96 / 100
外伝
外伝2−6.やはり理解していませんね
しおりを挟む
意外なほどあっさり、検査は終わった。アランとエルが作った膜を潜るだけ。胎児の様子は隣にある水鏡に映し出される仕組みだった。レントゲンに似てるわね。
ぎくっとしたエルの様子から、私が思い浮かべた物をパクったみたい。別にいいわよ。聖獣じゃないと再現できないと思うから。誰でも使える新しい魔法を伝授したなら、世界のバランスとか考えちゃうけどね。この程度は大丈夫でしょ。
「サラ、もっと慎重に考えてください」
真剣な顔のアランに言われて、小首を傾げる。二人が行う検査だから安心して任せたのに、変なことを言うのね。
「やはり理解していませんね。私達が来なければ、お腹を開いて見せる気だったでしょう? 神が関わっている以上、死ぬ心配はしませんが、障りが出ないとは限りませんよ」
いつでも我々が助けられるとは限らない。相手が神なら、結界を突破できなかったり、居場所を特定できず手遅れになる可能性があるのだ。そう叱るアランの気持ちに思い至った。
「ごめんなさい」
お腹の子は今は私と一体だけど、もう別の人格を持つ一人と数えないといけないわ。この子の命を危険に晒す可能性があるなら、慎重に動かなきゃ。危険な目に遭えば、アランが傷つく。私がいけなかったの。しょんぼりと肩を落としたところで、水鏡を覗いていた神様は溜め息を吐いた。
「やっぱり違う」
「サラがそう言ったでしょう?」
「うん」
がっかりした様子の神様だけど、今回の技術で赤ちゃんの確認ができるようになって、ほっとしたみたい。大公国に落ちたのは間違いないので、赤子の健康診断という名目で妊婦さんに参加を呼びかけた。
産む前に赤ちゃんの顔が見られると聞いて、多くの妊婦さんが足を運ぶ。健康状態もついでに確認して、今後の支援にも繋げるらしいわ。転んでもタダで起きないところ、さすが国を治める聖獣よね。
「女神様には一言申しておきたい」
むっとした顔のエルは、自分達に内緒にして、他世界の神に自由行動させたことを怒っていた。せめて連絡はあって然るべきだ。そうしたら対応できたのに。
妊婦切り裂き魔ならぬ切り裂きジャックの話を聞いた時、どれだけ憤ったか。文句を言いながら仕事に戻っていった。確かに、あの女神様は言葉が足りないこと多いわ。ほうれんそう、を教えておこうかしら。報告、連絡、掃除? 違うわね、最後は何だったっけ。
「サラちゃん、大変だったわね」
帝国の皇后陛下が駆けつけた。というのも、何かの行事があって離れられなかったの。アゼスはまだ仕事が残ってるけど、先にリディだけ顔を見せてくれた。
「来てくれてありがとう、リディ」
「いいのよ。こちらが他所の世界の神様ね? サラちゃんのお腹を開けてたら、ぱくりと頭から食べるところだったわ」
真っ赤に染めた爪で指差し、ぷんぷんと怒ったリディは華やかなドレス姿で、少年に詰め寄る。ぽっと頬を染めた少年に、途中で態度が和らいだ。やっぱり自分を褒める人には甘くなるわよね。
まだ神様の片割れは見つからないけど、早く見つかるといいな。
ぎくっとしたエルの様子から、私が思い浮かべた物をパクったみたい。別にいいわよ。聖獣じゃないと再現できないと思うから。誰でも使える新しい魔法を伝授したなら、世界のバランスとか考えちゃうけどね。この程度は大丈夫でしょ。
「サラ、もっと慎重に考えてください」
真剣な顔のアランに言われて、小首を傾げる。二人が行う検査だから安心して任せたのに、変なことを言うのね。
「やはり理解していませんね。私達が来なければ、お腹を開いて見せる気だったでしょう? 神が関わっている以上、死ぬ心配はしませんが、障りが出ないとは限りませんよ」
いつでも我々が助けられるとは限らない。相手が神なら、結界を突破できなかったり、居場所を特定できず手遅れになる可能性があるのだ。そう叱るアランの気持ちに思い至った。
「ごめんなさい」
お腹の子は今は私と一体だけど、もう別の人格を持つ一人と数えないといけないわ。この子の命を危険に晒す可能性があるなら、慎重に動かなきゃ。危険な目に遭えば、アランが傷つく。私がいけなかったの。しょんぼりと肩を落としたところで、水鏡を覗いていた神様は溜め息を吐いた。
「やっぱり違う」
「サラがそう言ったでしょう?」
「うん」
がっかりした様子の神様だけど、今回の技術で赤ちゃんの確認ができるようになって、ほっとしたみたい。大公国に落ちたのは間違いないので、赤子の健康診断という名目で妊婦さんに参加を呼びかけた。
産む前に赤ちゃんの顔が見られると聞いて、多くの妊婦さんが足を運ぶ。健康状態もついでに確認して、今後の支援にも繋げるらしいわ。転んでもタダで起きないところ、さすが国を治める聖獣よね。
「女神様には一言申しておきたい」
むっとした顔のエルは、自分達に内緒にして、他世界の神に自由行動させたことを怒っていた。せめて連絡はあって然るべきだ。そうしたら対応できたのに。
妊婦切り裂き魔ならぬ切り裂きジャックの話を聞いた時、どれだけ憤ったか。文句を言いながら仕事に戻っていった。確かに、あの女神様は言葉が足りないこと多いわ。ほうれんそう、を教えておこうかしら。報告、連絡、掃除? 違うわね、最後は何だったっけ。
「サラちゃん、大変だったわね」
帝国の皇后陛下が駆けつけた。というのも、何かの行事があって離れられなかったの。アゼスはまだ仕事が残ってるけど、先にリディだけ顔を見せてくれた。
「来てくれてありがとう、リディ」
「いいのよ。こちらが他所の世界の神様ね? サラちゃんのお腹を開けてたら、ぱくりと頭から食べるところだったわ」
真っ赤に染めた爪で指差し、ぷんぷんと怒ったリディは華やかなドレス姿で、少年に詰め寄る。ぽっと頬を染めた少年に、途中で態度が和らいだ。やっぱり自分を褒める人には甘くなるわよね。
まだ神様の片割れは見つからないけど、早く見つかるといいな。
141
