【完結】魔王様、溺愛しすぎです!

綾雅(りょうが)今年は7冊!

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43章 魔の森は秘密だらけ

586. 魔王様の拘束プレイ

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 謁見の間で、リリスは拘束されていた。立ち上がれないよう縛るのは、優しいルシファーの腕だ。そのため振り払うことが出来ない。膝の上に横抱きされ、彼の腕に閉じ込められた形だった。

 本人の希望で淡いピンクの可愛いドレスを着ている。黒髪に絡めたリボンも同色で、緩く編んだ髪は肩から胸の方へ流していた。ざっくりとした三つ編みに似た髪型は、所々に白い生花が散らされている。愛らしいお姫様は、魔王の膝の上で周囲を見回す。

 玉座を囲むようにした大公4人も、逃がす気はない様子だ。上目遣いにルシファーと視線を合わせれば、蕩けるような笑みが返された。逃げる隙はない。

「……ルシファー」

「どうした? リリス」

 声は優しいし、眼差しも柔らかい。表情も笑顔なのに問い詰めるなんて器用なことを……そう思いながら、リリスは諦めて身体の力を抜いた。こんなふうに聞かなくても、お茶会でも開いてくれたら話すのに。

「どうして魔物の大量発生を知っていたのか、教えてください」

「私が望んだからよ」

 それ以外の答えはない。言い切って顔を上げれば、質問したベールの方が困惑していた。意味が理解できないのかしら? リリスが小首をかしげる。

「だって、魔の森は魔族の母だもの」

 結論を知るリリスにしてみたら、周囲がこんな簡単な図式に気づけない理由がわからない。ずっと行動でも言葉でも示してきたのだから。わからない側からしたら、何をどう質問したらいいかもわからなかった。

「ベール、後ろから小説を読むような質問をしても意味がありません」

 結末からめくっていっても、時系列は正確に把握できない。そう言い切ったアスタロトが膝をついて、リリスと視線を合わせた。じっと見つめ合う赤い瞳同士は、やがてリリスが瞬きすることで逸らされる。

「ずっと不思議だったのです。リリス姫、あなたの種族は不明のまま――古い記憶や文献を調べても、頭に輪が浮かび背に白い翼を生やした種族は確認されなかった」

 さすがのルシファーも口を挟まなかった。リリスについては、不明な点が多すぎるのだ。それが悪いとは思わないが、今回の魔物の大量発生を予言したのは気にかかる。

 人族と魔族の子供はさほど珍しくない。追放されたり逃げ出した魔族が、弱者ばかりの人族の街に逃げ込むことは過去もあった。

 当初リリスが人族と魔族の子だと判断された理由が、彼女のもつ魔力だ。強く大きな魔力をもつのに、ゆらゆらと不安定だった。それは人族の血を引く子供によく現れる症状なのだ。白い肌と赤い瞳は魔族の親から、黒髪は人族の親から遺伝したと考えられた。

 しかし魔王城の城門前へ、誰にも気づかれずに人族の親が子を捨てることは可能か。人族と同じ成長を見せた子供が、死の直後に若返った現象も説明がつかない。ましてや魔の森や魔王の魔力を代償とした若返りだ。蘇った当初は誰も触れなかった疑問だが、異常な状況だった。

 魔力を代償として生き返れるなら、誰もがその手段に縋り付くだろう。若返りも同じだ。他の種族を絶滅させても若返り、生き残りたいと願う輩は魔族にも存在する。しかし実行されなかったのは、意味がないからだった。他者の魔力を吸収して魔力量が増えることはあっても、生き返ったり若返る効果はなかった。

 その後の突然の成長や、魔の森が満ちたという言葉の意味も、長き月日を生きた大公や魔王の叡智を総動員しても理解できない。

「リリスが誰であっても、何であっても構わない。オレの愛情は変わらないけど……知らないと助けられないだろう?」

 だから教えて欲しい。伴侶となるルシファーの願いに、リリスは少し考えて言葉を探した。すべてを伝えても構わないが、どう話したら伝わるのか。リリスには難しかった。

「私は『魔の森の分身』なのよ。魔の森は母であり、私であり、いずれ還るべき場所であり、世界そのものだわ」

 予想外の告白に、5人は絶句した。
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