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32セティが違う人みたい
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「声がけを許した覚えはないぞ」
布を被せられて助けてもらった時みたいに、低い声でセティが白い服の人を怒った。僕が怒られてるんじゃないけど、怖い。きゅっとしがみつけば、背中をトントンと叩いてくれた。優しい動きで痛くない。
寝ちゃいそうなくらい、気持ちいい。しっかりしがみついたら、セティの目が優しかった。紫の目、すごく綺麗。セティの少し濃い色の肌に似合うし、黒髪はもっと好き。
見惚れてうっとりしながら首筋に顔を近づけた。セティの匂いがする。吸い込むと怖いのが薄くなった。
大丈夫、セティは僕に怒ったんじゃない。だからセティのお仕事が終わるまで待ってたら、きっと褒めてもらえる。キスしてくれるかもしれない。期待して見上げると、黒髪を撫でてから額にキスをくれた。
ちゅっと音がしたから、残りは後での合図だ。頷いてセティの背中に手を回した。僕は約束通り声を出さないで我慢すればいい。
「大司教を呼べ」
怒られたから、誰も何も言わない。頷いてすぐに1人いなくなった。セティが僕の顔を覗き込む。じっと見つめ返したところに、慌ただしく何人も駆け込んできた。
「御無礼いたしました。ご降臨いただきましたこと、僥倖に存じます」
真っ白な服で、頭からも白い布を被った人が、膝をついた。ぺたんと体を倒して頭を下げる。周囲の白い服も同じ格好で動かなくなった。
「……ぁ」
変なの、そう言おうとして手で口を塞ぐ。話しちゃダメだった。セティが口に何か放り込む仕草をしたので、思い出して飴の袋を引っ張り出す。そうだ、話しちゃいけない時は飴を舐めてれば忘れない。
セティはいろいろ知っててすごい。宿の人がくれた最後の飴を口に入れた。慌ててたので、歯に飴が当たってからんと音がする。静かすぎる広い部屋は音がよく響いた。
ごめんなさい。心の中で謝って飴を静かに口の中で転がす。音がしないように、舌で包むようにした。
「顔をあげよ」
だいぶ時間をかけて、ようやくセティが声をかけた。頭の上まで真っ白な布を被った人だけ顔を上げ、膝の上に座った僕をじっと見る。なんだか驚いてるみたい。こてりと首を傾げた僕を、セティが引き寄せた。
肩のところに頭が乗る。白い服の人は怖いので、そのままセティの首に顔を埋めた。
「発言をお許しください」
白い服の人が穏やかな声で話しかける。ちらりと目を向けたものの、またセティにしがみついた。やっぱりやだ。
「……なんだ?」
「タイフォン様がお連れの、そのお子様はどちらのご子息でしょうか」
「知らぬと申すか」
普段と違う言葉を使うセティが、違う人みたい。だからじっと見つめた。長い黒髪に指で触れて、その肌に頬を擦り付ける。紫の目は僕と同じ。この人は僕の知ってるセティだ。何度も自分の中で繰り返した。
布を被せられて助けてもらった時みたいに、低い声でセティが白い服の人を怒った。僕が怒られてるんじゃないけど、怖い。きゅっとしがみつけば、背中をトントンと叩いてくれた。優しい動きで痛くない。
寝ちゃいそうなくらい、気持ちいい。しっかりしがみついたら、セティの目が優しかった。紫の目、すごく綺麗。セティの少し濃い色の肌に似合うし、黒髪はもっと好き。
見惚れてうっとりしながら首筋に顔を近づけた。セティの匂いがする。吸い込むと怖いのが薄くなった。
大丈夫、セティは僕に怒ったんじゃない。だからセティのお仕事が終わるまで待ってたら、きっと褒めてもらえる。キスしてくれるかもしれない。期待して見上げると、黒髪を撫でてから額にキスをくれた。
ちゅっと音がしたから、残りは後での合図だ。頷いてセティの背中に手を回した。僕は約束通り声を出さないで我慢すればいい。
「大司教を呼べ」
怒られたから、誰も何も言わない。頷いてすぐに1人いなくなった。セティが僕の顔を覗き込む。じっと見つめ返したところに、慌ただしく何人も駆け込んできた。
「御無礼いたしました。ご降臨いただきましたこと、僥倖に存じます」
真っ白な服で、頭からも白い布を被った人が、膝をついた。ぺたんと体を倒して頭を下げる。周囲の白い服も同じ格好で動かなくなった。
「……ぁ」
変なの、そう言おうとして手で口を塞ぐ。話しちゃダメだった。セティが口に何か放り込む仕草をしたので、思い出して飴の袋を引っ張り出す。そうだ、話しちゃいけない時は飴を舐めてれば忘れない。
セティはいろいろ知っててすごい。宿の人がくれた最後の飴を口に入れた。慌ててたので、歯に飴が当たってからんと音がする。静かすぎる広い部屋は音がよく響いた。
ごめんなさい。心の中で謝って飴を静かに口の中で転がす。音がしないように、舌で包むようにした。
「顔をあげよ」
だいぶ時間をかけて、ようやくセティが声をかけた。頭の上まで真っ白な布を被った人だけ顔を上げ、膝の上に座った僕をじっと見る。なんだか驚いてるみたい。こてりと首を傾げた僕を、セティが引き寄せた。
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