227 / 321
225.借りたコカトリスで走り出す
しおりを挟む
今日は曇り空で、あまり暑くなかった。前にお母さん達と住んでいた大陸は、海という塩からい水たまりの向こう側で寒くなり始めだったのに。船で海を渡ったら暖かくて驚いた。日差しが出てると暑いんだと教えてもらい、僕はジュースをストローで吸う。
ストローの扱いも上手になって、喉の奥に飛び込むこともなくなった。ちょっとずつ飲めるし、色が上がってくるのが楽しい。氷を入れてもらったから、冷たくて気持ちよかった。
「イシス、乗り物だが……どっちがいい?」
手を繋いだ僕は目の前にいる動物を交互に見る。片方はコカトリスで鳥の顔したドラゴンみたいの。でもお父さん達みたいにカッコよくなくて、2本脚で走るんだ。もう片方は駝馬だった。こっちは荷車を引っ張ってる姿を前に見ている。
「揺れはまあ同じようなもんだが、こっちのが速い。荷物もないし、コカトリスでいいか?」
「僕、どっちも平気」
どっちも初めてだけど、怖くないよ。空を飛ぶお父さんの時も平気だったし、フェルの背中も楽しかったもん。セティは足の速いコカトリスを選んだ。酔うかもと注意されてたけど、問題ないとセティが言い切る。お酒じゃなくても酔うのは分からないけど、具合悪くなることかも知れない。
借りる日数のお金を払って、僕はコカトリスの上に乗せてもらった。ごつごつした鱗はお父さんに似てる。撫でたらくるっと首がこっちを向いた。
「っ、すごいね」
びっくりした。自分の首の後ろが見えるの? 僕は出来ないから驚いたし感心する。嘴が付いていて、グリフォンみたい。お父さんが肉がうまいと捕まえてきたあの鳥は、嘴がこんな感じで尖っていた。ちょっと手を伸ばして撫でたら、目を細める。気持ちよさそう。
「こら、目を離した隙に何をしてるんだ。指を食われちゃうぞ」
後ろに飛び乗ったセティが脅かすけど、そんなことしないよね? 首を傾げてまた嘴のところを撫でたら、くるるっと可愛い声がした。貸してくれたおじさんがびっくりした顔で「こりゃたまげた」と呟くけど、たまげたって何?
「いくぞ。掴まってろ」
革の綱がついたコカトリスは、セティの合図で立ち上がると走り出した。町を出るまではゆっくり、外へ出たら全力で走ってもいいんだって。ここはもう町の出口の近くだから、すぐにコカトリスは走り出した。翼もときどきバサバサと音をさせる。顔を突き出して走るコカトリスは、フェルより遅かった。
揺れはフェルの方が少ないけど、前後左右に揺れるお父さんの上と比べたら乗り心地はいい。
「ファフニールの場合は前後左右だけじゃなくて、上下にも揺れるからな」
風の影響も受けやすいし、空を飛ぶ種族の中では揺れない方だと教えてもらった。お父さんやお兄さん、お母さんは飛ぶのが上手なんだね。だから怖くなかったのかな。やっぱりドラゴンは凄い生き物みたい。
町から離れたセティの合図で、今度は道を離れていく。木がまばらな森の中に飛び込み、そのままコカトリスは走った。
「よし、止まれ。いい子だ」
セティが革を引くと、コカトリスはぴたりと足を止めた。くるっと僕を見る。目が大きくてくりくりしてて、ボリスを思い出した。手を伸ばして嘴の上と付け根を撫でたら、また可愛い声がする。くるるって鳴き方、僕は好きだ。
ストローの扱いも上手になって、喉の奥に飛び込むこともなくなった。ちょっとずつ飲めるし、色が上がってくるのが楽しい。氷を入れてもらったから、冷たくて気持ちよかった。
「イシス、乗り物だが……どっちがいい?」
手を繋いだ僕は目の前にいる動物を交互に見る。片方はコカトリスで鳥の顔したドラゴンみたいの。でもお父さん達みたいにカッコよくなくて、2本脚で走るんだ。もう片方は駝馬だった。こっちは荷車を引っ張ってる姿を前に見ている。
「揺れはまあ同じようなもんだが、こっちのが速い。荷物もないし、コカトリスでいいか?」
「僕、どっちも平気」
どっちも初めてだけど、怖くないよ。空を飛ぶお父さんの時も平気だったし、フェルの背中も楽しかったもん。セティは足の速いコカトリスを選んだ。酔うかもと注意されてたけど、問題ないとセティが言い切る。お酒じゃなくても酔うのは分からないけど、具合悪くなることかも知れない。
借りる日数のお金を払って、僕はコカトリスの上に乗せてもらった。ごつごつした鱗はお父さんに似てる。撫でたらくるっと首がこっちを向いた。
「っ、すごいね」
びっくりした。自分の首の後ろが見えるの? 僕は出来ないから驚いたし感心する。嘴が付いていて、グリフォンみたい。お父さんが肉がうまいと捕まえてきたあの鳥は、嘴がこんな感じで尖っていた。ちょっと手を伸ばして撫でたら、目を細める。気持ちよさそう。
「こら、目を離した隙に何をしてるんだ。指を食われちゃうぞ」
後ろに飛び乗ったセティが脅かすけど、そんなことしないよね? 首を傾げてまた嘴のところを撫でたら、くるるっと可愛い声がした。貸してくれたおじさんがびっくりした顔で「こりゃたまげた」と呟くけど、たまげたって何?
