【完結】召喚された勇者は贄として、魔王に美味しく頂かれました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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14.愚か者は排除すべきだ

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 魔王アザゼルが贄を娶った。その話は魔族の中を駆け巡る。長い間、贄に一切興味を示さなかったアザゼルが、突然己の物だと宣言して牽制した。驚きをもって話を聞いた者、不愉快だと舌打ちする者、ようやく魔王の隣が埋まると喜んだ者。様々な反応があった。

「動きそうなのはどれだ?」

 部下に尋ねる声は冷たい。ハヤトが隣にいれば驚いて顔を凝視しただろう。差し出された報告書を受け取るアザゼルを見て、同一人物と判断するのは難しかった。それほどに声の温度、口調や表情まで別人だ。魔族の頂点に立ち、誰より強い男は手元の書類にさっと目を通した。

 ほぼ予想通りか。意外な動きを見せたのも数人いるが、予想の範囲だった。

「いかがなさいますか」

「動けば潰せ」

 魔族にとって贄である花嫁は大切な存在だ。己の魔力を分け与えて庇護し、寿命を分かち合う。それ以外にも守る理由があった。己の弱点となり得るのだ。愛する存在を得ることは、同時に弱点を作ることだった。狙われぬよう、贄を手にした魔族は伴侶を庇護する。

 異世界から呼ばれる人間に似た非力な贄達は、さまざまな特徴を持っていた。この世界の空気が合わず弱る者もいれば、驚くほどの特殊能力を持つ強者もいる。ハヤトがどちらでも関係ない。手を出す魔族はすべて排除し、愛しい存在を振り向かせるだけのこと。

 贄が前の世界に帰る方法はない。呼び出す人間はその場しのぎで空間を繋ぐ。この世界に接する異世界は数えきれないほど多かった。どの世界と接続して離れたのか、数時間もすれば追えなくなる。

 過去、最愛の伴侶に懇願され帰る道を探した魔族もいた。魔王に次ぐ実力者であった彼が全能力を傾けても、その道は開かれなかったのだ。それ以降、試した魔族はいない。そもそも愛しい存在と命果てるまで共にありたいと願う欲望は、花嫁を離したくないのだから。

「すべて、でございますか?」

「残す程の者がいるか?」

 逆に問い返す。優秀な部下は一人の名を指さした。防衛の要になっていた女か。能力が高く従順だったので重用したが、代わりはいくらでもいる。将軍職に就く者なら尚更、我が伴侶たるハヤトに敬意を払ってもらわねばならん。

 同化が終わるまでは贄だが、命を重ねて分かち合った今は伴侶だ。ハヤトを軽んじることは、魔王であるアザゼルを嘲るに等しい。理解できぬ愚か者は、その命をもって償うべきだった。

「これがどうした」

 意図的に声を低く吐き出した。なぜか嬉しそうに頬を緩め、部下は一礼した。魔族特有の濃色の肌は褐色に近く、柔らかそうな青い髪に縁取られている。残虐さで名を馳せた彼に許可を与えた。その結果、将軍が一人減ることを承知の上で。

「アスモダイ、重ねて命じる。余の伴侶に手出しする愚か者をすべて屠れ」

 例外はない。視線を合わせたアスモダイは、恭しく頭を下げた。

「承知いたしました。恐怖と畏怖を纏う我が君のお心のままに」
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