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第十九章 滅びゆく風の音
第77話 晩餐という名の謀(はかりごと)(1)
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宿に戻るなり、昨日の使者が床に座って待っていた。椅子があるのに床にひれ伏している様子から、どうやら国王に無理難題を吹っかけられたのだと察する。
「何があった?」
代表してジルが声を掛けると、使者となった侯爵家の次男は不本意そうに口を開いた。
「国王陛下と宰相閣下より伝言がございます。今日は必ず晩餐にお越しいただくように……と」
そこで口を噤んだが、迷いながら彼は言葉を探し始める。根が真っ直ぐな人間なのだろう。言わずにサークレラの公爵家を敵に回す危険性も、十分すぎるほど理解していた。
「宰相閣下は……あなた様方を利用、いえ。なんとか取り込もうと……ではなく、その……」
結局何を言ったらいいかわからなくなる。困惑した表情で俯いた彼に、リシュアが近づいて膝をついた。手を差し出して彼を立たせると、その目を覗き込む。
「別室でお話を聞かせていただきましょう」
「はい」
魅了の眼差しに逆らえず、抵抗なく頷いた使者を伴ったリシュアの後ろを、リオネルが続いた。彼らを見送ったルリアージェが首をかしげる。
「いま、魅了の……」
「リア様、着替えましょうよ。晩餐ですわ」
「そうね。着替え用魔法陣の説明も途中だったし、折角だから発動させてから詳細な説明をするわ」
パウリーネとライラが絶妙のタイミングで邪魔をする。そのままルリアージェの興味を魔法陣へ向け、誘導しながら彼女らは割り当てられた客室へ吸い込まれた。
見事な手並みに苦笑いしたジルが、宿の主人へ金貨を数枚置いて「宿泊は今日まで。予約した分は支払う」とキャンセルの申し出をした。支払いをしてくれるなら、宿の主人に文句はない。笑顔で金貨を受け取る彼に念を押した。
「予定していた 3日間は宿泊したことにしてくれ。誰か訪ねてきても留守にしていると誤魔化してくれると助かる。これは頼み事の追加分だ」
宿泊費と同額の金貨を握らせれば、宿屋の主人は大きく頷いた。
「さて、ラーゼンはどこまで関わってるやら」
突然使者の態度が変わったのは、国王か宰相の態度に怯えてのものだ。つまり彼らのどちらかに、魔性が干渉している。この北国ツガシエは風の魔王ラーゼンの支配地域が近く、炎の魔王マリニスの火山への通り道だった。
彼らの干渉は事前に想定している。関わった存在が魔王自身か、それとも彼の配下かで対応が多少変わる程度の問題だった。短く偽装した黒髪の先を指先で弄りながら、ジルは整った顔に笑みを浮かべた。
「どちらでも結果は同じだが……」
ルリアージェに手出しするなら、二度と近寄らないように排除するだけ。魔王相手に負けるつもりも、譲る気もなかった。
「何があった?」
代表してジルが声を掛けると、使者となった侯爵家の次男は不本意そうに口を開いた。
「国王陛下と宰相閣下より伝言がございます。今日は必ず晩餐にお越しいただくように……と」
そこで口を噤んだが、迷いながら彼は言葉を探し始める。根が真っ直ぐな人間なのだろう。言わずにサークレラの公爵家を敵に回す危険性も、十分すぎるほど理解していた。
「宰相閣下は……あなた様方を利用、いえ。なんとか取り込もうと……ではなく、その……」
結局何を言ったらいいかわからなくなる。困惑した表情で俯いた彼に、リシュアが近づいて膝をついた。手を差し出して彼を立たせると、その目を覗き込む。
「別室でお話を聞かせていただきましょう」
「はい」
魅了の眼差しに逆らえず、抵抗なく頷いた使者を伴ったリシュアの後ろを、リオネルが続いた。彼らを見送ったルリアージェが首をかしげる。
「いま、魅了の……」
「リア様、着替えましょうよ。晩餐ですわ」
「そうね。着替え用魔法陣の説明も途中だったし、折角だから発動させてから詳細な説明をするわ」
パウリーネとライラが絶妙のタイミングで邪魔をする。そのままルリアージェの興味を魔法陣へ向け、誘導しながら彼女らは割り当てられた客室へ吸い込まれた。
見事な手並みに苦笑いしたジルが、宿の主人へ金貨を数枚置いて「宿泊は今日まで。予約した分は支払う」とキャンセルの申し出をした。支払いをしてくれるなら、宿の主人に文句はない。笑顔で金貨を受け取る彼に念を押した。
「予定していた 3日間は宿泊したことにしてくれ。誰か訪ねてきても留守にしていると誤魔化してくれると助かる。これは頼み事の追加分だ」
宿泊費と同額の金貨を握らせれば、宿屋の主人は大きく頷いた。
「さて、ラーゼンはどこまで関わってるやら」
突然使者の態度が変わったのは、国王か宰相の態度に怯えてのものだ。つまり彼らのどちらかに、魔性が干渉している。この北国ツガシエは風の魔王ラーゼンの支配地域が近く、炎の魔王マリニスの火山への通り道だった。
彼らの干渉は事前に想定している。関わった存在が魔王自身か、それとも彼の配下かで対応が多少変わる程度の問題だった。短く偽装した黒髪の先を指先で弄りながら、ジルは整った顔に笑みを浮かべた。
「どちらでも結果は同じだが……」
ルリアージェに手出しするなら、二度と近寄らないように排除するだけ。魔王相手に負けるつもりも、譲る気もなかった。
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