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98章 とんとん拍子に準備は進む
1346. 悩み過ぎた見当違いの努力
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ピヨが余計な発言をしたせいで、洞窟でやらかした騒動がバレた。叱られたルシファーは書類を前に溜め息を吐く。おかしい。婚約指輪と結婚指輪を作ろうとして、前日に書類を片付けた筈なのに。積み重なる書類は増えた気がする。
スプリガンは結婚式のお飾り作りで忙しいし、指輪くらいの小さな物なら作れるだろうと思った。だから騒音を出しても問題がない廃坑を使ったのだ。偶然飛び込んだピヨに結界を張って被害がないように注意したし、指輪も無事完成した。完璧だったはず。
にやりと頬が緩む。指を間違えるところだったが、指輪は無事リリスの左手に収まった。これで婚約者持ちだと周囲に知らしめることが出来る。うっとりと肘をついて空中を見上げるルシファーを見ながら、ルキフェルが溜め息を吐いた。
何を考えているか丸わかりだけど……リリスがルシファーの婚約者なのは、全魔族が知っている事実だ。今さら知らしめる意味がよく分からない。恋愛は人をダメにすると聞いたが、その通りらしい。怖いからあと数万年は恋愛から遠ざかっていようと決めた。
「ルシファー、手前の書類だけ今日中に処理してね。結婚式に間に合わなくなるよ」
手配が遅れると結婚式に障る書類だけ分けて正解だった。慌てて書類に取り掛かるルシファーを見守りながら、手元の魔法陣を弄る。安全対策を兼ねて、半自動の迎撃システムを作った。ちゃんと稼働するかテストしたら、すぐに設置の予定だ。出来たらそれまでに、完全に自動化したシステムを作りたい。
迎撃する対象と放置してもいい異常の違いを判断する機能が、難しいのだ。繋がる異世界によって状況が違う。魔力を吸い込む裂け目もあれば、魔力以外の何かを放出する系統の裂け目もある。どこで線引きして危険を判断すればいいか。そこさえ決まれば、魔法陣も完成なのだが。
唸りながら魔法陣を指先で弄り続けるルキフェルへ、ルシファーが取引を持ち掛けた。
「なあ、いいアイディアがあるんだが……代わりに書類を半分引き受けてくれないか?」
自信ありげな魔王へ、少し考えて瑠璃竜王は頷いた。
「いいよ。ちゃんと使えるアイディアだったらね」
「よし。ルキフェルがさっきから魔法陣を弄ってる様子を見てて気づいたんだが、危険度の特定に関わる部分だよな?」
「そうだよ」
にやりと笑ったルシファーは簡単そうに言い放った。
「この世界にある物以外を反射すればいい。拒んだり中和しようとするから、魔法陣が複雑になるんだ。研究者が陥りがちな罠だな」
研究熱心だからこそ、機能を上に積み重ねてしまう。だから根本の部分を見失ってしまうのだ。この世界に異物を入れないことが目的なら、この世界にない物だけ排除すればいい。抹殺だと敵の強さに合わせる調整が面倒だが、反射だけならすぐ設置可能だった。
反射しきれないほど強い攻撃を受けたら、その連絡を受け取れる機能をつければいい。ルシファーの提案を聞きながら、ルキフェルは手にした魔法陣を消滅させた。それから改めて機能を付加し直す。くるりと手の上で回して確認し、軽く魔力を流してテストした。
「ほんとだ、どうして気づかなかったんだろう」
「これも出来たら便利、あれも欲しい。上に乗せ過ぎれば魔力が大量に必要になるし、何より各機能の調整が複雑になるだろ。まずは単純に作動させて、後から足りない機能を探した方が早い」
考え方だ。年の功だぞ。くすくす笑いながらルシファーが、あまり急ぎではない書類を半分に分けて押しやる。
「納得したところで申し訳ないが、こっちを頼む」
「いいよ。研究予定の時間が空いちゃったからね」
