17 / 222
本編
16.絶対に勝つ! *** SIDEモーリス
しおりを挟む
単独で飛び込んだのは無謀だったか。だが追いつけるかもしれないと、兄王への連絡の手間も惜しんで飛び出した。馬に乗って走り、途中で軍の馬に乗り換える。ほぼ寝ずに走ったが、彼女に追いつくことはなかった。
街道が混み始め、騎士団長の任務だと順番を飛ばす。先へ先へ、進んだ先で国境が封鎖されていた。ゆっくりと進んでいるが、ほぼ動かない。これが混雑の原因か。おそらくヴィクトーリアの兄達による嫌がらせだろう。
「どけっ! アディソン王国、騎士団長スチュアート公爵である」
国王の異母弟、スチュアート公爵、騎士団長。どれか一つでも十分な通行手形だ。そう思ったのに、停止するよう警告された。腹立たしさと苛立ちで馬を走らせる。まさか、射掛けてくるとは!
「くそっ、王国と戦争をする気か!」
叫ぶも、周囲を兵士に囲まれる。そこへ数人の騎士が現れ、呆れ顔で吐き捨てた。
「なんて迷惑な奴だ。おい、地下牢が空いてたな? 迎えがあるまで、放り込んでおけ」
「迎えなんて来るのか?」
「知らん。元帥閣下に報告だけしておこう」
抵抗しようと剣を抜くも、あっさり弾かれた。王国一と言われた俺の剣技が、及ばないだと? 驚愕する俺は武器を奪われ、装備を外され、身一つで地下牢へ投げ込まれる。冷たい石牢で数日、食事の運ばれてくる時間で日を数えた。
外の光が届かない牢は、狂いそうなほど居心地が悪かった。ベッドはあり、シーツは清潔だ。食事や水も十分に与えられた。それでも自由がないだけで、苛立ちが募る。治療も騎士同伴で、逃げ出す隙がなかった。こんな場所で時間を奪われるわけにいかないのに。
「おう、元気そうで……腹立たしいことに、至れり尽くせりだな」
足音高らかに現れた男は、背にマントが揺れていた。ヴィクトーリアの兄の一人……確か三番目か。武芸に秀でた男だと聞いている。睨みつけた俺に、彼は嫌な感じの笑みを浮かべた。
「随分と舐めた真似してくれたようだ。だが、一つだけ礼を言っておく。トリアを返してくれて、ありがとうな」
カッとなった。返してなどいない。貴様らが奪ったのだろう! そんな意味合いの叫びを投げつけ、牢の檻を掴んで暴れた。届かない腕を伸ばし、痛む足を踏ん張って、喉の痛みも気にせず騒ぐ。
冷めた目で俺を見ていた元帥は、口元を歪めた。
「なあ、出たいんだろ? 俺と戦って勝てたら、国境を越えていいぞ。だが負けたら……」
「戦ってやる」
元帥の言葉を遮って、俺は枯れた声で断言する。
「負けた時の条件を聞かなくていいのか?」
付き添う騎士が眉根を寄せ「元帥閣下、おやめください」と止めに入った。俺は強い、だから恐れているのだ。そう感じた。きっと国境警備の騎士に捕まった時は、矢が刺さっていたからだ。
「構わない、俺が勝つ」
自信満々に言い放った。にやりと笑った元帥の顔に、背筋が凍るような恐ろしさを覚える。だが引く気はなかった。ヴィクトーリアは俺の女だ、絶対に取り返す! その一心だった。
手錠付きだが、国境警備の砦にある訓練場へ出る。久しぶりに浴びた日差しは、痛いくらいだ。眩しさに目が慣れるまで、少しかかった。その間、彼らはゆったりと準備を整える。
用意されたのは訓練用の剣、刃の潰れた金属製だった。切れないが、当たれば骨折は覚悟するようだろう。ここでようやく手錠が外された。
「先手を譲ってやる、さっさとかかってこい」
構えもせずに促す元帥に、予備動作なく飛びかかった。絶対に勝つ!
街道が混み始め、騎士団長の任務だと順番を飛ばす。先へ先へ、進んだ先で国境が封鎖されていた。ゆっくりと進んでいるが、ほぼ動かない。これが混雑の原因か。おそらくヴィクトーリアの兄達による嫌がらせだろう。
「どけっ! アディソン王国、騎士団長スチュアート公爵である」
国王の異母弟、スチュアート公爵、騎士団長。どれか一つでも十分な通行手形だ。そう思ったのに、停止するよう警告された。腹立たしさと苛立ちで馬を走らせる。まさか、射掛けてくるとは!
