【完結】勇者に折られた魔王のツノは、幼児の庇護者になりました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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10.うわっ、全部筒抜けかよ

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「そんなに驚かせたか」

 苦笑いした森人は「バルテル」と名乗った。琥珀の頭をそっと撫でてから、警戒する母猫に視線を合わせて小さなハミングをする。途端に、母猫は安心した様子で香箱座りになった。あれだ、前足を折りたたんで内側に入れる姿勢。安心してたり危険がない時だけ見せるらしいぞ。

 直接話が出来るなら早い。琥珀に僕を取りだすようお願いすると、首を横に振った。拗ねたように唇を尖らせて、不満を表明する。

「だって、とられちゃう」

 独占欲? 可愛いこと言うなよ。手があったら撫でてやるんだけど。残念に思いながら、話をするだけだから握ったままでいいと説明した。手を離して渡したら不安だろうが、抱いてていいんだぞ。何度も言い聞かせると、ようやく袋を加工した胸元から僕を取りだす。

 右手で掴んで、左手を添えた。大切にされてるみたいで照れる。子猫達は母猫ニーの上に乗ったり、尻尾を追い回したりと忙しそうだった。緊張感削がれる光景だ。

「コハクだったかな? 君はツノをどうやって手に入れたんだ? 拾ったのか」

 目線を合わせて話してくれる守り人バルテルに、琥珀はまだ用心している。首を横に振った。母猫が僕を拾って琥珀に引き合わせた話をした。子猫のおやつにされかけたのは内緒だ。恥ずかしすぎる。齧られて痛かったし。

 にゃー、母猫が鳴くとバルテルが笑い出した。

「おやつが話したのか? それはびっくりしたな」

 くそっ、まさか猫とも会話できるのかよ! 卑怯くさいチート野郎め!! あと、ニー。勝手に話すなよ。僕がツノだって面子ってもんがあるんだ。ぶつぶつ文句を言う僕に、琥珀は頬をすり寄せる。慰めてるつもりみたいだ。ありがとう。

「詳しい事情は後で聞くが、森を目指している理由を聞こうか」

 母猫ニーが何回か鳴いて説明したらしいが、猫なので詳しく理解していない。目的地くらいしか伝わらず、バルテルは困惑した。ニーとの会話を早々に切り上げ、僕に聞くことにした。ある意味正しい決断だ。

 この子達を保護して欲しい。要求をストレートに突きつける。ここで駆け引きしても仕方ない。僕が提供できるのは魔力だけで、森人がこの子達を騒動の種と見做せば距離を置くだろう。いきなり放置はしないだろうが、森の外縁に住まうことを許す程度か。

 魔王の頭上で得た知識から冷静に判断しながら反応を待った。

「孤児、か?」

 捨てられていた。の名も僕が与えたんだ。母猫ニーが世話をしていた事情まで話すと、バルテルは深く頷いた。

「わかった。俺が連れて行こう。ツノ殿に尽力いただきたいこともある」

 ある程度の見返りを要求されることは承知の上なので、あっさり承諾した。まずは琥珀が安心して暮らせる場所を手に入れる。待遇についてはその後で交渉すればいいさ。琥珀の響きをコハクと呼び変え、普段はこちらで呼ぼうと決めた。

 魔王もそうだが、真名の響きを知られることは支配されることを意味する。

「ツノちがう、しどう」

 僕を指さして必死に伝えるコハクに、バルテルは笑った。

「それは悪かった。シドウと呼ぼう。おいで」

 ずんぐりむっくりな分、がっちりした体格のバルテルはコハクを抱き上げる。それから慣れた様子で子猫達の首筋を掴んで肩に乗せ、母猫ニーをコハクに渡した。重さを感じない様子でひょいひょいと草むらに入ると、次の瞬間には鬱蒼と茂る緑の中にいる。

 エルフに似た魔法の使い手である彼らは、息をするように魔法や自然と共存していた。興奮したコハクが両手を振り回したため、右手に握られた僕が吐き気を催すほど酔ったのは……まあ、微笑ましいエピソードだろう。
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