笑いながら互いの見落としや不得意を補い合い、魔王と大公は並んで書類に向かった。ルキフェルだけで処理できない書類が出てきて、書類を改めて分け直す面倒が発生したのは余談である。
スプリガンは結婚式のお飾り作りで忙しいし、指輪くらいの小さな物なら作れるだろうと思った。だから騒音を出しても問題がない廃坑を使ったのだ。偶然飛び込んだピヨに結界を張って被害がないように注意したし、指輪も無事完成した。完璧だったはず。
にやりと頬が緩む。指を間違えるところだったが、指輪は無事リリスの左手に収まった。これで婚約者持ちだと周囲に知らしめることが出来る。うっとりと肘をついて空中を見上げるルシファーを見ながら、ルキフェルが溜め息を吐いた。
何を考えているか丸わかりだけど……リリスがルシファーの婚約者なのは、全魔族が知っている事実だ。今さら知らしめる意味がよく分からない。恋愛は人をダメにすると聞いたが、その通りらしい。怖いからあと数万年は恋愛から遠ざかっていようと決めた。
「ルシファー、手前の書類だけ今日中に処理してね。結婚式に間に合わなくなるよ」
手配が遅れると結婚式に障る書類だけ分けて正解だった。慌てて書類に取り掛かるルシファーを見守りながら、手元の魔法陣を弄る。安全対策を兼ねて、半自動の迎撃システムを作った。ちゃんと稼働するかテストしたら、すぐに設置の予定だ。出来たらそれまでに、完全に自動化したシステムを作りたい。
迎撃する対象と放置してもいい異常の違いを判断する機能が、難しいのだ。繋がる異世界によって状況が違う。魔力を吸い込む裂け目もあれば、魔力以外の何かを放出する系統の裂け目もある。どこで線引きして危険を判断すればいいか。そこさえ決まれば、魔法陣も完成なのだが。
唸りながら魔法陣を指先で弄り続けるルキフェルへ、ルシファーが取引を持ち掛けた。
「なあ、いいアイディアがあるんだが……代わりに書類を半分引き受けてくれないか?」
自信ありげな魔王へ、少し考えて瑠璃竜王は頷いた。
「いいよ。ちゃんと使えるアイディアだったらね」
「よし。ルキフェルがさっきから魔法陣を弄ってる様子を見てて気づいたんだが、危険度の特定に関わる部分だよな?」
「そうだよ」
にやりと笑ったルシファーは簡単そうに言い放った。
「この世界にある物以外を反射すればいい。拒んだり中和しようとするから、魔法陣が複雑になるんだ。研究者が陥りがちな罠だな」
研究熱心だからこそ、機能を上に積み重ねてしまう。だから根本の部分を見失ってしまうのだ。この世界に異物を入れないことが目的なら、この世界にない物だけ排除すればいい。抹殺だと敵の強さに合わせる調整が面倒だが、反射だけならすぐ設置可能だった。
反射しきれないほど強い攻撃を受けたら、その連絡を受け取れる機能をつければいい。ルシファーの提案を聞きながら、ルキフェルは手にした魔法陣を消滅させた。それから改めて機能を付加し直す。くるりと手の上で回して確認し、軽く魔力を流してテストした。
「ほんとだ、どうして気づかなかったんだろう」
「これも出来たら便利、あれも欲しい。上に乗せ過ぎれば魔力が大量に必要になるし、何より各機能の調整が複雑になるだろ。まずは単純に作動させて、後から足りない機能を探した方が早い」
考え方だ。年の功だぞ。くすくす笑いながらルシファーが、あまり急ぎではない書類を半分に分けて押しやる。
「納得したところで申し訳ないが、こっちを頼む」
「いいよ。研究予定の時間が空いちゃったからね」
笑いながら互いの見落としや不得意を補い合い、魔王と大公は並んで書類に向かった。ルキフェルだけで処理できない書類が出てきて、書類を改めて分け直す面倒が発生したのは余談である。
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