【完結】帝国滅亡の『大災厄』、飼い始めました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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第四章 王宮炎上

第14話 帝国の遺産(6)

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 言葉を解して本能以外の欲や意思を持つ魔性、本能のままに獲物を狩り生きる魔物。どちらも親はなく、突然生まれて殺されて消える存在だ。

 生来、魔性は戦いを好む傾向にある。実力がすべて、己の能力だけをもって生まれる為だろう。もって生まれた魔力と能力は基本的に大きく変化しない。

 欲しい能力や魔力は他者から奪うものだった。他の魔性を殺すか封じて、その核や封印石を取り込めば己の能力として使えるようになる。ゆえに彼らは努力をしない。

 生まれた時点で、彼らは己の立ち位置を理解するのだ。理解せずひっくり返そうと足掻くのは、身の程をわきまえぬ人間のみだった。



≪哀れみ誘い舞い踊れ、悲しみ浸り沸き起これ、空が怒り地は嘆く。ああ、彼の御方は白き御手を伸べられる…尊き御身を朱に染めることなく。癒しの森は震える鈴のごとし――『深緑のヴェール』≫

 ルリアージェの声が響き渡る。最上級の治癒を、己の魔力が届く範囲に大きく拡大して展開した。

 さすがに傷ついた人すべてを助けることは出来ないだろう。だが助かる人がいるかも知れない状況で、彼らを見捨てられなかった。魔力のすべてを搾り出すように魔法陣が広がっていく。

 柔らかい緑の風が人々の間を吹きぬけ、傷を癒し、命を繋いだ。

「あなたは……」

 魔性による襲撃は、彼女を守ろうとした青年が原因だった。彼女がいなければ起きなかった惨劇かも知れない。この悲劇が彼女を中心に描かれたことは事実だ。

 それでも……残り少ない魔力を解放して人々に癒しの風を届ける美女は、まるで女神のようだった。ルリアージェの名が示す通り、女神として神話に語られた通り、慈悲深い。

 胸を貫かれた侍女の傷から氷が溶けて消える。胴体を2つに裂かれた騎士が元に戻った。

 傷ついた国王が身を起こし、王妃の首が繋がる。驚きに目を瞠る王女が安堵の表情を浮かべた。ように、血が人々の中に、肉片は

 そして、惨劇は悪夢であったように消えた。

 淡いピンクのドレスの裾やリボン、銀の髪も風に舞う。ルリアージェから放出される緑の風は、彼女の魔力そのものだった。優しく、柔らかく、見返りを求めることなく……。
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