「いくぞ。掴まってろ」
革の綱がついたコカトリスは、セティの合図で立ち上がると走り出した。町を出るまではゆっくり、外へ出たら全力で走ってもいいんだって。ここはもう町の出口の近くだから、すぐにコカトリスは走り出した。翼もときどきバサバサと音をさせる。顔を突き出して走るコカトリスは、フェルより遅かった。
揺れはフェルの方が少ないけど、前後左右に揺れるお父さんの上と比べたら乗り心地はいい。
「ファフニールの場合は前後左右だけじゃなくて、上下にも揺れるからな」
風の影響も受けやすいし、空を飛ぶ種族の中では揺れない方だと教えてもらった。お父さんやお兄さん、お母さんは飛ぶのが上手なんだね。だから怖くなかったのかな。やっぱりドラゴンは凄い生き物みたい。
町から離れたセティの合図で、今度は道を離れていく。木がまばらな森の中に飛び込み、そのままコカトリスは走った。
「よし、止まれ。いい子だ」
セティが革を引くと、コカトリスはぴたりと足を止めた。くるっと僕を見る。目が大きくてくりくりしてて、ボリスを思い出した。手を伸ばして嘴の上と付け根を撫でたら、また可愛い声がする。くるるって鳴き方、僕は好きだ。
175
あなたにおすすめの小説
新年に余り物でおせちを作ったら、冷酷と噂の騎士団長様に「運命の番」だと求婚されました
水凪しおん
BL
料理人だった俺が転生したのは、男性オメガというだけで家族に虐げられる不遇の青年カイ。
新年くらいはと前世の記憶を頼りに作ったのは、この世界にはない『おせち料理』だった。
それを偶然口にしたのは、氷のように冷酷と噂される最強の騎士団長リアム。
「お前は俺の運命の番だ」
彼の屋敷に保護され、俺の作る料理が彼の心を溶かしていく。
不器用で、だけどまっすぐな愛情を注いでくれる彼と、美味しい料理で紡ぐ、甘くて温かい異世界スローライフ。
前世が飼い猫だったので、今世もちゃんと飼って下さい
夜鳥すぱり
BL
黒猫のニャリスは、騎士のラクロア(20)の家の飼い猫。とってもとっても、飼い主のラクロアのことが大好きで、いつも一緒に過ごしていました。ある寒い日、メイドが何か怪しげな液体をラクロアが飲むワインへ入れています。ニャリスは、ラクロアに飲まないように訴えるが……
◆いつもハート、エール、しおりをありがとうございます。冒頭暗いのに耐えて読んでくれてありがとうございました。いつもながら感謝です。
◆お友達の花々緒さんが、表紙絵描いて下さりました。可愛いニャリスと、悩ましげなラクロア様。
◆これもいつか続きを書きたいです、猫の日にちょっとだけ続きを書いたのだけど、また直して投稿します。
「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される
水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。
絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。
長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。
「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」
有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。
追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました
婚約破棄されてヤケになって戦に乱入したら、英雄にされた上に美人で可愛い嫁ができました。
零壱
BL
自己肯定感ゼロ×圧倒的王太子───美形スパダリ同士の成長と恋のファンタジーBL。
鎖国国家クルシュの第三王子アースィムは、結婚式目前にして長年の婚約を一方的に破棄される。
ヤケになり、賑やかな幼馴染み達を引き連れ無関係の戦場に乗り込んだ結果───何故か英雄に祭り上げられ、なぜか嫁(男)まで手に入れてしまう。
「自分なんかがこんなどちゃくそ美人(男)を……」と悩むアースィム(攻)と、
「この私に不満があるのか」と詰め寄る王太子セオドア(受)。
互いを想い合う二人が紡ぐ、恋と成長の物語。
他にも幼馴染み達の一抹の寂寥を切り取った短篇や、
両想いなのに攻めの鈍感さで拗れる二人の恋を含む全四篇。
フッと笑えて、ギュッと胸が詰まる。
丁寧に読みたい、大人のためのファンタジーBL。
他サイトでも公開しております。
表紙ロゴは零壱の著作物です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる