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番外編
14.家族という幸せの形 ***クラウス(最終話)
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手を伸ばしても届かない人だと思っていたのに、トリアは俺を選んだ。初恋は実らないと聞くが叶いましたよ、と話したら彼女は笑う。
「当然よ、一度私に失恋したのでしょ? なら、初恋は実らなかったの。いまは二度目の恋で、同じ人間だっただけだわ」
思いがけない発想で、驚くより楽しくなった。トリアのこういう部分が人を惹きつけるのだろう。皇族の誰もが彼女を好きになる。貴族の一部が反発しても、あっさりと抑え込む才能の持ち主だ。美貌も強さも華やかさも、すべて好きだが……やっぱりトリアの考えが一番好ましい。
「クラウス、マルグリットの滞在に合わせて……この子達と旅をしましょうか」
妻の提案に、一も二もなく頷いた。ローヴァイン公爵家の屋敷は宮殿に近い。大公家の屋敷は離れているが、エックもフォルトも中宮を使用していた。我々は常に会える状態だが、隠居した前皇帝夫妻は違う。義父上と義母上は、海沿いの別荘に引きこもってしまった。
使用人もさほど置いていないと聞く。すぐ近くに軍の駐屯地が作られ、騎士による護衛は行われているが、それも鬱陶しいと言われたとか。あの方々らしい。
「そうですね、会いに行きましょう」
トリアと二人なら口調も表情も取り繕うことはないが、子供達がいるとどうしても昔に戻る。私と称していた自分が表に出た。他人扱いではなく、汚い言葉を聞かせたくない。過保護なくらい柔らかく優しく包み込んで、寒さも痛さも苦しみも感じないよう育てたかった。
すぐにトリアに叱られたが……やはり口調は直らない。
「おじい様のとこ?」
「そうよ。エーミールと準備して頂戴」
「わかったわ」
にっこり笑う娘シャルロッテは、弟を探しに走っていく。一礼した侍女が急いで後を追った。何か手土産を持っていくべきか。
「土産が必要だね」
「こういうのはどうかしら」
喜んでもらえると確信を持った妻の提案に、俺はすぐ同意した。通りすがりの道で見つけた、雑多なものを持ち込む。形も色も味もこだわらず、気になったという一点だけで選ぶ。何かの遊戯のようだ。馬車の旅を子供達が飽きずに楽しめ、選んだ品は義父母の宝物になるだろう。
孫が選んだ品を飾る義父の背中が、目に浮かぶようだ。はしゃいだ子供達が階段を駆け下りて、この部屋に飛び込んでくる。公爵邸の執事に外出を伝え、普段は妻の補佐をしている元執事コンラートを誘った。
「コンラートも同行してくれると助かります」
承知を告げる彼の腰に、後ろから腕が回った。
「じぃもいくの? 嬉しいわ」
笑顔のシャルロットに「お姫様なのにはしたないよ」と眉尻を下げる。本音を言えば、俺にやってほしいのだが? 小さなお姫様は笑いながら「じぃはいいの」とじゃれた。慣れた様子であしらうコンラートに嫉妬しそうだ。
「馬車の準備をしてまいります」
俺の視線が厳しくなったのを察したのか、コンラートはさっさと場を離れた。彼のそつのなさが、トリアの信頼の源だろうか。
「どうしたの? クラウス」
「コンラートには勝てないと思ってね」
「それはそうよ。彼はガブリエラ様がスカウトした、他国の影だもの」
ん? そんな情報は知らないぞ! 詳しく話す気はない様子の妻に、何とか情報を得ようと食らいつく俺。いつもの光景に、使用人達は素知らぬ顔だ。子供達が戻るまで粘ったが、進展はなかった。他国の影を義母上が撃退するのはわかる。それをスカウトしたのか?
トリアの母君の専属執事だと聞いていたが。謎が深まっていく。いっそ、義母上に直接尋ねるか。荷造りに口を出しながら、そんな考えが浮かんだ。以前の俺ならあり得ない。情報通でなくとも、立派な振る舞いをせずとも、家族は家族だ。俺には立派な家族がいる。
涙を堪えて頑張ったあの頃の俺に伝えてやりたい。親族をすべて切り捨てた先に、本当に幸せがあるのだと。家族であることを許される未来が来る――。
「お父様、これもいい?」
お気に入りのぬいぐるみを見せるエーミールの頭を撫でて許可する。顔を上げればシャルロッテと微笑む美しい妻トリアがいて……得難い幸せに胸が詰まった。
さあ、出かけようか。
終
*********************
お付き合いありがとうございました ペコリ(o_ _)o))
最終話となります。他の子達もUPしようか迷いましたが、綺麗に終われるところでENDつけさせてください。
明日から新作『可愛いものだけ溺愛して生きていきます(仮)』を連載する予定です。婚約破棄された凛々しい令嬢(?)が、可愛いものを愛するだけの……ほのぼの系。恋愛系ではありません。このご縁が続きますように。
*********************
新作です° ✧ (*´ `*) ✧ °
『可愛いものだけ溺愛して生きていきます』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/470462601/449022027
政略結婚を我慢するつもりだったベアトリスは、婚約解消に目を輝かせた。一族揃って国を鞍替えすることにして、隣国へ亡命する。可愛いものに目がない凛々しい女性騎士ベアトリスは、ここで運命の出会いをする! 愛して愛して愛し尽くしてやるぞ!