「くそっ、王国と戦争をする気か!」
叫ぶも、周囲を兵士に囲まれる。そこへ数人の騎士が現れ、呆れ顔で吐き捨てた。
「なんて迷惑な奴だ。おい、地下牢が空いてたな? 迎えがあるまで、放り込んでおけ」
「迎えなんて来るのか?」
「知らん。元帥閣下に報告だけしておこう」
抵抗しようと剣を抜くも、あっさり弾かれた。王国一と言われた俺の剣技が、及ばないだと? 驚愕する俺は武器を奪われ、装備を外され、身一つで地下牢へ投げ込まれる。冷たい石牢で数日、食事の運ばれてくる時間で日を数えた。
外の光が届かない牢は、狂いそうなほど居心地が悪かった。ベッドはあり、シーツは清潔だ。食事や水も十分に与えられた。それでも自由がないだけで、苛立ちが募る。治療も騎士同伴で、逃げ出す隙がなかった。こんな場所で時間を奪われるわけにいかないのに。
「おう、元気そうで……腹立たしいことに、至れり尽くせりだな」
足音高らかに現れた男は、背にマントが揺れていた。ヴィクトーリアの兄の一人……確か三番目か。武芸に秀でた男だと聞いている。睨みつけた俺に、彼は嫌な感じの笑みを浮かべた。
「随分と舐めた真似してくれたようだ。だが、一つだけ礼を言っておく。トリアを返してくれて、ありがとうな」
カッとなった。返してなどいない。貴様らが奪ったのだろう! そんな意味合いの叫びを投げつけ、牢の檻を掴んで暴れた。届かない腕を伸ばし、痛む足を踏ん張って、喉の痛みも気にせず騒ぐ。
冷めた目で俺を見ていた元帥は、口元を歪めた。
「なあ、出たいんだろ? 俺と戦って勝てたら、国境を越えていいぞ。だが負けたら……」
「戦ってやる」
元帥の言葉を遮って、俺は枯れた声で断言する。
「負けた時の条件を聞かなくていいのか?」
付き添う騎士が眉根を寄せ「元帥閣下、おやめください」と止めに入った。俺は強い、だから恐れているのだ。そう感じた。きっと国境警備の騎士に捕まった時は、矢が刺さっていたからだ。
「構わない、俺が勝つ」
自信満々に言い放った。にやりと笑った元帥の顔に、背筋が凍るような恐ろしさを覚える。だが引く気はなかった。ヴィクトーリアは俺の女だ、絶対に取り返す! その一心だった。
手錠付きだが、国境警備の砦にある訓練場へ出る。久しぶりに浴びた日差しは、痛いくらいだ。眩しさに目が慣れるまで、少しかかった。その間、彼らはゆったりと準備を整える。
用意されたのは訓練用の剣、刃の潰れた金属製だった。切れないが、当たれば骨折は覚悟するようだろう。ここでようやく手錠が外された。
「先手を譲ってやる、さっさとかかってこい」
構えもせずに促す元帥に、予備動作なく飛びかかった。絶対に勝つ!
3,138
あなたにおすすめの小説
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』
放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」
王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。
しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!?
「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!)
怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。
婚約破棄されたので公爵令嬢やめます〜私を見下した殿下と元婚約者が膝をつく頃、愛を囁くのは冷酷公爵でした〜
nacat
恋愛
婚約者に裏切られ、蔑まれ、全てを失った公爵令嬢リリアナ。
「あなたのような女、誰が愛すると?」そう言い放った王太子と元友人に嘲られても、彼女は涙を見せなかった。
だが、冷たく美しい隣国の公爵セドリックと出会った瞬間、運命は静かに動き出す。
冷酷と噂された男の腕のなかで、彼女は再び自分を取り戻していく。
そして――彼女を捨てた者たちは、彼女の眩い幸福の前に膝をつく。
「これは、ざまぁを通り越して愛された令嬢の物語。」
手放してみたら、けっこう平気でした。
朝山みどり
恋愛
エリザ・シスレーは伯爵家の後継として、勉強、父の手伝いと努力していた。父の親戚の婚約者との仲も良好で、結婚する日を楽しみしていた。
そんなある日、父が急死してしまう。エリザは学院をやめて、領主の仕事に専念した。
だが、領主として努力するエリザを家族は理解してくれない。彼女は家族のなかで孤立していく。
地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
心優しいエヴァンズ公爵家の長女アマーリエは自ら王太子との婚約を辞退した。幼馴染でもある王太子の「ブスの癖に図々しく何時までも婚約者の座にいるんじゃない、絶世の美女である妹に婚約者の座を譲れ」という雄弁な視線に耐えられなかったのだ。それにアマーリエにも自覚があった。自分が社交界で悪口陰口を言われるほどブスであることを。だから王太子との婚約を辞退してからは、壁の花に徹していた。エヴァンズ公爵家てもつながりが欲しい貴族家からの政略結婚の申し込みも断り続けていた。このまま静かに領地に籠って暮らしていこうと思っていた。それなのに、常勝無敗、騎士の中の騎士と称えられる王弟で大将軍でもあるアラステアから結婚を申し込まれたのだ。
あの子を好きな旦那様
はるきりょう
恋愛
「クレアが好きなんだ」
目の前の男がそう言うのをただ、黙って聞いていた。目の奥に、熱い何かがあるようで、真剣な想いであることはすぐにわかった。きっと、嬉しかったはずだ。その名前が、自分の名前だったら。そう思いながらローラ・グレイは小さく頷く。
※小説家になろうサイト様に掲載してあります。
見捨てられた逆行令嬢は幸せを掴みたい
水空 葵
恋愛
一生大切にすると、次期伯爵のオズワルド様に誓われたはずだった。
それなのに、私が懐妊してからの彼は愛人のリリア様だけを守っている。
リリア様にプレゼントをする余裕はあっても、私は食事さえ満足に食べられない。
そんな状況で弱っていた私は、出産に耐えられなくて死んだ……みたい。
でも、次に目を覚ました時。
どういうわけか結婚する前に巻き戻っていた。
二度目の人生。
今度は苦しんで死にたくないから、オズワルド様との婚約は解消することに決めた。それと、彼には私の苦しみをプレゼントすることにしました。
一度婚約破棄したら良縁なんて望めないから、一人で生きていくことに決めているから、醜聞なんて気にしない。
そう決めて行動したせいで良くない噂が流れたのに、どうして次期侯爵様からの縁談が届いたのでしょうか?
※カクヨム様と小説家になろう様でも連載中・連載予定です。
7/23 女性向けHOTランキング1位になりました。ありがとうございますm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる