25 / 82
25.思わぬ魔族の登場で警戒心MAX
しおりを挟む
楽しそうに魔法を覚える琥珀は、徐々に集落に溶け込んでいく。無邪気に笑い、子どもが少ない森人に可愛がられた。当初は警戒心の強い猫そのものだったが、今では人懐こく寄っていく。すっかり飼い猫だ。これはニーや子猫にも言えるけど。
「シドウ、僕と出掛けよう」
人との交流が増えることで、言葉も自然と達者になった。アルマが教えてくれたので読み書きも可能だ。今の琥珀を出会った頃の僕が見たら、別人だと思うだろうな。笑顔が増えて、とても楽しそうに毎日出かけていく。当然だが、僕を袋に入れて首から下げて。
「アルマのところへ行く」
わかった。昨日覚えた複合魔法に夢中なのだ。お湯を作る技術として認識する琥珀には悪いが、あれは十分過ぎるほど攻撃手段として有効だ。水の方が強ければただのお湯、火を強く調整したら蒸気が出来る。高温の蒸気を突然足元から噴き上げてみろ。大火傷だ。
アルマは危険性を理解していたため、最初に結界を教え込んだ。毎日毎日根気強く繰り返したおかげで、琥珀は薄い結界を日常的に纏っている。そこらの魔獣が突進したところで、弾き返せる程度の強度はあった。ようやく合格を貰って、複合魔法に入ったのが嬉しくて仕方ないらしい。
うきうきしながら足取りも軽く向かう先で、奇妙な気配を感じる。強大な魔力を持つ何かがいる。森人達の魔力を上回る存在だった。琥珀に注意するよう促し、慎重に集落へ近づく。バルテルのツリーハウスが離れていたため、気づけなかった。
裏から回り込んで、そうそう。ゆっくり僕だけ上に出せるか? ツノなので琥珀が顔を出すより目立たないはずだ。そう考えた僕は潜望鏡のような役目を果たすことにした。大きな茂みに潜った琥珀が手を突き出す。
ちょっと手が見えてる。もう少し下、あと左に回して。あ、そっちは逆。あれこれ指示した結果、ようやく人が集まる広場の様子が見えた。宙に浮いて森人を見下ろしているのは、魔族だ。しかも見覚えのある顔だった。あれって、魔王の側近だ。
こないだ魔王が倒された時、僕を忘れて首を回収した奴。たしか名前は……
「我が名はベリアル、偉大なる魔王アスモデウス陛下の右腕だ」
そうそう、ベリアルだよ。名前を聞きながら記憶と照合していく。たしか口先三寸で宰相みたいな役目を果たしていた。あいつ、何しに来たんだ?
「魔王は勇者に負けたと聞いたが何の用だ」
ふんぞり返って言い返すのは、バルテルだ。村長がいない森人の中で、まとめ役をしているらしい。いっそ役職を作ったらどうだと提案したら、それは上下が出来るからいけないと反対された。役職が出来ると世襲制や既得権益の概念が発生するからダメなのだと。精神的に進んだ社会かも知れない。
一際がっちりした体格のバルテルが表に立ち、斜め後ろに魔法が得意なアルマが控える。彼女は何時でも魔法が発動できるよう準備していた。森人は好戦的な種族ではないが、何度も魔族にだまし討ちされた経験があると聞いている。彼女に請われて、魔族の情報を流したが正解だった。
詐欺師のように口先がうまい男に、最初から疑いの目を向けていくスタイルは間違ってない。勇者達は問答無用で、切りかかってくる。あの姿勢は見ようによっては失礼だが、魔族相手と限定すれば正しい対処方法だった。
人の欲望を掻き立て、仲間同士を疑心暗鬼の渦に巻き込むのが魔族お得意の手法だ。一度かかると抜け出すのは容易ではなかった。僕という情報源がいた所為か、森人達の警戒心は高い。緊迫した空気が張り詰めていくのが手に取るように伝わった。
「シドウ、僕と出掛けよう」
人との交流が増えることで、言葉も自然と達者になった。アルマが教えてくれたので読み書きも可能だ。今の琥珀を出会った頃の僕が見たら、別人だと思うだろうな。笑顔が増えて、とても楽しそうに毎日出かけていく。当然だが、僕を袋に入れて首から下げて。
