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49.ベリアル邸は大事件!
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ベリアルの石造りの家は、当然だが地面の上に直接建てられている。正確には半分くらい地下になっており、石棺内のアスモデウスが快適に過ごせるよう気温に配慮していた。土の中の温度って、年間通してほぼ同じらしい。
木陰に建てたこともあり、建物内はひんやり涼しかった。
「ベリアル、いる?」
ノックを教えないとダメか。ツリーハウスの場合は、これから行くよとロープを揺らすので問題ないが、ベリアルの家にロープはない。扉を開けて入室する際、ノックの習慣をつけさせよう。新たな課題を胸に、勝手に入った琥珀の胸元から見た光景に……息が止まるかと思った。
『ベリアル? え、琥珀! ベリアルを助けて』
「わかった。助ける」
石の棺の上でベリアルは拘束されていた。両手を掲げた状態で固定され、足の間に知らない男がいる。しかも口も塞がれていた。自宅で寛いでいたせいか、ラフな衣がひらりと太腿を露わにしている。だがそのおかげで、まだ未遂だと分かった。
子どもの琥珀に見せる光景ではない。どう見ても無理やり襲ったよな。口も手も抵抗を奪って……ほぼ魔法が使えなくなったベリアルを縛った。自分勝手な魔族のやり方に怒りが湧き、琥珀にお願いしたのも忘れて魔法を放つ。
『怒りに青く染まる風よ、不埒者の腕を落とせ、足を砕け』
厨二な呪文の直後、ベリアルの上に覆い被さった魔族がこちらを睨む。だが遅い。ボキッ、グシャ……嫌な音がして男の悲鳴が響き渡った。腕はすっぱりと肩から切り落とされ、床の上で切り刻まれる。風によって捻られた足が曲がり、跨っていた男も転がり落ちた。
「えいっ!」
琥珀が追い討ちをかけた。助けてくれと泣き叫ぶ男を空気が潰していく。重力を操作したのか。全身が歪んで顔が変形し、ぐしゃりと水音をさせて平らになった。申し訳ない、琥珀が石床を真っ赤に染めてしまった。先日アルマが贈った絨毯が……いろいろな体液でぐっちょり濡れている。
『心優しき森の風よ、微風となって我らが友を解放に導け』
僕の怪しい呪文に応えた風がベリアルを拘束する縄や猿轡を千切った。解放されたベリアルは、慌てて衣服を整える。うん、そうしてくれ。目の毒だから。明らかに艶姿の表現が似合う状態だったぞ。
「助かりました、ありがとうござい……ます」
震えながらも微笑もうとする彼に『ごめんな、侵入者に気付けなくて』と謝った。僕のせいにしてくれたら、気が楽になるかな? と思ったけど。やっぱりベリアルはベリアルだ。首を横に振った。
「油断しました。コハク様もありがとうございます」
震えた声がしっかりする。精神的に強いよな。僕に手があったら、ぽんぽんと頭を撫でて褒めてやりたかった。
「ベリアル、王様のこと教えて」
侵入者のことなど忘れたような琥珀の自由な発言に、ベリアルは微笑んだ。
「では汚れた部屋から出ましょうか」
血塗れだっけ。鼻がないから気にならないけど……片付けようとしたベリアルに、琥珀が笑う。
「間に挟んだからぽいする」
首を傾げたベリアルが気づいて目を見開く。汚れないよう、透明な壁と壁の間に男を挟んだらしい。前世の知識でいくとビニール袋か。ぺたんと潰れたそれを、ひょいっと指先で示すだけで外へ捨てた。
「……名付けでしたか。賢王や強王もいいですが、そのまま琥珀王でどうでしょうか」
驚いたままの僕は、ベリアルの提案にただ同意した。だって、どこまで行ったって琥珀は琥珀なんだから。
木陰に建てたこともあり、建物内はひんやり涼しかった。
「ベリアル、いる?」
ノックを教えないとダメか。ツリーハウスの場合は、これから行くよとロープを揺らすので問題ないが、ベリアルの家にロープはない。扉を開けて入室する際、ノックの習慣をつけさせよう。新たな課題を胸に、勝手に入った琥珀の胸元から見た光景に……息が止まるかと思った。
『ベリアル? え、琥珀! ベリアルを助けて』
「わかった。助ける」
石の棺の上でベリアルは拘束されていた。両手を掲げた状態で固定され、足の間に知らない男がいる。しかも口も塞がれていた。自宅で寛いでいたせいか、ラフな衣がひらりと太腿を露わにしている。だがそのおかげで、まだ未遂だと分かった。
子どもの琥珀に見せる光景ではない。どう見ても無理やり襲ったよな。口も手も抵抗を奪って……ほぼ魔法が使えなくなったベリアルを縛った。自分勝手な魔族のやり方に怒りが湧き、琥珀にお願いしたのも忘れて魔法を放つ。
『怒りに青く染まる風よ、不埒者の腕を落とせ、足を砕け』
厨二な呪文の直後、ベリアルの上に覆い被さった魔族がこちらを睨む。だが遅い。ボキッ、グシャ……嫌な音がして男の悲鳴が響き渡った。腕はすっぱりと肩から切り落とされ、床の上で切り刻まれる。風によって捻られた足が曲がり、跨っていた男も転がり落ちた。
「えいっ!」
琥珀が追い討ちをかけた。助けてくれと泣き叫ぶ男を空気が潰していく。重力を操作したのか。全身が歪んで顔が変形し、ぐしゃりと水音をさせて平らになった。申し訳ない、琥珀が石床を真っ赤に染めてしまった。先日アルマが贈った絨毯が……いろいろな体液でぐっちょり濡れている。
『心優しき森の風よ、微風となって我らが友を解放に導け』
僕の怪しい呪文に応えた風がベリアルを拘束する縄や猿轡を千切った。解放されたベリアルは、慌てて衣服を整える。うん、そうしてくれ。目の毒だから。明らかに艶姿の表現が似合う状態だったぞ。
「助かりました、ありがとうござい……ます」
震えながらも微笑もうとする彼に『ごめんな、侵入者に気付けなくて』と謝った。僕のせいにしてくれたら、気が楽になるかな? と思ったけど。やっぱりベリアルはベリアルだ。首を横に振った。
「油断しました。コハク様もありがとうございます」
震えた声がしっかりする。精神的に強いよな。僕に手があったら、ぽんぽんと頭を撫でて褒めてやりたかった。
「ベリアル、王様のこと教えて」
侵入者のことなど忘れたような琥珀の自由な発言に、ベリアルは微笑んだ。
「では汚れた部屋から出ましょうか」
血塗れだっけ。鼻がないから気にならないけど……片付けようとしたベリアルに、琥珀が笑う。
「間に挟んだからぽいする」
首を傾げたベリアルが気づいて目を見開く。汚れないよう、透明な壁と壁の間に男を挟んだらしい。前世の知識でいくとビニール袋か。ぺたんと潰れたそれを、ひょいっと指先で示すだけで外へ捨てた。
「……名付けでしたか。賢王や強王もいいですが、そのまま琥珀王でどうでしょうか」
驚いたままの僕は、ベリアルの提案にただ同意した。だって、どこまで行ったって琥珀は琥珀なんだから。
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