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本編
168.婚約式前夜
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出来上がったドレスを前に、装飾品を確認する。完璧ね。丁寧に施された刺繍やビーズの装飾、綺麗に見えるよう整えられたレースやフリルの位置、何もかもが美しかった。
ドレスや宝飾品はすべて一室に集められ、警護の騎士がつく。これはガブリエラ様の代で起きた騒動が原因だった。前日になって、側妃となる方のドレスが破られたの。どうやらガブリエラ様の信者の仕業らしいけれど、犯人は見つからなかった、ということになっている。
公式発表では、犯人は見つかっていない。実際は……怒ったガブリエラ様が一刀両断にしたそうよ。お陰で着ていた白いドレスに血飛沫が散って、大急ぎで別のドレスに着替えたとか。エック兄様の母君である側妃様も、別のドレスで参加したわ。
この騒動でガブリエラ様の結婚式と、側妃のお迎えが同時に行われたの。フォルト兄様の母君と私の実母は、その後ゆっくりと嫁いできた。だから巻き込まれなかったのよ。というより、話が広まって噂になったため、怖くて手が出せなかったのね。
なんとも勇ましい話だけれど、お父様はうっとりと見ていたと聞く。ガブリエラ様にベタ惚れだった話は本当みたい。側妃となった三人は、それぞれに曰くつきなの。突然婚約破棄されたり、実家で虐待されて嫁き遅れたり。浮気した婚約者を切り捨てた女性もいたわね。
様々な理由で、実家や婚家にいられなくなった女性を集めて、条件付きの側妃になってもらった。ガブリエラ様のお考えは斬新だったわ。夫にたくさんの子が必要だから、側妃にも一人ずつ子を産んでもらう。さらに行き場をなくした女性達の保護も兼ねていた。
こういう采配が出来るから、皇妃向きなのだわ。同じ立場だったとして、クラウスに別の女を宛がう? 無理だわ、私なら嫉妬してしまうから。同情する余地があっても、本当に愛されているのが自分一人としても、体を重ねる夜を許せないでしょう。
「明日が楽しみね」
「はい、お嬢様と呼べる最後の日になります」
エリーゼの返事に、ふふっと笑った。
「結婚式の日じゃなくて?」
奥様と呼ぶのはその日からでしょうに。そう告げれば、エリーゼは困ったような笑顔を浮かべた。眉尻が垂れて、でもどこか嬉しそうだわ。
「結婚式で奥様になられますが、明日の婚約式以降は皇妹殿下とお呼びいたします」
首を傾げて先を促す。長い付き合いだけれど、彼女の忠誠心は本物よ。いつも私を中心に考えてくれて、前の結婚……ではなかったわね。アディソン王国での滞在でも、常に私の味方だった。
「リヒター帝国の皇妹殿下として嫁がれるのですから」
そういう意味ね。納得して頷いた。外部へ対してのアピールであり、私の立場を確定する意味で必要だと示している。ローヴァイン公爵になるクラウスが、皇帝の妹である私を娶った。その形を喧伝するつもりみたい。
「そんな牽制しなくても、もう余計な勘繰りをする貴族は残っていないわ」
すべてお父様やガブリエラ様、先日のじぃ達の活躍で消してしまった。エック兄様も裏で手を回し、私を中傷した貴族を処分していたわ。お陰で、帝国の宮殿も風通しが良くなったのよ。
「あとはお願いね」
交代制でドレスや宝飾品を見張る騎士に声を掛け、廊下に出た。マルグリット、コルネリア、アデリナの三人は、すでに宮殿に到着している。与えられた部屋に護衛付きで、しっかり守られるはずよ。この時点でも危害を加えられる心配をするのは、過剰な気もするけれど。
何かあってから後悔するより、事前に無駄な手を打つほうがいい。明日の婚約式を楽しみに廊下を歩き、自室の手前でジルヴィアの部屋に立ち寄った。すやすやと眠る娘の頬に触れ、おやすみの挨拶を済ませる。
