【完結】帝国滅亡の『大災厄』、飼い始めました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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第二十一章 寿命という概念

第95話 仮装する収穫祭(5)

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「お、見えてきた」

 大量の人々が埋め尽くす広場で、噴水の近くに作られた櫓に似た建物がある。イベント用に臨時で作ったらしく、木組みの簡易なステージだった。

「……綺麗だ」

 踊り子が薄い生地を纏わせながら、ひらひらと踊り続ける。名のある踊り手なのだろう。周囲から「アリア」や「シェリー」といった名前が飛び交った。名を呼ばれると応えながら、踊り子達は音楽が止まるまでステージを賑やかす。

「見事だわ」

 ライラも感心した声をあげる。踊りが終わると、彼女らの後ろに大きな袋が大量に届けられた。一際高い歓声が上がった観客の様子に驚いていると、上から小さな袋がばら撒かれる。手のひらに乗る小さな紙袋を開くと、飴や焼き菓子が包まれていた。

 王家を示す紋章が押印された紙袋は、踊り子たちの手で国民の上に降り注ぐ。これが王族からのお振る舞いなのだろう。次に受け止めた袋には銀貨が1枚、その次は髪飾りらしきアクセサリーが入っていた。どうやら内容はかなりバリエーション豊からしい。

 重そうな袋もあれば、軽い袋もある。恒例となった袋撒きが終わると、都の住人も観光客も徐々に広場から散り始めた。ルリアージェは受け止めた5つの袋を手に振り返る。

 手ぶらの魔性達に首を傾げ、「お前達は拾わなかったのか?」と口にした。言った後で、彼らは何でも欲しい物が手に入るのだから、拾う必要はないのかと納得する。しかし、肩を竦めたジルは予想外の言葉をくれた。

「リアが楽しんでるんだから、参加するさ。ただ他人の手から奪う奴も結構いたから、こうやって……ほら、確保してある」

「あたくしも」

「私もですわ」

「当然ですね」

「楽しむのが祭りのルールですから」

 それぞれに収納魔法の口を少し開いて見せてくれた。中に紙袋が複数落ちているのがわかる。彼らも一緒に紙袋拾いをしてくれたことが嬉しくて、ルリアージェは笑顔になった。

「夕食は屋台で済ませる? それとも宿に戻る?」

 宿の食堂も祭りに合わせて料理を用意するだろう。どちらでも構わないと決定権を委ねるライラへ、変装した赤毛美女は「うーん」と迷う様子をみせた。出かける前に宿の主人が口にした「収穫祭の時期の民族料理」も気になるが、屋台の食べ歩きも捨てがたい。

「リア、祭りはまだ2日あるんだから、今日と明日で分けたらどうだ?」

 ジルが提案した内容は、どちらも選べる魅力的なものだった。目を輝かせたルリアージェが「ならば今日は宿で食べる!」と答えを高らかに告げる。他の魔性に異存などあるわけなく、足を宿がある南へ向けた。
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