あなたにおすすめの小説
公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜
くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。
味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。
――けれど、彼らは知らなかった。
彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。
すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、
復讐ではなく「関わらない」という選択。
だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。
【完結】聖獣もふもふ建国記 ~国外追放されましたが、我が領地は国を興して繁栄しておりますので御礼申し上げますね~
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
ファンタジー
婚約破棄、爵位剥奪、国外追放? 最高の褒美ですね。幸せになります!
――いま、何ておっしゃったの? よく聞こえませんでしたわ。
「ずいぶんと巫山戯たお言葉ですこと! ご自分の立場を弁えて発言なさった方がよろしくてよ」
すみません、本音と建て前を間違えましたわ。国王夫妻と我が家族が不在の夜会で、婚約者の第一王子は高らかに私を糾弾しました。両手に花ならぬ虫を這わせてご機嫌のようですが、下の緩い殿方は嫌われますわよ。
婚約破棄、爵位剥奪、国外追放。すべて揃いました。実家の公爵家の領地に戻った私を出迎えたのは、溺愛する家族が興す新しい国でした。領地改め国土を繁栄させながら、スローライフを楽しみますね。
最高のご褒美でしたわ、ありがとうございます。私、もふもふした聖獣達と幸せになります! ……余計な心配ですけれど、そちらの国は傾いていますね。しっかりなさいませ。
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
※2022/05/10 「HJ小説大賞2021後期『ノベルアップ+部門』」一次選考通過
※2022/02/14 エブリスタ、ファンタジー 1位
※2022/02/13 小説家になろう ハイファンタジー日間59位
※2022/02/12 完結
※2021/10/18 エブリスタ、ファンタジー 1位
※2021/10/19 アルファポリス、HOT 4位
※2021/10/21 小説家になろう ハイファンタジー日間 17位
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす
yukataka
ファンタジー
王国随一の名門ハーランド公爵家の令嬢エリシアは、第一王子の婚約者でありながら、王宮の陰謀により突然追放される。濡れ衣を着せられ、全てを奪われた彼女は極寒の辺境国家ノルディアへと流される。しかしエリシアには秘密があった――前世の記憶と現代日本の経営知識を持つ転生者だったのだ。荒廃した辺境で、彼女は持ち前の戦略眼と人心掌握術で奇跡の復興を成し遂げる。やがて彼女の手腕は王国全土を震撼させ、自らを追放した者たちに復讐の刃を向ける。だが辺境王ルシアンとの運命的な出会いが、彼女の心に新たな感情を芽生えさせていく。これは、理不尽に奪われた女性が、知略と情熱で世界を変える物語――。
乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!
ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。
相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。
結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。
現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう…
その時に前世の記憶を取り戻すのだった…
「悪役令嬢の兄の婚約者って…」
なんとも微妙なポジション。
しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。
お言葉ですが今さらです
MIRICO
ファンタジー
アンリエットは祖父であるスファルツ国王に呼び出されると、いきなり用無しになったから出て行けと言われた。
次の王となるはずだった伯父が行方不明となり後継者がいなくなってしまったため、隣国に嫁いだ母親の反対を押し切りアンリエットに後継者となるべく多くを押し付けてきたのに、今更用無しだとは。
しかも、幼い頃に婚約者となったエダンとの婚約破棄も決まっていた。呆然としたアンリエットの後ろで、エダンが女性をエスコートしてやってきた。
アンリエットに継承権がなくなり用無しになれば、エダンに利などない。あれだけ早く結婚したいと言っていたのに、本物の王女が見つかれば、アンリエットとの婚約など簡単に解消してしまうのだ。
失意の中、アンリエットは一人両親のいる国に戻り、アンリエットは新しい生活を過ごすことになる。
そんな中、悪漢に襲われそうになったアンリエットを助ける男がいた。その男がこの国の王子だとは。その上、王子のもとで働くことになり。
お気に入り、ご感想等ありがとうございます。ネタバレ等ありますので、返信控えさせていただく場合があります。
内容が恋愛よりファンタジー多めになったので、ファンタジーに変更しました。
他社サイト様投稿済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる