106 / 321
105.目の色と同じ水晶を掘った
しおりを挟む
丘を登らず、ぐるりと歩いた。僕の足元を歩くトムが、ときどき足の間に入るから踏みそうになる。気を付けながら進んだ先で、ぽこっと突き出た岩を見つけてセティが足を止めた。
「これだ」
こんこんと岩を叩く。セティの背丈ほどの岩はちょっと艶があった。お父さん達の鱗に似てるかな。近づいて撫でると、真ん中より上に何か出た。艶のある黒い丸い物が動いて、僕の方を見てる気がする。顔を近づけると、トムが飛びついた。お腹の袋にごそごそと潜り込んで「ふぅ――っ」と威嚇する。
「ここが頭だ。ほら、丘全部が体なんだよ」
言われて上を見上げる。ぺたんと平らにお腹を付けて寝てるんだと言われても、大きすぎてよくわからなかった。セティが木の枝で亀の絵を描いてくれる。すごく上手だね。スープ皿をひっくり返したみたいな形で、前に顔、後ろに尻尾、横に手足が出て来るんだって。
「滅多に動かないんだが……よう、久しぶり」
セティが挨拶して、鼻っぽいところを叩いた。すると穴が開いて息を吹く。水の匂いがした。
『久しいのぉ』
「嫁が出来たんで連れてきた」
ほらっと僕を抱っこして目に近づける。真っ黒の目は瞬きすると、金色になった。お父さん達と同じだ。みんな金色なんだね。じっくり僕を眺めた後、また目が閉じて黒くなる。
『純粋な子のようじゃが、どこから攫ってきよった?』
「お前らにオレがどう思われてるかよく分かるな。捧げられた贄だ」
『人間とは、ほんに非道なことを為す生き物よ』
呆れかえった口調で息をつく。その溜め息が川と同じ匂いで、僕は目を見開いた。
「セティ、水の匂いがする」
驚いた顔をしたセティだけど、すぐに撫でてくれた。この亀さんは水の近くに棲んでいて、水の神様と同じなんだって。水の匂いの理由が分かって、僕は頷いた。大きな亀さんに飛びついて、鼻先を撫でてみる。冷たいけど気持ちいい。
『全部回るのかい?』
「ああ。神になる前に顔合わせはしておきたい」
『ならば今夜はわしの隣で寝るがよいわ』
ぐわっと亀さんが両手足を出し、身を起こす。大地が大きく揺れて体に積もっていた土が落ちてきた。セティに促されて、トムの入った袋を抱きしめて飛び込む。亀さんのお腹の下は安全だった。がらがらと石や土が落ちる音がして、草が千切れる音も聞こえる。
『ほれ、渡しておこう』
何だろう、これ。何かお皿みたいな欠片をもらった。艶があって綺麗。
「ありがと、綺麗だね」
『ほほっ、褒められるとは心地よいのぉ』
笑った亀さんが少し動き、足元に日が当たるとキラキラしていた。
「こりゃまた、ずいぶん寝てたんだな」
セティが教えてくれたのは、この亀さんは水の神様の1人で普段は動かないこと。その腹の下には銀が集まり、水晶が生える。動かない時間が長いほど、たくさん水晶と銀が光るみたい。持って行っていいと言われて、セティがいくつか拾って収納へ入れた。
僕も拾ったけど、途中で違う色の水晶を見つける。色がセティの目の色と同じ、紫なんだよ。すごい! 大きい柱みたいになった紫を指さした。
「見て、セティ。目の色と同じ」
「珍しいな。掘り起こすか」
二人で穴を掘っていると、袋から出たトムも手伝ってくれた。トムは掘るの早いけど、土を僕に飛ばすんだ。笑ったセティがトムの向きを変えたら、僕に飛んでこなくなったけど。セティと一緒に掘った柱に体重をかけると、ぐらっと傾いて抜けた。
「すごい! 大きいねぇ」
嬉しくなった。隣に立つとお腹の辺りまであるよ。僕の足より長い。
「これも貰っていいの?」
『おうおう、腹の下で何やら刺さると思ったら……持っておいき』
亀さんは低い声で笑って許してくれた。セティが収納にしまい、僕達は野営の準備を始める。テントを張って、亀さんに寄り掛かってご飯を用意した。焼いたお肉、亀さんには小さいけど「あーん」したら食べてくれた。嬉しい。
「これだ」
こんこんと岩を叩く。セティの背丈ほどの岩はちょっと艶があった。お父さん達の鱗に似てるかな。近づいて撫でると、真ん中より上に何か出た。艶のある黒い丸い物が動いて、僕の方を見てる気がする。顔を近づけると、トムが飛びついた。お腹の袋にごそごそと潜り込んで「ふぅ――っ」と威嚇する。
「ここが頭だ。ほら、丘全部が体なんだよ」
言われて上を見上げる。ぺたんと平らにお腹を付けて寝てるんだと言われても、大きすぎてよくわからなかった。セティが木の枝で亀の絵を描いてくれる。すごく上手だね。スープ皿をひっくり返したみたいな形で、前に顔、後ろに尻尾、横に手足が出て来るんだって。
「滅多に動かないんだが……よう、久しぶり」
セティが挨拶して、鼻っぽいところを叩いた。すると穴が開いて息を吹く。水の匂いがした。
『久しいのぉ』
「嫁が出来たんで連れてきた」
ほらっと僕を抱っこして目に近づける。真っ黒の目は瞬きすると、金色になった。お父さん達と同じだ。みんな金色なんだね。じっくり僕を眺めた後、また目が閉じて黒くなる。
『純粋な子のようじゃが、どこから攫ってきよった?』
「お前らにオレがどう思われてるかよく分かるな。捧げられた贄だ」
『人間とは、ほんに非道なことを為す生き物よ』
呆れかえった口調で息をつく。その溜め息が川と同じ匂いで、僕は目を見開いた。
「セティ、水の匂いがする」
驚いた顔をしたセティだけど、すぐに撫でてくれた。この亀さんは水の近くに棲んでいて、水の神様と同じなんだって。水の匂いの理由が分かって、僕は頷いた。大きな亀さんに飛びついて、鼻先を撫でてみる。冷たいけど気持ちいい。
『全部回るのかい?』
「ああ。神になる前に顔合わせはしておきたい」
