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本編
第222話 予想以上に長い名前でしたわ
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淑女たるもの、泣いてしまう日はハンカチを複数隠し持つ。ベリル国からも、王弟クリストフが弟オスカーと参列した。美しい花嫁に見惚れ、魔王の正装姿に感嘆の息を吐く。全体に黒を基調とし、ところどころに金糸をあしらった正装は軍服に似ていた。
軍事国家に近い成り立ちのサフィロスらしい。首元まできっちり襟が立っている。メフィストも含め、ゴエティアの悪魔達も一級正装だった。
「……本当にお似合いだわ」
思わずといった風に零したブリュンヒルデに、夫ノアールが囁く。
「もう一度、私のために婚礼衣装を着てくれないか?」
「いいわね」
賛同を得られたことで、ノアールは明るい表情で新婚夫婦を見守った。後ろで「おじ様ったら」とくすくす笑うヴィルヘルミーナが、腕を組んだ婚約者を見上げる。少し目元が赤いのは、溺愛する妹が嫁ぐのが寂しいのかしら。
「ベルは寂しいの?」
「少し、ね。でもミーナが嫁いでくれるから」
「あと3ヶ月ね」
自分達の結婚式を重ねるクリスタ国王と、アンヌンツィアータ公爵令嬢は笑いあった。
「魔王イヴリース・ヴァレリアノヴナ・アリョーシン・ウルノフ・レシェートニコフ・サフィロスは、クリスタ国王妹アゼリア・フォン・へーファーマイアーを番とし、命と魂を捧げることを誓う。死が我らを分とうとも離さぬ」
イヴリースの宣誓に、アゼリアは頷く。魔国の結婚式で妻が同様の宣誓をすることはない。番となるに相応しくないと思えば、渡される指輪を拒否するのが慣わしだった。ただ、予想外に長かった本名を覚えきれず、アゼリアは冷や汗をかく。
この場で繰り返しを求められたら、絶対に舌を噛むわ。覚えてない自信があるもの。イヴリースにバレる前に、呪文のような名前をすべて覚えなくては……。ごくりと喉を鳴らして緊張を誤魔化す。だがその所作は一般的な花嫁の緊張と捉えられ、誰も真実にたどり着かなかった。
「これは余の愛であり、そなたへの思いの一端だ」
すべての愛情を示すには、指輪は小さすぎる。そう添えながら、イヴリースは用意した指輪を手に取った。透明の素材で作られた専用の台に、可愛らしいピンクのリングピローが乗っている。透明の台は当初氷魔法で作る予定だったが、溶けて水たまりが出来るため水晶と差し替えられた。大急ぎで水晶に彫刻を施した職人は、疲れて眠っているだろう。
リングピローはハートの形で「可愛い」とアゼリアが頬を緩める。これは意外に手先が器用な友人アンネの手作りだった。魔族の参列者席の前方で、感動しすぎて真っ赤な目で見守っている。アゼリアの喜びように、徹夜で仕上げた甲斐があったというもの。
「すごいわね」
よく間に合ったじゃない。そんなシャリーヌの声に、アンネは苦笑いした。
「だから徹夜だったのよ」
レースは手編みが基本のアンネに、購入したレースを縫い付ける考えはなかった。レース編みから準備したと言われ、裁縫が苦手なシャリーヌは感嘆の声をあげる。そういう彼女も、エルフの特性を利用して竹籠と大量の花びらを用意していた。
アゼリアにお願いされたフラワーシャワーの準備だ。季節外れの花を魔力を注いで咲かせ、毎日手入れした。本来の季節を外して咲かせれば、虫がつきやすく萎れやすい。それを補うため、前夜は徹夜で世話をして、大急ぎで早朝から摘んだ。
互いの目の下の隈を消すのに、侍女達がどれだけ苦心したことか。朝に悲鳴を上げた侍女や乳母を思い出し、アンネとシャリーヌは苦笑いする。それでも新しく友情を結んだアゼリアの結婚式に、文字通り花を添えることが出来たなら、苦労した甲斐があったというものだ。
軍事国家に近い成り立ちのサフィロスらしい。首元まできっちり襟が立っている。メフィストも含め、ゴエティアの悪魔達も一級正装だった。
「……本当にお似合いだわ」
思わずといった風に零したブリュンヒルデに、夫ノアールが囁く。
「もう一度、私のために婚礼衣装を着てくれないか?」
「いいわね」
賛同を得られたことで、ノアールは明るい表情で新婚夫婦を見守った。後ろで「おじ様ったら」とくすくす笑うヴィルヘルミーナが、腕を組んだ婚約者を見上げる。少し目元が赤いのは、溺愛する妹が嫁ぐのが寂しいのかしら。
「ベルは寂しいの?」
「少し、ね。でもミーナが嫁いでくれるから」
「あと3ヶ月ね」
自分達の結婚式を重ねるクリスタ国王と、アンヌンツィアータ公爵令嬢は笑いあった。
「魔王イヴリース・ヴァレリアノヴナ・アリョーシン・ウルノフ・レシェートニコフ・サフィロスは、クリスタ国王妹アゼリア・フォン・へーファーマイアーを番とし、命と魂を捧げることを誓う。死が我らを分とうとも離さぬ」
イヴリースの宣誓に、アゼリアは頷く。魔国の結婚式で妻が同様の宣誓をすることはない。番となるに相応しくないと思えば、渡される指輪を拒否するのが慣わしだった。ただ、予想外に長かった本名を覚えきれず、アゼリアは冷や汗をかく。
この場で繰り返しを求められたら、絶対に舌を噛むわ。覚えてない自信があるもの。イヴリースにバレる前に、呪文のような名前をすべて覚えなくては……。ごくりと喉を鳴らして緊張を誤魔化す。だがその所作は一般的な花嫁の緊張と捉えられ、誰も真実にたどり着かなかった。
「これは余の愛であり、そなたへの思いの一端だ」
すべての愛情を示すには、指輪は小さすぎる。そう添えながら、イヴリースは用意した指輪を手に取った。透明の素材で作られた専用の台に、可愛らしいピンクのリングピローが乗っている。透明の台は当初氷魔法で作る予定だったが、溶けて水たまりが出来るため水晶と差し替えられた。大急ぎで水晶に彫刻を施した職人は、疲れて眠っているだろう。
リングピローはハートの形で「可愛い」とアゼリアが頬を緩める。これは意外に手先が器用な友人アンネの手作りだった。魔族の参列者席の前方で、感動しすぎて真っ赤な目で見守っている。アゼリアの喜びように、徹夜で仕上げた甲斐があったというもの。
「すごいわね」
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「だから徹夜だったのよ」
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アゼリアにお願いされたフラワーシャワーの準備だ。季節外れの花を魔力を注いで咲かせ、毎日手入れした。本来の季節を外して咲かせれば、虫がつきやすく萎れやすい。それを補うため、前夜は徹夜で世話をして、大急ぎで早朝から摘んだ。
互いの目の下の隈を消すのに、侍女達がどれだけ苦心したことか。朝に悲鳴を上げた侍女や乳母を思い出し、アンネとシャリーヌは苦笑いする。それでも新しく友情を結んだアゼリアの結婚式に、文字通り花を添えることが出来たなら、苦労した甲斐があったというものだ。
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