「アルマのところへ行く」
わかった。昨日覚えた複合魔法に夢中なのだ。お湯を作る技術として認識する琥珀には悪いが、あれは十分過ぎるほど攻撃手段として有効だ。水の方が強ければただのお湯、火を強く調整したら蒸気が出来る。高温の蒸気を突然足元から噴き上げてみろ。大火傷だ。
アルマは危険性を理解していたため、最初に結界を教え込んだ。毎日毎日根気強く繰り返したおかげで、琥珀は薄い結界を日常的に纏っている。そこらの魔獣が突進したところで、弾き返せる程度の強度はあった。ようやく合格を貰って、複合魔法に入ったのが嬉しくて仕方ないらしい。
うきうきしながら足取りも軽く向かう先で、奇妙な気配を感じる。強大な魔力を持つ何かがいる。森人達の魔力を上回る存在だった。琥珀に注意するよう促し、慎重に集落へ近づく。バルテルのツリーハウスが離れていたため、気づけなかった。
裏から回り込んで、そうそう。ゆっくり僕だけ上に出せるか? ツノなので琥珀が顔を出すより目立たないはずだ。そう考えた僕は潜望鏡のような役目を果たすことにした。大きな茂みに潜った琥珀が手を突き出す。
ちょっと手が見えてる。もう少し下、あと左に回して。あ、そっちは逆。あれこれ指示した結果、ようやく人が集まる広場の様子が見えた。宙に浮いて森人を見下ろしているのは、魔族だ。しかも見覚えのある顔だった。あれって、魔王の側近だ。
こないだ魔王が倒された時、僕を忘れて首を回収した奴。たしか名前は……
「我が名はベリアル、偉大なる魔王アスモデウス陛下の右腕だ」
そうそう、ベリアルだよ。名前を聞きながら記憶と照合していく。たしか口先三寸で宰相みたいな役目を果たしていた。あいつ、何しに来たんだ?
「魔王は勇者に負けたと聞いたが何の用だ」
ふんぞり返って言い返すのは、バルテルだ。村長がいない森人の中で、まとめ役をしているらしい。いっそ役職を作ったらどうだと提案したら、それは上下が出来るからいけないと反対された。役職が出来ると世襲制や既得権益の概念が発生するからダメなのだと。精神的に進んだ社会かも知れない。
一際がっちりした体格のバルテルが表に立ち、斜め後ろに魔法が得意なアルマが控える。彼女は何時でも魔法が発動できるよう準備していた。森人は好戦的な種族ではないが、何度も魔族にだまし討ちされた経験があると聞いている。彼女に請われて、魔族の情報を流したが正解だった。
詐欺師のように口先がうまい男に、最初から疑いの目を向けていくスタイルは間違ってない。勇者達は問答無用で、切りかかってくる。あの姿勢は見ようによっては失礼だが、魔族相手と限定すれば正しい対処方法だった。
人の欲望を掻き立て、仲間同士を疑心暗鬼の渦に巻き込むのが魔族お得意の手法だ。一度かかると抜け出すのは容易ではなかった。僕という情報源がいた所為か、森人達の警戒心は高い。緊迫した空気が張り詰めていくのが手に取るように伝わった。
11
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います
あきた
ファンタジー
明治大正風味のファンタジー恋愛もの。
化物みたいな能力を持ったせいでいじめられていたキイロは、強引に知らない家へ嫁入りすることに。
所が嫁入り先は火事だし、なんか子供を拾ってしまうしで、友人宅へ一旦避難。
親もいなさそうだし子供は私が育てようかな、どうせすぐに離縁されるだろうし。
そう呑気に考えていたキイロ、ところが嫁ぎ先の夫はキイロが行方不明で発狂寸前。
実は夫になる『薄氷の君』と呼ばれる銀髪の軍人、やんごとなき御家柄のしかも軍でも出世頭。
おまけに超美形。その彼はキイロに夢中。どうやら過去になにかあったようなのだが。
そしてその彼は、怒ったらとんでもない存在になってしまって。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる