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本編
127.アデリナが銀髪を好きな理由は
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私の銀髪がお気に入りのようで、アデリナは事ある毎に褒める。よほど気に入ったのだろう。理由はわからないけれど。
「この髪、好き」
直球で伝えてくるため、聞いたこちらが照れてしまう。クラウスは苦笑いしながら見守るから、実害がないと思っているようね。危害を加えられる心配はしないわ。不意打ちなんて、イエンチュ王国の部族の名が廃るもの。
女性なので着替えや風呂など、無防備になる場所でも同行可能。そのうえ、私を好きでいてくれるなら安心よ。裏切られる危険はいつだって傍らに存在していて、心配する気にもなれないわ。その時に適切に対処するだけだった。
エリーゼが手際よく銀髪を結う姿を、食い入るように見つめる。距離が近すぎて、何度かエリーゼに注意されていた。手招きして横から鏡を見るよう伝える。
「なぜ銀髪が好きなの?」
「……実は、その……」
言い淀んで言葉を呑み込む。ガブリエラ様だったら考えられないわ。よほど言いにくいことなのかしら? 支度をしている最中なので、首を傾げるわけにもいかず。私は彼女の返事を待った。返らないならそれでもいいの。
「笑わないでくれ」
「もちろんよ」
「……人形が、好きなんだ」
意味を捉えかねて、きょとんとした。鏡の中の私が何度も瞬きし、振り返ろうとしてエリーゼに注意される。鏡越しに視線を合わせたアデリナは泣き出しそうだった。およその位置を確認しながら、彼女のほうへ手を伸ばす。指先を優しく支える手は、ざらりと荒れた感触だった。
「私ではなく、人形?」
「あんたは、人形みたい。綺麗で優しい」
アデリナの言いたいことを理解した。なるほど、不器用なのね。銀髪が好きなのではなく、銀髪に青い目のお人形が好き。でも荒事ばかりで自分には似合わないと諦めた。そこへ私が現れて、理想の人形が歩いていることに感動したのかも。
皇妹という立場だから、毎日ひらひらした服で着飾って過ごす。アデリナの好きなお人形としては、お姫様が最高の職業ね。ジルヴィアが成長したら、娘の護衛を頼んでもよさそう。
「ありがとう、アデリナ。褒めてくれて嬉しいわ」
ちょうど支度が終わり、エリーゼが装飾品を取りに離れた。向き直ってアデリナの手を掴む。両手で包むようにしたら、焦っていた。
「あたしは、違う、から」
手が汚れているとでも? そんなの、誰でも同じよ。ゆっくり首を横に振り、言葉に出して伝えた。こういう不器用さはフォルト兄様に似ているわ。そういえば、思ったことをすぐ口に出すのも同じかも。
「私の手も血で汚れているから、同じよ? アデリナの好みの外見でよかったと思っているの」
「……いいのか?」
「ええ、触れていいわ。触れなければ護衛は出来ないでしょう?」
こくんと頷き、アデリナはひらひらした袖に触れる。薄い布に荒れた指先が引っ掛かった。慌てる彼女の手首を掴み、ゆっくり離した。
「慌てずにゆっくり離れたら、ほら。平気よ」
慌てて引っ張れば、糸が引っ張られることもあるけれど。普段着にそこまで繊細な布は使われない。戻ったエリーゼが髪飾りを着ければ、アデリナはさらに目を輝かせた。
「夫候補の男は、あんたの兄か?」
「ええ、末の兄ね。フォルクハルトというの。戦い甲斐のある人だから期待して」
大喜びするアデリナに、エリーゼがぼそっと「この方、見た目に反して可愛いですね」と呟いた。私も小声で「そうでしょう? 昔のフォルト兄様を思い出すわ」と返す。二人で頷きあい、アデリナを連れて訓練場へ向かった。
「この髪、好き」
直球で伝えてくるため、聞いたこちらが照れてしまう。クラウスは苦笑いしながら見守るから、実害がないと思っているようね。危害を加えられる心配はしないわ。不意打ちなんて、イエンチュ王国の部族の名が廃るもの。
女性なので着替えや風呂など、無防備になる場所でも同行可能。そのうえ、私を好きでいてくれるなら安心よ。裏切られる危険はいつだって傍らに存在していて、心配する気にもなれないわ。その時に適切に対処するだけだった。
エリーゼが手際よく銀髪を結う姿を、食い入るように見つめる。距離が近すぎて、何度かエリーゼに注意されていた。手招きして横から鏡を見るよう伝える。
「なぜ銀髪が好きなの?」
「……実は、その……」
言い淀んで言葉を呑み込む。ガブリエラ様だったら考えられないわ。よほど言いにくいことなのかしら? 支度をしている最中なので、首を傾げるわけにもいかず。私は彼女の返事を待った。返らないならそれでもいいの。
「笑わないでくれ」
「もちろんよ」
「……人形が、好きなんだ」
意味を捉えかねて、きょとんとした。鏡の中の私が何度も瞬きし、振り返ろうとしてエリーゼに注意される。鏡越しに視線を合わせたアデリナは泣き出しそうだった。およその位置を確認しながら、彼女のほうへ手を伸ばす。指先を優しく支える手は、ざらりと荒れた感触だった。
「私ではなく、人形?」
「あんたは、人形みたい。綺麗で優しい」
アデリナの言いたいことを理解した。なるほど、不器用なのね。銀髪が好きなのではなく、銀髪に青い目のお人形が好き。でも荒事ばかりで自分には似合わないと諦めた。そこへ私が現れて、理想の人形が歩いていることに感動したのかも。
皇妹という立場だから、毎日ひらひらした服で着飾って過ごす。アデリナの好きなお人形としては、お姫様が最高の職業ね。ジルヴィアが成長したら、娘の護衛を頼んでもよさそう。
「ありがとう、アデリナ。褒めてくれて嬉しいわ」
ちょうど支度が終わり、エリーゼが装飾品を取りに離れた。向き直ってアデリナの手を掴む。両手で包むようにしたら、焦っていた。
「あたしは、違う、から」
手が汚れているとでも? そんなの、誰でも同じよ。ゆっくり首を横に振り、言葉に出して伝えた。こういう不器用さはフォルト兄様に似ているわ。そういえば、思ったことをすぐ口に出すのも同じかも。
「私の手も血で汚れているから、同じよ? アデリナの好みの外見でよかったと思っているの」
「……いいのか?」
「ええ、触れていいわ。触れなければ護衛は出来ないでしょう?」
こくんと頷き、アデリナはひらひらした袖に触れる。薄い布に荒れた指先が引っ掛かった。慌てる彼女の手首を掴み、ゆっくり離した。
「慌てずにゆっくり離れたら、ほら。平気よ」
慌てて引っ張れば、糸が引っ張られることもあるけれど。普段着にそこまで繊細な布は使われない。戻ったエリーゼが髪飾りを着ければ、アデリナはさらに目を輝かせた。
「夫候補の男は、あんたの兄か?」
「ええ、末の兄ね。フォルクハルトというの。戦い甲斐のある人だから期待して」
大喜びするアデリナに、エリーゼがぼそっと「この方、見た目に反して可愛いですね」と呟いた。私も小声で「そうでしょう? 昔のフォルト兄様を思い出すわ」と返す。二人で頷きあい、アデリナを連れて訓練場へ向かった。
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