「もう寝ましょう、お肌に響くわ」
結婚式ほどではなくても、美しい姿を披露したいから。早く寝て肌を休ませなくちゃ。
ドレスや宝飾品はすべて一室に集められ、警護の騎士がつく。これはガブリエラ様の代で起きた騒動が原因だった。前日になって、側妃となる方のドレスが破られたの。どうやらガブリエラ様の信者の仕業らしいけれど、犯人は見つからなかった、ということになっている。
公式発表では、犯人は見つかっていない。実際は……怒ったガブリエラ様が一刀両断にしたそうよ。お陰で着ていた白いドレスに血飛沫が散って、大急ぎで別のドレスに着替えたとか。エック兄様の母君である側妃様も、別のドレスで参加したわ。
この騒動でガブリエラ様の結婚式と、側妃のお迎えが同時に行われたの。フォルト兄様の母君と私の実母は、その後ゆっくりと嫁いできた。だから巻き込まれなかったのよ。というより、話が広まって噂になったため、怖くて手が出せなかったのね。
なんとも勇ましい話だけれど、お父様はうっとりと見ていたと聞く。ガブリエラ様にベタ惚れだった話は本当みたい。側妃となった三人は、それぞれに曰くつきなの。突然婚約破棄されたり、実家で虐待されて嫁き遅れたり。浮気した婚約者を切り捨てた女性もいたわね。
様々な理由で、実家や婚家にいられなくなった女性を集めて、条件付きの側妃になってもらった。ガブリエラ様のお考えは斬新だったわ。夫にたくさんの子が必要だから、側妃にも一人ずつ子を産んでもらう。さらに行き場をなくした女性達の保護も兼ねていた。
こういう采配が出来るから、皇妃向きなのだわ。同じ立場だったとして、クラウスに別の女を宛がう? 無理だわ、私なら嫉妬してしまうから。同情する余地があっても、本当に愛されているのが自分一人としても、体を重ねる夜を許せないでしょう。
「明日が楽しみね」
「はい、お嬢様と呼べる最後の日になります」
エリーゼの返事に、ふふっと笑った。
「結婚式の日じゃなくて?」
奥様と呼ぶのはその日からでしょうに。そう告げれば、エリーゼは困ったような笑顔を浮かべた。眉尻が垂れて、でもどこか嬉しそうだわ。
「結婚式で奥様になられますが、明日の婚約式以降は皇妹殿下とお呼びいたします」
首を傾げて先を促す。長い付き合いだけれど、彼女の忠誠心は本物よ。いつも私を中心に考えてくれて、前の結婚……ではなかったわね。アディソン王国での滞在でも、常に私の味方だった。
「リヒター帝国の皇妹殿下として嫁がれるのですから」
そういう意味ね。納得して頷いた。外部へ対してのアピールであり、私の立場を確定する意味で必要だと示している。ローヴァイン公爵になるクラウスが、皇帝の妹である私を娶った。その形を喧伝するつもりみたい。
「そんな牽制しなくても、もう余計な勘繰りをする貴族は残っていないわ」
すべてお父様やガブリエラ様、先日のじぃ達の活躍で消してしまった。エック兄様も裏で手を回し、私を中傷した貴族を処分していたわ。お陰で、帝国の宮殿も風通しが良くなったのよ。
「あとはお願いね」
交代制でドレスや宝飾品を見張る騎士に声を掛け、廊下に出た。マルグリット、コルネリア、アデリナの三人は、すでに宮殿に到着している。与えられた部屋に護衛付きで、しっかり守られるはずよ。この時点でも危害を加えられる心配をするのは、過剰な気もするけれど。
何かあってから後悔するより、事前に無駄な手を打つほうがいい。明日の婚約式を楽しみに廊下を歩き、自室の手前でジルヴィアの部屋に立ち寄った。すやすやと眠る娘の頬に触れ、おやすみの挨拶を済ませる。
「もう寝ましょう、お肌に響くわ」
結婚式ほどではなくても、美しい姿を披露したいから。早く寝て肌を休ませなくちゃ。
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