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59.子どもは本気にするんだからな!?
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琥珀に「歩きにくいから降りてくれ」と頼んだところ、大泣きされた。自分が嫌われたと思ったらしい。それはないと否定して、やっと寝かしつけたところだ。鼻水と涙で汚れた顔を舐めてやる。これが不思議なことに抵抗がなかった。僕はついに中身まで獣化したのだろうか。
年の離れた可愛い弟感覚だが、実年齢を考えると孫でも無理がある。数百年離れると十週くらい回って、弟でいいやと落ち着いた。猪は柔らかい内臓系を今日食べ、一部を燻製にする。後は数日かけて皆で分けるが、そもそも森人は肉より野菜や果物、穀物を主食としていた。
余る肉を加工して長期保存する技術は優れている。最近ではベリアルが協力し、亜空間保存を始めたとか。収納とは違い、亜空間を開いて入れた肉は腐らない。魔族でも使える種族が限られる術なので、非常に重宝された。ベリアルの地位が少し向上したのはいいことだと思う。
「何か食べられそうか?」
『腹は減らないんだよな』
ツノ生活が長かったせいか、空腹を忘れてしまった。本能っぽい部分が狼の肉体に残っているので、腹が減るかと思ったが、そうでもない。しかし食べれば吸収しているようで、ちゃんと消化して排出される。
「痩せてるせいか毛並みがごわごわ硬いし、たぶん栄養失調だぞ」
『食べるようにする』
琥珀が「あーん」を覚えて、僕に食べさせたがる。出来るだけ付きあうが、食べた後どうしても胃もたれの症状が出た。ベリアルに相談しても、他人の体を乗っ取る種族を知らないので憶測ばかりだ。あれこれ話し合って検証しても、体がまだ馴染んでいないとの結論に至った。
こうなったら時間の問題か。または僕がこの体を自分の物と認識できてないのが原因かも知れない。先日、狩りの最中に相手の突進を受けたが、さほど痛みを感じなかった。借り物と思っているから、体が僕に馴染まない可能性も高い。
『諦めて、この体で生きてくと決意出来たらいいんだけど』
「人型にこだわるのか?」
『こだわると言うか、不便じゃん』
狼の顔だと人間ほど感情を表に出せないし、時々本能が出て蝶々を目で追ったりするし。歩いてるネズミみて涎が出た時は、ちょっと考えちゃったよな。このまま狼の本能に飲み込まれるなら、ツノの方が良かったんじゃないかと。
「琥珀は喜んでるぞ」
『動いたから執着してるけど、恋人かお嫁さんでも出来たら忘れるよ』
親の心境に近いな。年の離れた兄なんて気取ってみても、幼い子どもか孫に接する気持ちの方が近かった。琥珀が幸せになればいい。それだけだ。素敵なお嫁さんを貰って、いつか産まれる子どもを見せてもらえたら……満足なんだけど。
「僕はシドウをお嫁さんにする」
目元をごしごし擦る手を止めながら、半分寝ぼけた様子の琥珀の言葉に固まる。え? 今、なんて?
『琥珀?』
「シドウのお嫁さんでもいい」
今度はきっちり言い直された。それは……いろいろ無理だな。狼の顔でも分かるくらい引いた反応を見せる僕に、大声を上げてバルテルが笑い出した。
「こりゃいい。結婚しちゃえ」
『無責任なこと言わないでくれ!』
子どもはすぐに本気にするんだからな!?
年の離れた可愛い弟感覚だが、実年齢を考えると孫でも無理がある。数百年離れると十週くらい回って、弟でいいやと落ち着いた。猪は柔らかい内臓系を今日食べ、一部を燻製にする。後は数日かけて皆で分けるが、そもそも森人は肉より野菜や果物、穀物を主食としていた。
余る肉を加工して長期保存する技術は優れている。最近ではベリアルが協力し、亜空間保存を始めたとか。収納とは違い、亜空間を開いて入れた肉は腐らない。魔族でも使える種族が限られる術なので、非常に重宝された。ベリアルの地位が少し向上したのはいいことだと思う。
「何か食べられそうか?」
『腹は減らないんだよな』
ツノ生活が長かったせいか、空腹を忘れてしまった。本能っぽい部分が狼の肉体に残っているので、腹が減るかと思ったが、そうでもない。しかし食べれば吸収しているようで、ちゃんと消化して排出される。
「痩せてるせいか毛並みがごわごわ硬いし、たぶん栄養失調だぞ」
『食べるようにする』
琥珀が「あーん」を覚えて、僕に食べさせたがる。出来るだけ付きあうが、食べた後どうしても胃もたれの症状が出た。ベリアルに相談しても、他人の体を乗っ取る種族を知らないので憶測ばかりだ。あれこれ話し合って検証しても、体がまだ馴染んでいないとの結論に至った。
こうなったら時間の問題か。または僕がこの体を自分の物と認識できてないのが原因かも知れない。先日、狩りの最中に相手の突進を受けたが、さほど痛みを感じなかった。借り物と思っているから、体が僕に馴染まない可能性も高い。
『諦めて、この体で生きてくと決意出来たらいいんだけど』
「人型にこだわるのか?」
『こだわると言うか、不便じゃん』
狼の顔だと人間ほど感情を表に出せないし、時々本能が出て蝶々を目で追ったりするし。歩いてるネズミみて涎が出た時は、ちょっと考えちゃったよな。このまま狼の本能に飲み込まれるなら、ツノの方が良かったんじゃないかと。
「琥珀は喜んでるぞ」
『動いたから執着してるけど、恋人かお嫁さんでも出来たら忘れるよ』
親の心境に近いな。年の離れた兄なんて気取ってみても、幼い子どもか孫に接する気持ちの方が近かった。琥珀が幸せになればいい。それだけだ。素敵なお嫁さんを貰って、いつか産まれる子どもを見せてもらえたら……満足なんだけど。
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目元をごしごし擦る手を止めながら、半分寝ぼけた様子の琥珀の言葉に固まる。え? 今、なんて?
『琥珀?』
「シドウのお嫁さんでもいい」
今度はきっちり言い直された。それは……いろいろ無理だな。狼の顔でも分かるくらい引いた反応を見せる僕に、大声を上げてバルテルが笑い出した。
「こりゃいい。結婚しちゃえ」
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