「当然よ、一度私に失恋したのでしょ? なら、初恋は実らなかったの。いまは二度目の恋で、同じ人間だっただけだわ」
思いがけない発想で、驚くより楽しくなった。トリアのこういう部分が人を惹きつけるのだろう。皇族の誰もが彼女を好きになる。貴族の一部が反発しても、あっさりと抑え込む才能の持ち主だ。美貌も強さも華やかさも、すべて好きだが……やっぱりトリアの考えが一番好ましい。
「クラウス、マルグリットの滞在に合わせて……この子達と旅をしましょうか」
妻の提案に、一も二もなく頷いた。ローヴァイン公爵家の屋敷は宮殿に近い。大公家の屋敷は離れているが、エックもフォルトも中宮を使用していた。我々は常に会える状態だが、隠居した前皇帝夫妻は違う。義父上と義母上は、海沿いの別荘に引きこもってしまった。
使用人もさほど置いていないと聞く。すぐ近くに軍の駐屯地が作られ、騎士による護衛は行われているが、それも鬱陶しいと言われたとか。あの方々らしい。
「そうですね、会いに行きましょう」
トリアと二人なら口調も表情も取り繕うことはないが、子供達がいるとどうしても昔に戻る。私と称していた自分が表に出た。他人扱いではなく、汚い言葉を聞かせたくない。過保護なくらい柔らかく優しく包み込んで、寒さも痛さも苦しみも感じないよう育てたかった。
すぐにトリアに叱られたが……やはり口調は直らない。
「おじい様のとこ?」
「そうよ。エーミールと準備して頂戴」
「わかったわ」
にっこり笑う娘シャルロッテは、弟を探しに走っていく。一礼した侍女が急いで後を追った。何か手土産を持っていくべきか。
「土産が必要だね」
「こういうのはどうかしら」
喜んでもらえると確信を持った妻の提案に、俺はすぐ同意した。通りすがりの道で見つけた、雑多なものを持ち込む。形も色も味もこだわらず、気になったという一点だけで選ぶ。何かの遊戯のようだ。馬車の旅を子供達が飽きずに楽しめ、選んだ品は義父母の宝物になるだろう。
孫が選んだ品を飾る義父の背中が、目に浮かぶようだ。はしゃいだ子供達が階段を駆け下りて、この部屋に飛び込んでくる。公爵邸の執事に外出を伝え、普段は妻の補佐をしている元執事コンラートを誘った。
「コンラートも同行してくれると助かります」
承知を告げる彼の腰に、後ろから腕が回った。
「じぃもいくの? 嬉しいわ」
笑顔のシャルロットに「お姫様なのにはしたないよ」と眉尻を下げる。本音を言えば、俺にやってほしいのだが? 小さなお姫様は笑いながら「じぃはいいの」とじゃれた。慣れた様子であしらうコンラートに嫉妬しそうだ。
「馬車の準備をしてまいります」
俺の視線が厳しくなったのを察したのか、コンラートはさっさと場を離れた。彼のそつのなさが、トリアの信頼の源だろうか。
「どうしたの? クラウス」
「コンラートには勝てないと思ってね」
「それはそうよ。彼はガブリエラ様がスカウトした、他国の影だもの」
ん? そんな情報は知らないぞ! 詳しく話す気はない様子の妻に、何とか情報を得ようと食らいつく俺。いつもの光景に、使用人達は素知らぬ顔だ。子供達が戻るまで粘ったが、進展はなかった。他国の影を義母上が撃退するのはわかる。それをスカウトしたのか?
トリアの母君の専属執事だと聞いていたが。謎が深まっていく。いっそ、義母上に直接尋ねるか。荷造りに口を出しながら、そんな考えが浮かんだ。以前の俺ならあり得ない。情報通でなくとも、立派な振る舞いをせずとも、家族は家族だ。俺には立派な家族がいる。
涙を堪えて頑張ったあの頃の俺に伝えてやりたい。親族をすべて切り捨てた先に、本当に幸せがあるのだと。家族であることを許される未来が来る――。
「お父様、これもいい?」
お気に入りのぬいぐるみを見せるエーミールの頭を撫でて許可する。顔を上げればシャルロッテと微笑む美しい妻トリアがいて……得難い幸せに胸が詰まった。
さあ、出かけようか。
終
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お付き合いありがとうございました ペコリ(o_ _)o))
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明日から新作『可愛いものだけ溺愛して生きていきます(仮)』を連載する予定です。婚約破棄された凛々しい令嬢(?)が、可愛いものを愛するだけの……ほのぼの系。恋愛系ではありません。このご縁が続きますように。
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『可愛いものだけ溺愛して生きていきます』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/470462601/449022027
政略結婚を我慢するつもりだったベアトリスは、婚約解消に目を輝かせた。一族揃って国を鞍替えすることにして、隣国へ亡命する。可愛いものに目がない凛々しい女性騎士ベアトリスは、ここで運命の出会いをする! 愛して愛して愛し尽くしてやるぞ!
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