【完結】帝国滅亡の『大災厄』、飼い始めました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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第八章 捏造された歴史

第21話 歴史とは捏造された小説で(6)

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 レンがジルを指し示した。長い黒髪を揺らしてジルが身を起こした。寄りかかっていた椅子の背もたれを髪が滑っていく。

「火、水、風、土の4大精霊が存在するのに、どうして魔王が3人なのか。それは5000年前に魔王が1人失われたからだ」

 ジルは溜め息混じりに呟いた。感情の消えた紫藍の瞳がルリアージェを捉える。口角を持ち上げて作った笑みは、自嘲の色を浮かべ引きつっていた。

「オレは生まれない筈の『禁忌』――神族と魔王の混血だ」

「なぜ……生まれないって」

 聞いた単語が上滑りする。魔族と神族の間に子供は生まれないにも関わらず、目の前に存在していた。こんな話は知らない。人族が伝え切れなかった真実を一度に浴びて、ルリアージェは混乱していた。

 紫水晶の瞳をまっすぐに見つめ返し、「なぜ」と何度も繰り返す。

「襲ったのか、合意だったのか。当事者が何も言い残さなかったから知らないが、オレが生まれることで神族は混乱した。腹の中にいる頃から殺そうとしたって聞いたが、母は身を隠してオレを生んだらしい。人づてに聞いたんではっきりしないが」

 他人事のように話したジルが一息つく。そこで紅茶のカップを戻したリオネルが、初めて話に参加した。

「その辺は私の方が詳しいでしょうね。ジル様を宿した母君を匿ったのは、我が父です。ジル様の父上である魔王様の配下でした。主の子供を敵から護る、普通の魔族ならば考えられない行動ですが……何分なにぶんにも上級魔性の母との間に子を作るような親でしたから、珍しいケースだと思います。そうして生まれたジル様は背に黒い翼をお持ちだった」

「翼が黒かった所為でえらく追い回されたな」

 懐かしむような響きで、ジルが苦笑する。リオネルも同じように苦笑して目を伏せた。

「ジル様は成長が遅く、魔性のように1年ほどで成体になりませんでした。そのため、ずっと私がお傍におりました」

 神族特有のゆったりした時の流れにより、ジルの成長は時間がかかった。助けたリオネルは、その頃には忠誠を誓っていたようだ。昔話を懐かしむような2人の声に、レンは焼き菓子へ手を伸ばして頬張る。

「成長してみれば、神族最強の霊力の持ち主だったわけだ。変化を嫌う神族にしてみれば、ジルは異物であり同族じゃなかったんだろう。ま、おれにすりゃくだらない言いがかりだが」

 レンは菓子を飲み込んで肩をすくめる。自分も魔性の枠からはじき出された傍観者だったため、ジルの境遇は共感しやすかった。何度かジルを助けたことがあるのも、それが原因だった。

「アティン帝国皇帝は、神族を滅ぼした。その報いとして、生き残りであるジルが彼らを滅ぼしたのが真相だ」
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