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72.国王に一発かましてやれ!!
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柔らかな服を着せてもらう。この世界で服を着たのは、初めてかも知れない。ある意味、ずっと裸族だった。ツノに服着せる奴はいないし、狼もそうだ。今回は威厳がどうのという話になり、アルマが作ってくれた。
マントに近く、ヒラヒラしている。お尻まで被る長さがあり、前脚を通して着用するベストのような形だった。前部分を軽くボタンで留めて、立ち上がると胴体だけが包まれた感じ。雰囲気としては盲導犬が仕事中だと示すベストが近いかも。
「あらぁ、思ったより似合うわ。コハクちゃんと結婚するんだから、婚礼衣装も作らないとね」
「それはいいわ」
「レース編みで協力できるわよ」
なぜか女性が結託して、僕の花嫁衣装で盛り上がっている。狼相手に衣装もへったくれもないと思うが、反論は危険だ。大人しく、曖昧にへらりと笑って誤魔化した。
アルマがベストを琥珀に着せる。僕と同じ黒色で、お揃いだった。まあ黒なら礼服の色だから、お揃いというのもおかしいか。そう思ったら、なんとロルフも黒着用だ。魔王感がそこはかとなく漂う色だな。
『黒に統一したんだ?』
曖昧にぼかして問う僕は、偶然だからと答える彼女達に期待していた。しかし、無駄な期待は裏切られる運命にある。
「もちろんよ! 琥珀王のお披露目だもの!」
「可愛いのもいいけど、やっぱり威厳重視よね」
「魔王の代理でしょう? 黒じゃなくちゃ」
……そっか、黒は決定なんだ。僕は元が黒髪黒瞳だし、現在も灰色だからカラーが良かったなと思うけど。
『じゃあ、行ってくる。琥珀、僕とロルフを連れて空間転移出来る?』
「出来る。前にいた街の前でいい?」
『十分だ。そこから先はまた考えよう』
琥珀は右手を僕の上に乗せ、左手をロルフと繋ぐ。ベリアルは指定した人物と触れていなくても問題ないらしいが、琥珀は危険だからまだ許可していない。必ず触れた者や物を連れて行くよう教えていた。間違いがあって、足だけ連れてったとか怖いからね。
ぐらっと足下がひしゃげたような不安定な感覚の後、見覚えのある塀の前に立っていた。周囲に人の姿や気配はない。ほっとする。見上げた先は高い塀で、これは都をぐるりと囲う外壁だろう。転移する琥珀の負担を考え、過去に接点のある国が琥珀の担当だ。
孤児でひもじい思いをして、追い出された。そんな場所だからこそ、遠慮なく僕も言い切れる。
『よし、国王に一発かましてやれ!!』
「うん! 僕頑張る」
「その勢いだ。緊張はしてないみたいでよかった」
ロルフはにこにこしてるけど、一応ここ脅しに来た敵地なので。王宮の塔を見上げると、琥珀が指で尺取を始めた。ぴょっこぴょこ動かす指は何かを計測しているらしい。
『どうしたんだ?』
「僕のお城より大きい。低くする」
唸るように不穏な発言をした。ロルフと顔を見合わせ、止めるぞと意気投合した時には遅かった。
「えいっ!」
琥珀の号令で僕達は空に浮いていた。翼もないし、足の下に何もないのに……ふわりと浮いて落ちない。あっという間に都を見下ろす高さに到達した。
やばい、背筋がぞくぞくする。高所恐怖症じゃなくても、何もない足下は落ち着かない。琥珀を止めないと! 足下を見てしまう目を引き剥がし、顔を上げた僕は悲鳴を上げた。
『うわあぁぁ! ぶつかるぅ!!』
マントに近く、ヒラヒラしている。お尻まで被る長さがあり、前脚を通して着用するベストのような形だった。前部分を軽くボタンで留めて、立ち上がると胴体だけが包まれた感じ。雰囲気としては盲導犬が仕事中だと示すベストが近いかも。
「あらぁ、思ったより似合うわ。コハクちゃんと結婚するんだから、婚礼衣装も作らないとね」
「それはいいわ」
「レース編みで協力できるわよ」
なぜか女性が結託して、僕の花嫁衣装で盛り上がっている。狼相手に衣装もへったくれもないと思うが、反論は危険だ。大人しく、曖昧にへらりと笑って誤魔化した。
アルマがベストを琥珀に着せる。僕と同じ黒色で、お揃いだった。まあ黒なら礼服の色だから、お揃いというのもおかしいか。そう思ったら、なんとロルフも黒着用だ。魔王感がそこはかとなく漂う色だな。
『黒に統一したんだ?』
曖昧にぼかして問う僕は、偶然だからと答える彼女達に期待していた。しかし、無駄な期待は裏切られる運命にある。
「もちろんよ! 琥珀王のお披露目だもの!」
「可愛いのもいいけど、やっぱり威厳重視よね」
「魔王の代理でしょう? 黒じゃなくちゃ」
……そっか、黒は決定なんだ。僕は元が黒髪黒瞳だし、現在も灰色だからカラーが良かったなと思うけど。
『じゃあ、行ってくる。琥珀、僕とロルフを連れて空間転移出来る?』
「出来る。前にいた街の前でいい?」
『十分だ。そこから先はまた考えよう』
琥珀は右手を僕の上に乗せ、左手をロルフと繋ぐ。ベリアルは指定した人物と触れていなくても問題ないらしいが、琥珀は危険だからまだ許可していない。必ず触れた者や物を連れて行くよう教えていた。間違いがあって、足だけ連れてったとか怖いからね。
ぐらっと足下がひしゃげたような不安定な感覚の後、見覚えのある塀の前に立っていた。周囲に人の姿や気配はない。ほっとする。見上げた先は高い塀で、これは都をぐるりと囲う外壁だろう。転移する琥珀の負担を考え、過去に接点のある国が琥珀の担当だ。
孤児でひもじい思いをして、追い出された。そんな場所だからこそ、遠慮なく僕も言い切れる。
『よし、国王に一発かましてやれ!!』
「うん! 僕頑張る」
「その勢いだ。緊張はしてないみたいでよかった」
ロルフはにこにこしてるけど、一応ここ脅しに来た敵地なので。王宮の塔を見上げると、琥珀が指で尺取を始めた。ぴょっこぴょこ動かす指は何かを計測しているらしい。
『どうしたんだ?』
「僕のお城より大きい。低くする」
唸るように不穏な発言をした。ロルフと顔を見合わせ、止めるぞと意気投合した時には遅かった。
「えいっ!」
琥珀の号令で僕達は空に浮いていた。翼もないし、足の下に何もないのに……ふわりと浮いて落ちない。あっという間に都を見下ろす高さに到達した。
やばい、背筋がぞくぞくする。高所恐怖症じゃなくても、何もない足下は落ち着かない。琥珀を止めないと! 足下を見てしまう目を引き剥がし、顔を上げた僕は悲鳴を上げた。
『うわあぁぁ! ぶつかるぅ!!』
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