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18.僕らが全部手に入れてあげる
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幼い主が服を見て興奮する様子が伝わってくる。すごく行きたい。今すぐ駆けつけて、隣でその愛らしい顔を見ていたいが……ここは我慢とエルは堪えた。
身分証作りは部下に任せればいい。問題は、愛らしい主君を路上に捨てた隣国だった。エルにとって、ケイトウは取引相手のひとつだ。だが、取引を完全停止する旨を通達した。正直、販売先のひとつでしかない。取引量でいえば帝国の方が上だし、かの国から何か仕入れる必要もなかった。
向こうが頭を下げるから売ってやっただけ。それ程度の関係なので、ばっつり切り捨てる。悲惨な目に遭うのは国民なので、事前に教えてあげることにした。あなた方が口にする食料を輸入できないのは、王族が聖女に非道な行いをしたせいだ。聖女は奪われた家族の思い出を返して欲しいと願い、聖獣達はそれを叶えると約束した。
エルはにやりと笑う。聖獣ってのは慈悲深いんだよ。少なくとも自分の利益になるときは、ね。別に何人死のうと主君以外は無関係だけど、ケイトウはサラに借りがある。身ひとつで捨てたこと以前に、承諾なく召喚したこと。前の世界に戻せないのに、相手の意思を無視した。さらに数少ない荷物と思い出を奪ったって?
許せる範囲を超えている。すべての手配を終えたエルは、ついでに手紙を一通届けるよう手配した。帝国の玉座で妻の帰還を心待ちにする最後の聖獣へ。内容は事実を淡々と綴り、最後に付け加えた。我らすべての聖獣が集うべき主君だぞ、と。
これでよし。繋がりを辿れば、サラは光り輝く宝石粉のドレスはお気に召さない様子。駆けつけて、キュロットという半ズボンに似た服を探してやらなくては。アランとリディは服を選んで着せる。でも僕は彼女が着たい服を作らせる派なんだ。
熊姿で駆けつけるのは禁止されたため、エルは人の姿で走る。サラは知らないけど、聖獣は人の姿でも能力を発揮できるんだよ。聖獣が全力で走ると周囲の草花が千切れ、砂埃が舞う。中心部で人を跳ねるのは領主失格なので、エルは自制しつつ駆け足で向かった。
あれじゃない、これも無理。サラはまだ時間を稼いでくれている。本人にそんな気はないのが凄い。扉を開けて店に飛び込む。汗ひとつかかないエルは、若い領主様の涼しい顔で近づいた。
「サラ、お待たせ」
「エルの仕事は終わった?」
「うん。完璧だよ」
いっそ間に合わなければよかったのにとぼやく仲間を無視し、サラへ提案した。
「欲しい服が見つからないなら、絵を描いてみたら? その服を作ってもらおうよ」
「それがいい」
サラはすぐに目を輝かせた。ソファに下ろしてもらい、短い足を揺らしながら絵を描き始める。顔もきちんと描いて、手足に衣服を纏わせた。じっと見つめる店主とリディ達。描き終えた絵を基に指示を出す。
「エルは凄いね」
褒められたエルが得意げに見やると、リディが淑女らしからぬ顔で睨みつけてきた。すごく気分がいいね。大切な大切なご主人様、これから君が欲しいものは全部僕らが手に入れてあげる。服、宝石、食事、屋敷、国だって構わないよ。
何も知らずにこにこと笑うサラは、大きく足を振ってソファから飛び降りた。短い足をちょこちょこ動かし、店内を走り回る。うん、今日はこの店を貸切にして――当然のようにエルが告げた言葉を、店主は恭しく頭を下げて承諾した。
身分証作りは部下に任せればいい。問題は、愛らしい主君を路上に捨てた隣国だった。エルにとって、ケイトウは取引相手のひとつだ。だが、取引を完全停止する旨を通達した。正直、販売先のひとつでしかない。取引量でいえば帝国の方が上だし、かの国から何か仕入れる必要もなかった。
向こうが頭を下げるから売ってやっただけ。それ程度の関係なので、ばっつり切り捨てる。悲惨な目に遭うのは国民なので、事前に教えてあげることにした。あなた方が口にする食料を輸入できないのは、王族が聖女に非道な行いをしたせいだ。聖女は奪われた家族の思い出を返して欲しいと願い、聖獣達はそれを叶えると約束した。
エルはにやりと笑う。聖獣ってのは慈悲深いんだよ。少なくとも自分の利益になるときは、ね。別に何人死のうと主君以外は無関係だけど、ケイトウはサラに借りがある。身ひとつで捨てたこと以前に、承諾なく召喚したこと。前の世界に戻せないのに、相手の意思を無視した。さらに数少ない荷物と思い出を奪ったって?
許せる範囲を超えている。すべての手配を終えたエルは、ついでに手紙を一通届けるよう手配した。帝国の玉座で妻の帰還を心待ちにする最後の聖獣へ。内容は事実を淡々と綴り、最後に付け加えた。我らすべての聖獣が集うべき主君だぞ、と。
これでよし。繋がりを辿れば、サラは光り輝く宝石粉のドレスはお気に召さない様子。駆けつけて、キュロットという半ズボンに似た服を探してやらなくては。アランとリディは服を選んで着せる。でも僕は彼女が着たい服を作らせる派なんだ。
熊姿で駆けつけるのは禁止されたため、エルは人の姿で走る。サラは知らないけど、聖獣は人の姿でも能力を発揮できるんだよ。聖獣が全力で走ると周囲の草花が千切れ、砂埃が舞う。中心部で人を跳ねるのは領主失格なので、エルは自制しつつ駆け足で向かった。
あれじゃない、これも無理。サラはまだ時間を稼いでくれている。本人にそんな気はないのが凄い。扉を開けて店に飛び込む。汗ひとつかかないエルは、若い領主様の涼しい顔で近づいた。
「サラ、お待たせ」
「エルの仕事は終わった?」
「うん。完璧だよ」
いっそ間に合わなければよかったのにとぼやく仲間を無視し、サラへ提案した。
「欲しい服が見つからないなら、絵を描いてみたら? その服を作ってもらおうよ」
「それがいい」
サラはすぐに目を輝かせた。ソファに下ろしてもらい、短い足を揺らしながら絵を描き始める。顔もきちんと描いて、手足に衣服を纏わせた。じっと見つめる店主とリディ達。描き終えた絵を基に指示を出す。
「エルは凄いね」
褒められたエルが得意げに見やると、リディが淑女らしからぬ顔で睨みつけてきた。すごく気分がいいね。大切な大切なご主人様、これから君が欲しいものは全部僕らが手に入れてあげる。服、宝石、食事、屋敷、国だって構わないよ。
何も知らずにこにこと笑うサラは、大きく足を振ってソファから飛び降りた。短い足をちょこちょこ動かし、店内を走り回る。うん、今日はこの店を貸切にして――当然のようにエルが告げた言葉を、店主は恭しく頭を下げて承諾した。
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