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23.神様よりセティがいい
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美味しい! 初めて口に入れられたのは、知らないお菓子だった。サクサクして、口の中でほろりと崩れる。
「んっ!」
食べてる最中に口を開けるのは行儀が悪い。それは教わったばかりなので、美味しいと言いかけた口を手で押さえた。でも早く伝えたくて、身振り手振りで伝える。両手で頬を包んで、それからお菓子をひとつ摘んだ。僕が摘んだお菓子を唇に当てると、笑ったセティが口を開く。
セティはお菓子と一緒に僕の指も食べて、舐めてから取り出した。濡れて光る指先に、ちゅっと音を立ててキスする。
「うん、うまいな。気に入ったならもう少し買おうか」
屋台という道にある店で買ったお菓子を、追加でまた購入したセティが肩に掛けた鞄にしまう。大きなお菓子をようやく飲み込んで、僕は声を出した。
「セティ、これ美味しかった。ありがとう」
お礼の言葉は言われると嬉しい。だから、セティにもたくさん言いたい。いつも抱っこしてくれて、僕を撫でてくれて、叩かないでくれてありがとう。いっぱいのありがとうは、毎日少しずつ伝えていた。
「ああ、明日からまた旅にでるし。飴の補充もしておかないと」
きらきらした輝く甘い飴が並んだお店で、少し大きめの瓶に入った飴を買ってもらう。入れ物が重いけど、セティの魔法の部屋は重くないんだって。だから瓶を抱えたセティが、人に見えない場所でこっそり瓶を部屋に入れた。
見ている間に後ろから伸びた手に口を塞がれ、叫ぶ余裕もなく袋を被させられた。転がるような乱暴な扱いのあと、僕の手足が動かなくなる。何が起きたんだろう。セティはどうしたの?
怖くなるけど、きっとセティが助けてくれると思う。森で野宿した時、何度も言われた。危ない時は心の中で叫べばいい。セティの名じゃなくて、神様の名前だ。
タイフォン様、タイフォン様、僕をセティのところへ返して。タイフォン様、セティと一緒にいたいです。
必死に神様の名とセティの名を繰り返す。願いが届く位置に、神様はいる。セティがそう教えてくれたから。
ぐらぐら揺れる体に、僕は運ばれているんだと気づいた。抱っこに似た揺れの後、どこかへ落とされる。ぶわっと腹の辺りが変な感じになって、ごつんと何かにぶつかった。
頭が痛い。じわっと涙が滲んだ。前は我慢できたけど、セティの優しい手に慣れたから……今は我慢したくない。痛いよ、セティ。撫でてほしいのに……。
タイフォン様、まだ声は届かない? セティ、怖いよ。セティ……タイフォン様じゃなくて、セティがいい。
滲んだ涙が乾き掛けた頃、低い声が聞こえた。
「なんだ、てめぇ」
「死にてえのか」
びくっと肩を揺らした僕は、次に聞こえた声に目を見開いた。被せられた袋の中では何も見えないけど、聞こえたのはセティの声だ。普段と違う、すごく低くて怖い声だけど……セティが来てくれた。
「死にてえのはそっちだろ。オレのお気に入りを掠め取ろうたぁ、いい度胸じゃねえか」
「んっ!」
食べてる最中に口を開けるのは行儀が悪い。それは教わったばかりなので、美味しいと言いかけた口を手で押さえた。でも早く伝えたくて、身振り手振りで伝える。両手で頬を包んで、それからお菓子をひとつ摘んだ。僕が摘んだお菓子を唇に当てると、笑ったセティが口を開く。
セティはお菓子と一緒に僕の指も食べて、舐めてから取り出した。濡れて光る指先に、ちゅっと音を立ててキスする。
「うん、うまいな。気に入ったならもう少し買おうか」
屋台という道にある店で買ったお菓子を、追加でまた購入したセティが肩に掛けた鞄にしまう。大きなお菓子をようやく飲み込んで、僕は声を出した。
「セティ、これ美味しかった。ありがとう」
お礼の言葉は言われると嬉しい。だから、セティにもたくさん言いたい。いつも抱っこしてくれて、僕を撫でてくれて、叩かないでくれてありがとう。いっぱいのありがとうは、毎日少しずつ伝えていた。
「ああ、明日からまた旅にでるし。飴の補充もしておかないと」
きらきらした輝く甘い飴が並んだお店で、少し大きめの瓶に入った飴を買ってもらう。入れ物が重いけど、セティの魔法の部屋は重くないんだって。だから瓶を抱えたセティが、人に見えない場所でこっそり瓶を部屋に入れた。
見ている間に後ろから伸びた手に口を塞がれ、叫ぶ余裕もなく袋を被させられた。転がるような乱暴な扱いのあと、僕の手足が動かなくなる。何が起きたんだろう。セティはどうしたの?
怖くなるけど、きっとセティが助けてくれると思う。森で野宿した時、何度も言われた。危ない時は心の中で叫べばいい。セティの名じゃなくて、神様の名前だ。
タイフォン様、タイフォン様、僕をセティのところへ返して。タイフォン様、セティと一緒にいたいです。
必死に神様の名とセティの名を繰り返す。願いが届く位置に、神様はいる。セティがそう教えてくれたから。
ぐらぐら揺れる体に、僕は運ばれているんだと気づいた。抱っこに似た揺れの後、どこかへ落とされる。ぶわっと腹の辺りが変な感じになって、ごつんと何かにぶつかった。
頭が痛い。じわっと涙が滲んだ。前は我慢できたけど、セティの優しい手に慣れたから……今は我慢したくない。痛いよ、セティ。撫でてほしいのに……。
タイフォン様、まだ声は届かない? セティ、怖いよ。セティ……タイフォン様じゃなくて、セティがいい。
滲んだ涙が乾き掛けた頃、低い声が聞こえた。
「なんだ、てめぇ」
「死にてえのか」
びくっと肩を揺らした僕は、次に聞こえた声に目を見開いた。被せられた袋の中では何も見えないけど、聞こえたのはセティの声だ。普段と違う、すごく低くて怖い声だけど……セティが来てくれた。
「死にてえのはそっちだろ。オレのお気に入りを掠め取ろうたぁ、いい度胸じゃねえか」
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