【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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92.僕の初めてのお母さん

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 初めて見るドラゴンは優しくて、綺麗で、とても穏やかな目をしていた。僕を舐めて頬ずりして、それが泣きたくなるくらい嬉しい。お話もたくさん聞いてくれて、金色の目がきらきらしてた。なんであんなに優しいんだろう。セティのお友達だから?

「イシスが優しい子だからだよ」

 セティはそう言って笑った。今日はドラゴンの巣にそのまま泊まるの。野営みたいにテント作るならお手伝いしようと思ったけど、巣が広いから端を貸してもらうみたい。一緒に奥へはいると、卵があった。両手広げてやっと届くくらいの大きな卵だ。

「赤ちゃんなの?」

「そうだ。ヴルムの4匹目の子だよ」

『他の子はすでに旅立ったけれど、イシスも私の子になるかい?』

 面白がるように言われ、じっと見つめ返す。僕がドラゴンの子になると、セティと一緒にいられないのかな。伸ばした手で背中の上と下をぺたぺた触った。羽がないからドラゴンにはなれないと思う。それに色も青くないから、子供に見えないかも。

 しょんぼりしながらセティを見上げると、お腹の袋に入れたトムが動いた。ひょこっと顔を覗かせ、み゛ゃっと変な声を出して引っ込む。それを撫でてあげた。驚かせちゃったみたいだ。

「似てなくても母親になってくれるぞ」

「そうなの? 僕飛べないし、小さいし、青くないけど……いい?」

 青いドラゴンを見上げると、細くした目で何度も頷いてくれた。僕にお母さんが出来る! お母さんは直接知らないけど、絵本に描いてあった。優しくて温かいんだって。それで周りの人が僕を嫌いになっても、好きでいてくれる人。

『お前も私の子だよ。イシス』

「お母さんって呼んでみろ」

 セティが促すけど、恥ずかしい。もじもじしながら、何度も口を開いてはやめる繰り返しだった。するとドラゴンが笑いながら、後ろの卵を引き寄せる。

『早くしないとこの子が出てきて、末っ子になっちゃうわ』

 きょとんとして卵を見る。青白い殻に包まれた卵の中で、何か影が動いていた。あれがドラゴンの赤ちゃんで、僕はお兄ちゃんになれる?

「お、かあさん」

『立派で可愛い息子が増えて、私も幸せだね』

 卵を抱いていない方の腕が伸ばされ、爪に両手でしがみ付いた。軽々と運ばれて、大きな舌で胸の辺りから頭の天辺まで舐められる。擽ったくて、笑いながら抱き着いた。牙が僕の半分くらいあって、口にすっぽり飲み込まれそう。でも怖くないんだ。

 お母さんだもん。僕の初めてのお母さんだ!

「よかったな、イシス」

 笑いながら僕を取り返したセティが、びしょ濡れの髪を拭いてくれる。

「4番目か」

『そうだね、この卵は弟になるんだよ』

 卵はじたばた動いてる、まるでお兄ちゃんは自分だって言いたいみたい。

「僕、弟でもいいよ……早く会いたいな」

 弟も欲しいし、お兄ちゃんも欲しい。セティと会ってから、いろんなものを手に入れて知って、僕は欲張りになった。お母さんが出来たばかりなのに、兄弟が欲しいんだよ。これは汚い欲なのかな。

「みゃぁ」

 トムが顔を覗かせて、濡れた僕の手をぺろぺろと舐めた。でもすぐに引っ込んじゃう。大きいからお母さんが怖いのかも。袋から出して、僕はしっかりと腕にトムを抱っこした。

「お母さん、この子……トムです。僕がお母さんしてるの」

『おやまあ、孫までいたとはね』

 笑いながら子猫に鼻を近づけたドラゴンに、トムはぺろっと舌を出して挨拶した。
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