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54.襲われたら反撃してもいい
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光り輝く好戦的な色を浮かべる瞳、荒い鼻息……茂みからのそりと現れたのは、灰色の毛皮を纏う狼だった。首周りに白いマフラー状態の柔らかそうな毛が巻いている。腹が減っているのだろう。痩せた体はアバラ骨が浮き出て、ちょっと可哀想だった。
「死体にする」
じゅるっと涎を啜りそうな欲望塗れの声に、慌てたバルテルと僕が止めに入る。
「待て、いきなり殺すな!」
『そうだぞ、あの体が使えるか分からない。無用な殺生はやめるんだ』
「せっしょう? 分からない」
難しい言葉は禁止だった。くそっ、気が動転してると次の言葉が出て来ないぞ。焦りながら言い聞かせた。
「森の動物を勝手に殺すのはダメだ。僕はそんな琥珀はきら……好きじゃない」
嫌いと言いかけた響きにもう涙を浮かべられ、慌てて方向転換する。好きじゃないは意思表示として許されると思う。というか、もう選べる言葉がない。バルテルがタオルを取りだして涙を拭いてやりながら、後ろに下がるよう指示した。項垂れた琥珀はとぼとぼと歩く。
なんだか苛めた気分だ。はぁ……まいったな。琥珀は僕をぎゅっと抱っこしたまま、動物に背を向けた。牙を剥いてる動物相手に、それは禁じられた行為だったのに。気が動転していて、僕もバルテルも注意力が散漫になっていた。
がるぅ! 飛び上がった狼の腹が見える。あ、これヤバイやつ……と目を瞑りたいが残念。ツノなのでそういった機能はない。危険だろうが目に焼き付けてしまうので、多少トラウマになっている光景もいくつかあった。その一つに琥珀のケガが加わるのかと諦めかけた時。
「襲った! やっつける!!」
襲われたら反撃してもいい。そう教えていたため、琥珀が反応した。ぶわっと魔力が魔法の形を取る前に狼を襲う。よく分からないが、苦しそうに藻掻く姿から想像できるのは、息を止めた? あれだ、窒息死。苦しむ時間は意外と短いし、毛皮に穴も開かない。
ばたっと首を垂れて動かなくなった狼が地上に落下する。響いた落下音は大きく、振動まで来た。琥珀は嬉しそうな顔で狼の前にしゃがみ込む。
『おい、大丈夫か?』
「もう動かない、息してない」
兎に装着済みの僕を、狼の鼻先に突き出した。ちょ、怖いんですけど? 口から泡吹いてるじゃん。怯える僕を気の毒そうに見るものの、バルテルは諦めの表情を浮かべた。助けようがない。そう語る彼の瞳に「がんばれ」とエールを送ったが、彼の立場なら僕も同じ死んだ目をするだろう。
「シドウ、入る」
『いや、入り方が分からないので遠慮します』
「入る、絶対に入る」
ぐいぐい押し込まれ、心の中で「いやぁ!」と叫んだ僕は次の瞬間、不思議な体験をした。ぐにゃりと体が捩れるような不愉快な感覚に襲われ、続いて無理やり折れた骨を治すような痛みを感じる。そのまま気を失い……不快で嫌な夢を見た。
狼の口に突き刺さるニ角兎、捕食されてる光景にしか見えない。その狼に吸い込まれた僕は頭の上から顔を出し、一角狼になった。でもやっぱり手足が動かない。嫌な夢だ、そう夢に違いない。魘されながら意識は渦巻く闇に飲み込まれた。
「死体にする」
じゅるっと涎を啜りそうな欲望塗れの声に、慌てたバルテルと僕が止めに入る。
「待て、いきなり殺すな!」
『そうだぞ、あの体が使えるか分からない。無用な殺生はやめるんだ』
「せっしょう? 分からない」
難しい言葉は禁止だった。くそっ、気が動転してると次の言葉が出て来ないぞ。焦りながら言い聞かせた。
「森の動物を勝手に殺すのはダメだ。僕はそんな琥珀はきら……好きじゃない」
嫌いと言いかけた響きにもう涙を浮かべられ、慌てて方向転換する。好きじゃないは意思表示として許されると思う。というか、もう選べる言葉がない。バルテルがタオルを取りだして涙を拭いてやりながら、後ろに下がるよう指示した。項垂れた琥珀はとぼとぼと歩く。
なんだか苛めた気分だ。はぁ……まいったな。琥珀は僕をぎゅっと抱っこしたまま、動物に背を向けた。牙を剥いてる動物相手に、それは禁じられた行為だったのに。気が動転していて、僕もバルテルも注意力が散漫になっていた。
がるぅ! 飛び上がった狼の腹が見える。あ、これヤバイやつ……と目を瞑りたいが残念。ツノなのでそういった機能はない。危険だろうが目に焼き付けてしまうので、多少トラウマになっている光景もいくつかあった。その一つに琥珀のケガが加わるのかと諦めかけた時。
「襲った! やっつける!!」
襲われたら反撃してもいい。そう教えていたため、琥珀が反応した。ぶわっと魔力が魔法の形を取る前に狼を襲う。よく分からないが、苦しそうに藻掻く姿から想像できるのは、息を止めた? あれだ、窒息死。苦しむ時間は意外と短いし、毛皮に穴も開かない。
ばたっと首を垂れて動かなくなった狼が地上に落下する。響いた落下音は大きく、振動まで来た。琥珀は嬉しそうな顔で狼の前にしゃがみ込む。
『おい、大丈夫か?』
「もう動かない、息してない」
兎に装着済みの僕を、狼の鼻先に突き出した。ちょ、怖いんですけど? 口から泡吹いてるじゃん。怯える僕を気の毒そうに見るものの、バルテルは諦めの表情を浮かべた。助けようがない。そう語る彼の瞳に「がんばれ」とエールを送ったが、彼の立場なら僕も同じ死んだ目をするだろう。
「シドウ、入る」
『いや、入り方が分からないので遠慮します』
「入る、絶対に入る」
ぐいぐい押し込まれ、心の中で「いやぁ!」と叫んだ僕は次の瞬間、不思議な体験をした。ぐにゃりと体が捩れるような不愉快な感覚に襲われ、続いて無理やり折れた骨を治すような痛みを感じる。そのまま気を失い……不快で嫌な夢を見た。
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