【完結】帝国滅亡の『大災厄』、飼い始めました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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第十章 サークレラ

第27話 思ったよりも単純な見落とし(2)

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「すぐに用意させます。ドレスや民族衣装はお部屋に運ばせましょう」

 ここまで話したところで、城の方から数人の侍従らしき男性が走ってきた。息を切らしているのは、国王に追いつこうと必死だったのだろう。どうやら城内にジルの気配を感じるなり、転移でもした可能性がある。

「陛下、こちらの方々は…」

「さきほど話した国賓だ。国王より重要な立場と心得よ」

「はっ」

 かつてはテラレス国の宮廷魔術師筆頭だったルリアージェは、かしずかれることに慣れていない。どちらかといえば傅く方であったし、尊敬はされても崇拝の対象ではなかった。むず痒い感覚に襲われながらも、なんとか微笑んで誤魔化す。

「リア、お部屋で着替えましょう」

 ライラが無邪気に提案する。王侯貴族は一日に何回も着替えることが多く、目的や相手別に着替える者がいるほどだ。そのため誰も疑問を覚えることなく、部屋に案内された。

 当然ながらジルはリシュアに回収されていく。本人は一緒に見立てると騒いだが、リシュアに諭されていた。曰く、女性の着替えに手出ししてはいけません、とか。

 反論していたジルだが、ルリアージェに同じ言葉を告げられると肩を落とし、引き摺られるように連れ去られた。今頃はそわそわしているだろう。あまり待たせると飛び込んできそうなので、ルリーアジェは手早く衣装を選び始めた。

「リアは傲慢な振る舞いが苦手なのね」

「そうだな、得意ではない」

「不思議だわ、似合いそうなのに」

 ライラが小首を傾げる。以前も彼女は同じような言葉を口にした。ルリアージェの言葉遣いが王族に近いというものだ。

 眉を顰めたルリアージェは膝をついて視線を合わせた。

「ライラ、頼みがある」

「ルリアージェがあたくしに? もちろん、頼ってくれていいわ」

 嬉しそうな彼女に告げるのは気が引けるが、ここで注意しておかないとまた同じことを繰り返すだろう。ジルに知られるわけに行かないのだ。

「音が漏れないようにしてくれ」

「ええ」

 大事な話があると見当をつけたライラは、小さな結界で2人を包み込んだ。長く張っていればジルが気付いて騒ぐが、少しの間ならば気付かれないはずだ。

 そっとライラの手を握る。

「私の言葉遣いや振る舞いについて触れないで欲しい。特にジルの前では禁句だ」

「……理由はきかない方がよさそうね」

 長く生きているだけに察する部分があるのだろう。ライラは困ったような顔で笑う。その表情は大人びていて、子供の外見に不釣合いなものだった。

「あたくしの名誉にかけてリアの願いを叶えるわね」

「ありがとう」
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