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが…… 陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。 どちらからお読み頂いても話は通じます。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

昨今の聖女は魔法なんか使わないと言うけれど

睦月はむ
恋愛
 剣と魔法の国オルランディア王国。坂下莉愛は知らぬ間に神薙として転移し、一方的にその使命を知らされた。  そこは東西南北4つの大陸からなる世界。各大陸には一人ずつ聖女がいるものの、リアが降りた東大陸だけは諸事情あって聖女がおらず、代わりに神薙がいた。  予期せぬ転移にショックを受けるリア。神薙はその職務上の理由から一妻多夫を認められており、王国は大々的にリアの夫を募集する。しかし一人だけ選ぶつもりのリアと、多くの夫を持たせたい王との思惑は初めからすれ違っていた。  リアが真実の愛を見つける異世界恋愛ファンタジー。 基本まったり時々シリアスな超長編です。複数のパースペクティブで書いています。 気に入って頂けましたら、お気に入り登録etc.で応援を頂けますと幸いです。 連載中のサイトは下記4か所です ・note(メンバー限定先読み他) ・アルファポリス ・カクヨム ・小説家になろう ※最新の更新情報などは下記のサイトで発信しています。  https://note.com/mutsukihamu ※表紙などで使われている画像は、特に記載がない場合PixAIにて作成しています

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

聖女は友人に任せて、出戻りの私は新しい生活を始めます

あみにあ
恋愛
私の婚約者は第二王子のクリストファー。 腐れ縁で恋愛感情なんてないのに、両親に勝手に決められたの。 お互い納得できなくて、婚約破棄できる方法を探してた。 うんうんと頭を悩ませた結果、 この世界に稀にやってくる異世界の聖女を呼び出す事だった。 聖女がやってくるのは不定期で、こちらから召喚させた例はない。 だけど私は婚約が決まったあの日から探し続けてようやく見つけた。 早速呼び出してみようと聖堂へいったら、なんと私が異世界へ生まれ変わってしまったのだった。 表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ――――――――――――――――――――――――― ※以前投稿しておりました[聖女の私と異世界の聖女様]の連載版となります。 ※連載版を投稿するにあたり、アルファポリス様の規約に従い、短編は削除しておりますのでご了承下さい。 ※基本21時更新(50話完結)

追放聖女の再就職 〜長年仕えた王家からニセモノと追い出されたわたしですが頑張りますね、魔王さま!〜

三崎ちさ
恋愛
メリアは王宮に勤める聖女、だった。 「真なる聖女はこの世に一人、エミリーのみ! お前はニセモノだ!」 ある日突然いきりたった王子から国外追放、そして婚約破棄もオマケのように言い渡される。 「困ったわ、追放されても生きてはいけるけど、どうやってお金を稼ごうかしら」 メリアには病気の両親がいる。王宮で聖女として働いていたのも両親の治療費のためだった。国の外には魔物がウロウロ、しかし聖女として活躍してきたメリアには魔物は大した脅威ではない。ただ心配なことは『お金の稼ぎ方』だけである。 そんな中、メリアはひょんなことから封印されていたはずの魔族と出会い、魔王のもとで働くことになる。 「頑張りますね、魔王さま!」 「……」(かわいい……) 一方、メリアを独断で追放した王子は父の激昂を招いていた。 「メリアを魔族と引き合わせるわけにはいかん!」 国王はメリアと魔族について、何か秘密があるようで……? 即オチ真面目魔王さまと両親のためにお金を稼ぎたい!ニセモノ疑惑聖女のラブコメです。 ※小説家になろうさんにも掲載

処理中です...