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82.ごめんね、でいいと思う
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がりがりと炭で字の練習をした。お昼までは書く練習、お昼を食べたら寝る。起きてから夕方まで本を読んでもらうんだ。セティの声は耳に気持ちよくて、ずっと聞いていたい。決まった分を練習して、時間が余ったから覚えた文字を書いた。
セティの名前と僕の名前。並べて練習していると、褒めてくれた。
「よく書けた。上手だぞ」
「こりゃ、俺よりうまいな」
ゲリュオンは珍しくご飯が終わっても、勉強に付き合ってくれた。今日はセティと難しいお話があるんだって。お昼の分も持ち込んだと言って、たくさんの果物や野菜を運んである。難しい話をしながら、時々僕の勉強具合をみて褒めてくれるの。
「イシス、悪いことをした人をどうしたいと思う?」
「どのくらい悪いこと?」
意地悪なこと言うくらい? それとも叩いたりするくらい? 蹴飛ばすのは悪いことだよね。
「すごく痛くて酷いことだ」
僕が覚えてる一番ひどいのは、セティと離された時。頭に袋掛けられて怖かったし、蹴られたのも痛かった。何も見えなくて、セティがいないのが嫌だった。
次は洞窟に誰も来なくなった時。外が白くなって寒い日が続いて、誰も洞窟にいなかった。寒くて毛布にくるまった。ご飯もなかったし、お水ももらえなかった。体がだんだん動かなくなったっけ。
あれも痛くて酷いから、悪いことだったのかも。やられたら嫌だけど、やり返したいと思わない。だって、同じことされたら泣いちゃうでしょ?
「僕はごめんね、ってされたらいい」
「そうか」
なぜかセティは驚いたみたい。おかしな返事をしたのかな。考えてみて、悪いことした人をどうする? と聞かれたのに、僕がして欲しいことを答えてる。間違った!
「えっと、悪いことしないって思ってほしい」
「いい子だな」
トムがぽんと膝に飛び乗った。床から飛ぶの、すごいよね。抱っこしたら柔らかくて、温かい。すごく気持ちがいいから、ぎゅっと抱っこした。ぐるぐると喉の音がするのは、機嫌がいい証拠なんだ。昨日、ゲリュオンが言ってた。
「ほんっと、下手な神より格が高いな」
「オレの嫁だからな」
頭の上で聞こえる会話は、僕の話? トムが動かなくなって、寝ちゃったみたい。服に引っ掛かった爪を外して、膝の上に置き直した。ぐるっとまん丸くなった子猫が、みゅぅと小さな声をあげる。寝言かも、可愛い。ゆっくり何度も撫でた。
「あいつらが謝罪すると思うか?」
「無理だな」
「だよな。オレとお前で片付けるか」
「まあ、あんたがいいなら問題ないが」
ゲリュオンがちらりと僕を見る。首をかしげて見つめ返すと、にかっと笑った。なんだかおかしくなって、僕も笑う。
「連れてくのか?」
「置いていく方が危険だと言ったのはお前だろ」
「そうだったな」
肩を竦めたゲリュオンから目を逸らした僕は、セティの胸に頭を預けて欠伸をひとつ。なんだか眠いんだよ、セティと一緒だと安心しちゃう。まだ早い時間なのに……起きてなくちゃ! 目を擦ろうとした僕の手を掴んで、セティは優しく僕の目元を覆った。温かくていい匂いがする。
背中や頬に触れる温もりに誘われて、僕は目を閉じた。
セティの名前と僕の名前。並べて練習していると、褒めてくれた。
「よく書けた。上手だぞ」
「こりゃ、俺よりうまいな」
ゲリュオンは珍しくご飯が終わっても、勉強に付き合ってくれた。今日はセティと難しいお話があるんだって。お昼の分も持ち込んだと言って、たくさんの果物や野菜を運んである。難しい話をしながら、時々僕の勉強具合をみて褒めてくれるの。
「イシス、悪いことをした人をどうしたいと思う?」
「どのくらい悪いこと?」
意地悪なこと言うくらい? それとも叩いたりするくらい? 蹴飛ばすのは悪いことだよね。
「すごく痛くて酷いことだ」
僕が覚えてる一番ひどいのは、セティと離された時。頭に袋掛けられて怖かったし、蹴られたのも痛かった。何も見えなくて、セティがいないのが嫌だった。
次は洞窟に誰も来なくなった時。外が白くなって寒い日が続いて、誰も洞窟にいなかった。寒くて毛布にくるまった。ご飯もなかったし、お水ももらえなかった。体がだんだん動かなくなったっけ。
あれも痛くて酷いから、悪いことだったのかも。やられたら嫌だけど、やり返したいと思わない。だって、同じことされたら泣いちゃうでしょ?
「僕はごめんね、ってされたらいい」
「そうか」
なぜかセティは驚いたみたい。おかしな返事をしたのかな。考えてみて、悪いことした人をどうする? と聞かれたのに、僕がして欲しいことを答えてる。間違った!
「えっと、悪いことしないって思ってほしい」
「いい子だな」
トムがぽんと膝に飛び乗った。床から飛ぶの、すごいよね。抱っこしたら柔らかくて、温かい。すごく気持ちがいいから、ぎゅっと抱っこした。ぐるぐると喉の音がするのは、機嫌がいい証拠なんだ。昨日、ゲリュオンが言ってた。
「ほんっと、下手な神より格が高いな」
「オレの嫁だからな」
頭の上で聞こえる会話は、僕の話? トムが動かなくなって、寝ちゃったみたい。服に引っ掛かった爪を外して、膝の上に置き直した。ぐるっとまん丸くなった子猫が、みゅぅと小さな声をあげる。寝言かも、可愛い。ゆっくり何度も撫でた。
「あいつらが謝罪すると思うか?」
「無理だな」
「だよな。オレとお前で片付けるか」
「まあ、あんたがいいなら問題ないが」
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「連れてくのか?」
「置いていく方が危険だと言ったのはお前だろ」
「そうだったな」
肩を竦めたゲリュオンから目を逸らした僕は、セティの胸に頭を預けて欠伸をひとつ。なんだか眠いんだよ、セティと一緒だと安心しちゃう。まだ早い時間なのに……起きてなくちゃ! 目を擦ろうとした僕の手を掴んで、セティは優しく僕の目元を覆った。温かくていい匂いがする。
背中や頬に触れる温もりに誘われて、僕は目を閉じた。
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