『ならば今夜はわしの隣で寝るがよいわ』
ぐわっと亀さんが両手足を出し、身を起こす。大地が大きく揺れて体に積もっていた土が落ちてきた。セティに促されて、トムの入った袋を抱きしめて飛び込む。亀さんのお腹の下は安全だった。がらがらと石や土が落ちる音がして、草が千切れる音も聞こえる。
『ほれ、渡しておこう』
何だろう、これ。何かお皿みたいな欠片をもらった。艶があって綺麗。
「ありがと、綺麗だね」
『ほほっ、褒められるとは心地よいのぉ』
笑った亀さんが少し動き、足元に日が当たるとキラキラしていた。
「こりゃまた、ずいぶん寝てたんだな」
セティが教えてくれたのは、この亀さんは水の神様の1人で普段は動かないこと。その腹の下には銀が集まり、水晶が生える。動かない時間が長いほど、たくさん水晶と銀が光るみたい。持って行っていいと言われて、セティがいくつか拾って収納へ入れた。
僕も拾ったけど、途中で違う色の水晶を見つける。色がセティの目の色と同じ、紫なんだよ。すごい! 大きい柱みたいになった紫を指さした。
「見て、セティ。目の色と同じ」
「珍しいな。掘り起こすか」
二人で穴を掘っていると、袋から出たトムも手伝ってくれた。トムは掘るの早いけど、土を僕に飛ばすんだ。笑ったセティがトムの向きを変えたら、僕に飛んでこなくなったけど。セティと一緒に掘った柱に体重をかけると、ぐらっと傾いて抜けた。
「すごい! 大きいねぇ」
嬉しくなった。隣に立つとお腹の辺りまであるよ。僕の足より長い。
「これも貰っていいの?」
『おうおう、腹の下で何やら刺さると思ったら……持っておいき』
亀さんは低い声で笑って許してくれた。セティが収納にしまい、僕達は野営の準備を始める。テントを張って、亀さんに寄り掛かってご飯を用意した。焼いたお肉、亀さんには小さいけど「あーん」したら食べてくれた。嬉しい。
225
あなたにおすすめの小説
前世が飼い猫だったので、今世もちゃんと飼って下さい
夜鳥すぱり
BL
黒猫のニャリスは、騎士のラクロア(20)の家の飼い猫。とってもとっても、飼い主のラクロアのことが大好きで、いつも一緒に過ごしていました。ある寒い日、メイドが何か怪しげな液体をラクロアが飲むワインへ入れています。ニャリスは、ラクロアに飲まないように訴えるが……
◆いつもハート、エール、しおりをありがとうございます。冒頭暗いのに耐えて読んでくれてありがとうございました。いつもながら感謝です。
◆お友達の花々緒さんが、表紙絵描いて下さりました。可愛いニャリスと、悩ましげなラクロア様。
◆これもいつか続きを書きたいです、猫の日にちょっとだけ続きを書いたのだけど、また直して投稿します。
この契約結婚は君を幸せにしないから、破棄して、逃げて、忘れます。
箱根ハコ
BL
誰もが羨む将来の騎士団長候補であるルーヴェルは、怪物を倒したところ、呪われてしまい世にも恐ろしい魔獣へと姿を変えられてしまった。
これまで彼に尊敬の目を向けてきたというのに、人々は恐れ、恋人も家族も彼を遠ざける中、彼に片思いをしていたエルンは言ってしまった。
「僕が彼を預かります!」
僕だけは、彼の味方でいるんだ。その決意とともに告げた言葉がきっかけで、彼らは思いがけず戸籍上の夫婦となり、郊外の寂れた家で新婚生活を始めることになってしまった。
五年後、ルーヴェルは元の姿に戻り、再び多くの人が彼の周りに集まるようになっていた。
もとに戻ったのだから、いつまでも自分が隣にいてはいけない。
この気持ちはきっと彼の幸せを邪魔してしまう。
そう考えたエルンは離婚届を置いて、そっと彼の元から去ったのだったが……。
呪いのせいで魔獣になり、周囲の人々に見捨てられてしまった騎士団長候補✕少し変わり者だけど一途な植物学者
ムーンライトノベルス、pixivにも投稿しています。
【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。
【完結】王子様たちに狙われています。本気出せばいつでも美しくなれるらしいですが、どうでもいいじゃないですか。
竜鳴躍
BL
同性でも子を成せるようになった世界。ソルト=ペッパーは公爵家の3男で、王宮務めの文官だ。他の兄弟はそれなりに高級官吏になっているが、ソルトは昔からこまごまとした仕事が好きで、下級貴族に混じって働いている。机で物を書いたり、何かを作ったり、仕事や趣味に没頭するあまり、物心がついてからは身だしなみもおざなりになった。だが、本当はソルトはものすごく美しかったのだ。
自分に無頓着な美人と彼に恋する王子と騎士の話。
番外編はおまけです。
特に番外編2はある意味蛇足です。
この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!
ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。
ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。
これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。
ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!?
ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19)
公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる