【完結】勇者に折られた魔王のツノは、幼児の庇護者になりました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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67.教育の狼(オス)に求愛された

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 シェンに頼んで魔狼を紹介してもらった。狼としての生活や習慣、仲間とのコミュニケーションを教えてもらう予定だ。僕は人に育てられたと説明したらしい。確かに他に適切な説明はない。乗り移るなんて事例がないし、僕の見た目は普通の狼なんだから。

 鼻を鳴らして近づき、僕に挨拶されてもどう返したらいいのか分からなかった。呆然としていると、後ろに回りこみ尻の匂いを嗅がれる。慌てて逃げても追いかけてきた。これが狼の挨拶なのか? というか、僕に教えてくれる必要はないんだけど。

 なぜか満足そうに離れていった。見送って座り込む。安心したら後ろ足から力が抜けちゃったよ。そういや犬同士も尻の匂い嗅ぐし、きっと挨拶のひとつなんだろう。深く考えることをやめて、僕は子狼と遊ぶ魔狼を見つめる。

 噛んではいけない場所に牙を立てると叱られ、しっかり躾けてもらってるみたいだ。唸りながらガウとヴァンが立ち向かう。それを転がし、受け流す魔狼は黒い毛皮が艶やかだった。いわゆる、狼のイケメンなのか。黒狼ってカッコいいな。

「……僕、あの狼嫌い」

 珍しい意思表示をした琥珀に驚く。僕の横に座って膝を抱え、ぽろぽろと涙を溢した。拭おうにも肉球だから無理で、動物っぽいが舐めることにする。ぺろりと頬を舐めたら、気持ちいい。頬が柔らかくて癖になりそうだった。

「っ、僕のシドウで……僕のお嫁さんなのに」

 うん? 何の話だ? きょとんとした僕は、間抜けにもベロを出したまま動きを止めた。その舌を、琥珀がペロンと舐める。慌てて引っ込めた。びっくりした! 動物の舌を舐めちゃいけませんって、教えておいた方がいいな。

 じゃなくて! 僕のお嫁さんがどうのこうの、変なこと言ってなかったか?

「安心しろ、あれは動物の挨拶で求愛行動じゃないぞ」

 シェンが魔狼を庇う発言をするが、琥珀は全力で首を横に振った。勢いが良すぎて、涙が散っている。

「違う! シドウを狙ってるもん」

「そうなのか?」

 うーんと唸るシェンは、魔狼の前にしゃがみ込んだ。それから何やら話し合っていたが、ぽりぽりと顳顬を掻きながら戻ってくる。

「びっくりした、本当に狙われてた」

「僕のお嫁さんだもん」

「ちゃんと伝えてきたぞ」

 ぽんとシェンの手が琥珀の頭に乗せられ、乱暴に撫でる。

『狙われ? え??』

「すまん。彼には伝えたんだが、近くに番相手が見当たらないから口説こうとしたらしい」

 僕が狼のコミュニケーションを知ってたら、口説かれてると気付けたのかも。でも元が人間なので、びっくりしただけだった。今後は気をつけよう。シェンに説明を受けたところ、尻の匂いは嗅がせない方がいいらしい。鼻先での挨拶までだ。

 二度と油断しないから! 何度も約束して、ようやく琥珀に許してもらった。あれ? どうして僕が言い訳しないといけないんだ? 
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