【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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84.幸せになるわ(本編最終話)

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 純白のドレスは私の意見で決まった。日本で両親に見せてあげられなかった花嫁姿を、この世界で両親代わりの二人に見せる。親孝行の代わりよ。

 純白の絹は珍しいみたいで、リディが手配して50年もかけて届けてくれた。ドレスのデザインに迷って、定番のプリンセスラインを選ぶ。ビスチェのような胸元と、ふんわり広がるスカートは憧れだったの。アゼスが用意したダイヤを、まるでビーズみたいにふんだんに縫い付けた。

 銀糸の刺繍やドレスの仕立ては、エルが治める貿易都市の一流デザイナーを起用して。ヴェールもエルが選んだのよ。縁に淡いピンクの花が刺繍された、白いヴェールをかぶる。

 ティアラや宝飾品はアランが……ここは譲らなかったけど、宝石の一部はアゼスから提供を受けたみたい。属性が土関連のアゼスは、貴金属や宝石の埋まってる場所を探すのが得意だもの。びっくりするくらい大きなピンク色のサファイアが、ティアラの中央に鎮座していた。しかも薔薇の形にカットしたんですって。

 頭の上に乗せた重いティアラを、アランの魔法が軽くする。胸元も大きな薔薇型のピンクサファイア。エメラルドの葉や赤いルビーの蕾も付いて。驚くほど豪華だけど、ここまで大粒だとオモチャみたい。魔法で重さを感じないから、余計にそう感じちゃうわ。

 ふふっと笑う私に、リディはさっきから号泣しまくりだった。

「泣かないで。私は嫁いでも帝国の聖女様でしょ?」

 茶化した口調に、ぶんぶんと大きく頷いた後でまた涙を流した。お化粧が全部流れちゃってるわ。この後、化粧し直す時間あったかしら。

「だって、今夜……アランにサラちゃんが食べられちゃうのよぉ!!」

 それが無念なの、叫んだリディの口を手で押さえた。ちょ! なんてことを叫んでるのよ。真っ赤な顔で「うぅ」と呻くしかない。アゼスが苦笑いして、リディを後ろから抱き締めた。

「仕方あるまい、もう何百年同じことを嘆くのだ。サラの幸せを祈ってやれ」

「祈ってるわよ、祈ってるからこそ、悔しくてぇ!」

 感動もへったくれもないけど、ここで言わないと言いそびれちゃいそう。こほんと咳をして場を整え、私は絹の手袋を嵌める。それからブーケを受け取って微笑んだ。

「アゼス、リディ。今日まで私を育ててくれてありがとう。アランと結婚して、必ず幸せになります」

 日本の両親にも届くといいな。何千年もずれちゃったけど、私はちゃんと好きな人のところへお嫁に行きます。心の中でそう呟いたら、エルが泣き出した。こっちもなのね。

「僕とも遊んでね、弟でいいから」

「もちろん。だって私達は家族だもの」

「お時間です」

 侍女に促され、家族席へ向かう皇帝夫妻。見送ってから、やっぱり化粧直しの時間はなかったと苦笑いした。エルは残って、私をアランの元までエスコートする。

 静々と進んで、アランが今日のために建てた教会へ向かった。開いた扉の先、赤いバージンロードは祭壇へ続く。祭壇に飾られた神像は、何度もお世話になった女神様だった。ここでマリア像が出ないのは、異世界ならではね。もう私が暮らした時間はこちらの方が長いけれど。

 エルと並ぶと、背の高さは同じくらい。ヒールだから今日は私の方が高いわね。外見はようやく17歳前後で、今日で18歳扱いになるわ。だから成人として嫁ぐの。

 右、左、交互に足を踏み出しながら、視線を祭壇の前で待つアランに固定する。普段は降ろしている髪をすべて上げ、僅かにこぼれた前髪が額を飾る。聖獣特有の金色の瞳が細められ、私は口元を緩めた。ヴェールってこういう時便利ね。見えないもの。

 家族席のリディはまた泣いて、アゼスが肩を抱き寄せていた。そこで一度足をとめ、軽く会釈して通る。エルは顔を強張らせて、緊張した面持ちだった。あと少し。

 階段が視線に入って、姿勢を正すために顔を上げた私は、目を見開く。女神様っ! 本人が降臨しちゃってるわ!! 周囲の貴族や他国の来賓は気づいてないかもしれないけど、女神様が像に重なっていた。

「女神、さま?」

『うふふ、聖女の結婚式なら私が必要じゃない』

 ウィンクして寄越す女神様に笑って、アランの前に立った。エスコートするエルが、私の手をアランに渡す。同じ最上段に立って見上げる。やっぱり私より頭ひとつは高かった。

「愛しています、サラ。聖女だからではなく、あなただから。その魂が砕けるまで、いえ……私が滅びるまで絶対に離しませんから。私の妻になってください」

「ありがとう、アラン。私もあ、愛しています。貴方だけが私の夫よ。これからよろしくね」

 一瞬だけ詰まっちゃった。恥ずかしくて、でも嬉しくて。頬を赤く染めた私のヴェールがアランの手であげられ、麗しの大公閣下の顔が近づく。大好きよ、愛してるわ。心で伝えた声に気付いたアランの表情が、柔らかく溶けて……唇が重なった。

 キスの合間に「愛しています」と何度も囁かれ、くたりと体の力が抜けるまで。崩れ落ちかけた腰を支えるアランが、嬉しそうに微笑んだ。

 これから何があっても、絶対に。私はアランと生きていく。幸せになる。そう決めたから、この手を離さないわ。






     The END……














*********************
 本編完結です_( _*´ ꒳ `*)_お付き合いありがとうございました。明日から外伝を少しばかりご用意しております。もう少しお付き合いくださいませ。
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