【完結】聖女と結婚ですか? どうぞご自由に 〜婚約破棄後の私は魔王の溺愛を受ける〜

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

文字の大きさ
215 / 238
本編

第212話 恋色に染まる魔王軍

しおりを挟む
「私達も結婚しちゃう?」

「……そこは俺に言わせてほしかった」

 マルバスは溜め息を吐く。いろいろ考えていたのに……魔王陛下と姫の結婚式の姿を見ながら、そっと耳元に囁こう、とか。今手配中のヴェールを渡しながら「俺のために纏ってほしい」と膝をついて告白する、とか。それはもう、未来に胸弾ませていた。

 断られたら、またチャレンジする。諦めの悪さはマルバスの長所だった。それが先に言われてしまうなんて……ん?

「アモンは俺を好きなのか?」

「嫌いならコンビなんて組まないわよ」

 けろっと言い返され、さらに爆弾発言が降ってくる。

「だって作戦の時、一緒に泊ったでしょ? あれってカップルだからじゃないの??」

「あ……あ、ああああああっ!!」

 叫んで頭を抱える。そうだ。ラミアは割と即物的な種族なのだ。女性ばかり生まれる特性もあり、性に対して明け透けで悪びれない。恥ずかしいと隠す感覚もなかった。だから素直に受け止めて良かったのだ。彼女が一緒にいてくれる=俺を好きだと判断すればよかったのに。

 仕事仲間でコンビを組んでいるから、同室でも気にしないんだろうと思った。自意識過剰な自分を隠そうとした無駄な時間が脳裏をよぎる。

「何よ、騒がしいわね」

 眉を寄せたアモンに抱き着く。咄嗟に抱き返した彼女は、蛇の強靭な腰で受け止め切った。後ろに倒れることなく背中を叩く。

「どうしたのよ」

「いや、愛してるなと思い知らされた」

「……照れるわね」

 真っ赤になったアモンの首筋に唇を押し当て、それから数十年の付き合いで初めて唇を重ねる。大好きで大切で、どんな言動も魅力的な女性を腕に抱きしめ、マルバスは甘いキスに酔った。アモンはマルバスの鋭い牙に舌を這わせる。

 名残惜し気に離れた唇の間に銀糸が残り、誘われるようにもう一度重ねた。

「結婚式はしたいわ」

「ルベウス産のヴェールは手配した、アモンが好きな山吹色だよ」

「あら素敵。指輪はどうする?」

「すぐに作らせる。いや、俺が作るよ」

 手先の器用なマルバスの言葉に、それもいいとアモンは微笑んだ。これから宰相メフィストの元へ出向いて、結婚の予定と休暇の申請をしなくては……。

「また……ですか」

 魔王陛下と姫君の結婚式は盛り上がり、経済効果を生む一方――ゴエティア内でも結婚式が流行っている。というのも、主君が結婚するまではと我慢していた者が一斉に動き出したせいだ。おかげで休暇申請が相次ぎ、魔王城の警備が手薄になりそうだった。

「順番から言って、1ヵ月後が最短です」

「それでいいけれど……代わりに日付を倍にして。有給全部使うから」

 勤務予定を記した表は、すでに休暇申請がずらりと並んでいる。その申請が途切れる辺りを指さし、アモンはにっこり笑った。

「……ラミアですからね」

 蛇の性質を強く受け継ぐ彼女達の繁殖は、ねっとりと濃く長い。休暇を後ろにずらしてもらったお礼に、2日ほど休みを追加して互いに利のある取引が成立した。

 半数に及ぶ大量の結婚予定を整理して図にしながら、メフィストは苦笑いする。魔王イヴリースの結婚は、この魔国サフィロスにとって良い方向へ転がっていた。
しおりを挟む
感想 109

あなたにおすすめの小説

処刑された王女は隣国に転生して聖女となる

空飛ぶひよこ
恋愛
旧題:魔女として処刑された王女は、隣国に転生し聖女となる 生まれ持った「癒し」の力を、民の為に惜しみなく使って来た王女アシュリナ。 しかし、その人気を妬む腹違いの兄ルイスに疎まれ、彼が連れてきたアシュリナと同じ「癒し」の力を持つ聖女ユーリアの謀略により、魔女のレッテルを貼られ処刑されてしまう。 同じ力を持ったまま、隣国にディアナという名で転生した彼女は、6歳の頃に全てを思い出す。 「ーーこの力を、誰にも知られてはいけない」 しかし、森で倒れている王子を見過ごせずに、力を使って助けたことにより、ディアナの人生は一変する。 「どうか、この国で聖女になってくれませんか。貴女の力が必要なんです」 これは、理不尽に生涯を終わらされた一人の少女が、生まれ変わって幸福を掴む物語。

虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。

ラディ
恋愛
 一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。  家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。  劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。  一人の男が現れる。  彼女の人生は彼の登場により一変する。  この機を逃さぬよう、彼女は。  幸せになることに、決めた。 ■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です! ■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました! ■感想や御要望などお気軽にどうぞ! ■エールやいいねも励みになります! ■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。 ※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。

偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて

奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】 ※ヒロインがアンハッピーエンドです。  痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。  爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。  執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。  だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。  ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。  広場を埋め尽くす、人。  ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。  この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。  そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。  わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。  国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。  今日は、二人の婚姻の日だったはず。  婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。  王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。 『ごめんなさい』  歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。  無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています

木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。 少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが…… 陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。 どちらからお読み頂いても話は通じます。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

処理中です...