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第十九章 滅びゆく風の音
第76話 家具のために部屋を増やそうか(2)
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「ジル、この店に入ろう」
「欲しい家具があったら買おうか」
入り口の小さな工芸品が気になったルリアージェについて店に入ったジルは、中に置かれている家具の彫刻に驚いた。花や木々のデザインばかりが、所狭しと並んでいる。まるで森の中にいるようだった。
「見事だ」
すでに魅了されたルリアージェが座り込んで、家具の彫刻に手を滑らせている。触れて眺めて満足そうな彼女の表情に、声をかけた。薄暗い店内に店員の姿はなく、奥から微かに木を加工する音が響いている。
「気に入ったなら、この店の家具で部屋を飾る?」
「もうすでに家具はあるから」
貧乏性のルリアージェは、使用できるテーブルがあるのに新しいテーブルを買うような贅沢はしない。しかし周囲の魔性達の感覚は真逆だった。
気に入ったなら入れ替えればいい。不要な家具は片付ければいいのだと。
「部屋が家具だらけになってしまうぞ」
笑ってそう窘めるルリアージェに返ってきたのは、ジルの非常識な発言だった。
「ならば部屋を広げればいい」
「そうですわね」
パウリーネが賛成の声をあげる。ジルの城にあるルリアージェの自室……という名目の、広間だった大きな空間をさらに広げ、家具を置くための部屋を増やすつもりらしい。そのうち私室が城サイズになりそうだと、不吉な予想をしたルリアージェが首を横に振った。
「家具のために部屋を増やすのはおかしい」
「え? 普通よね」
ライラの感覚もおかしかった。大地の魔女であり、大地の精霊王の娘であった彼女は生まれながらに贅沢が身についている。人間の王族よりよほど大きな感覚で物事を考える。
「リア様、諦めてお部屋を増やされてはいかがでしょう」
「ジル様を説得するより簡単です」
リシュアとリオネルも後押しする発言をする。この非常識集団め! と心の中で呟いたルリアージェが、なんとか部屋の増築を回避しようと言葉を探した。
「部屋は……いらない。旅をしてばかりだろう」
こうして出かけてばかりなら私室なんて物置と変わらない。そんなルリアージェの声に、顔を見合わせた魔性達が口を揃えて反論した。
「あの城はリア様の帰る場所になりますよ」
「そうです。リア様がジル様の主ですもの。あの城はリア様のものですわ」
「帰る城があるから、安心して旅が出来るのです」
「あたくしもリアのために城を用意したっていいわ!」
最後のライラの言葉だけはしっかり否定した。
「いや、もう城はいらない」
奇妙な会話を繰り広げる客に気付いた職人が、店に顔を覗かせた。見た目のいい男女と少女が言い合いをする姿に、眉をひそめて声をかける。
「そこの客人、家具を買うのか?」
「「「「「買う(わ)」」」」」
ルリアージェ以外が全員同じ返事をしたため、職人が大きく頷いた。断れない状況に、ルリアージェが項垂れる。どうやら部屋も増築されそうだ。
「欲しい家具があったら買おうか」
入り口の小さな工芸品が気になったルリアージェについて店に入ったジルは、中に置かれている家具の彫刻に驚いた。花や木々のデザインばかりが、所狭しと並んでいる。まるで森の中にいるようだった。
「見事だ」
すでに魅了されたルリアージェが座り込んで、家具の彫刻に手を滑らせている。触れて眺めて満足そうな彼女の表情に、声をかけた。薄暗い店内に店員の姿はなく、奥から微かに木を加工する音が響いている。
「気に入ったなら、この店の家具で部屋を飾る?」
「もうすでに家具はあるから」
貧乏性のルリアージェは、使用できるテーブルがあるのに新しいテーブルを買うような贅沢はしない。しかし周囲の魔性達の感覚は真逆だった。
気に入ったなら入れ替えればいい。不要な家具は片付ければいいのだと。
「部屋が家具だらけになってしまうぞ」
笑ってそう窘めるルリアージェに返ってきたのは、ジルの非常識な発言だった。
「ならば部屋を広げればいい」
「そうですわね」
パウリーネが賛成の声をあげる。ジルの城にあるルリアージェの自室……という名目の、広間だった大きな空間をさらに広げ、家具を置くための部屋を増やすつもりらしい。そのうち私室が城サイズになりそうだと、不吉な予想をしたルリアージェが首を横に振った。
「家具のために部屋を増やすのはおかしい」
「え? 普通よね」
ライラの感覚もおかしかった。大地の魔女であり、大地の精霊王の娘であった彼女は生まれながらに贅沢が身についている。人間の王族よりよほど大きな感覚で物事を考える。
「リア様、諦めてお部屋を増やされてはいかがでしょう」
「ジル様を説得するより簡単です」
リシュアとリオネルも後押しする発言をする。この非常識集団め! と心の中で呟いたルリアージェが、なんとか部屋の増築を回避しようと言葉を探した。
「部屋は……いらない。旅をしてばかりだろう」
こうして出かけてばかりなら私室なんて物置と変わらない。そんなルリアージェの声に、顔を見合わせた魔性達が口を揃えて反論した。
「あの城はリア様の帰る場所になりますよ」
「そうです。リア様がジル様の主ですもの。あの城はリア様のものですわ」
「帰る城があるから、安心して旅が出来るのです」
「あたくしもリアのために城を用意したっていいわ!」
最後のライラの言葉だけはしっかり否定した。
「いや、もう城はいらない」
奇妙な会話を繰り広げる客に気付いた職人が、店に顔を覗かせた。見た目のいい男女と少女が言い合いをする姿に、眉をひそめて声をかける。
「そこの客人、家具を買うのか?」
「「「「「買う(わ)」」」」」
ルリアージェ以外が全員同じ返事をしたため、職人が大きく頷いた。断れない状況に、ルリアージェが項垂れる。どうやら部屋も増築されそうだ。
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