77 / 82
77.壮大な砂の王国を作ったらしい
しおりを挟む
『悪夢だ』
呟いた僕を心配そうに撫でる琥珀の手は、子ども体温で温かい。嫌がる耳を避けて間を撫でる気遣いはありがたいが、それを他人に発揮できないのはどうなんだろう。僕らはどこかで教育を間違えたのか? それとも琥珀自身の素質だったり?
「嘆くことはありません。ロルフから聞く限り、かなり失礼な態度でしたし。舐めた態度の相手を叩くのは賢い選択ですよ」
間違っていませんと、ベリアルは笑顔で肯定する。満足げに笑う琥珀……項垂れる僕が間違ってる気がしてきた。ベリアルが知らせたのは、昨日脅しをかけに行った国が、砂の王国になった事実だ。無機物はすべて砂に変わり、命ある者だけがおろおろ動き回ってるらしい。
無機物と断定されたのは、食材や宝石、家具といった何もかもが砂に変化したためだ。もちろん建物が残っているわけもない。噴水があった広場も、観賞魚を残して砂になった。地面に生えた草は生き残ったし、もちろん家庭菜園の野菜やペットも生きている。ちなみに観賞魚は砂の上で瀕死だったので、見つけたベリアルが川に放してあげたとか。優しい。
『琥珀がやったのか?』
「うん!」
褒めてもらえると思った琥珀は、嬉しそうだ。尻尾があったら全力で振り切ってるだろう。目を輝かせる幼児の脇を、元気よく子狼が走った。後ろを母猫ニーが唸りながら追いかける。あれこれと留守にする僕に代わり、ニーが子狼の面倒を見てくれていた。お陰で狼なのに毛繕いが上手になり、時々「ぅにゃー」と鳴く。
いけない、思わず現実逃避してしまった。
『理由を聞いてもいい?』
叱る前に理由を聞いて、事情を理解する必要がある。確かに対応が失礼だったし、琥珀が舐められて危害を加えられる可能性があったなら、不可抗力だった。そう自分に言い聞かせないと、罪悪感がすごい。
「あの国に行ってから、シドウは具合悪くなった。やられたらやり返す!」
「さすがです、琥珀王」
「おう! 邪魔するぞ。昨日は派手にやったな、今度は我も混ぜてくれ」
シェンが窓から入り込む。絶句した僕は注意するのも忘れて、彼らを凝視した。魔族と古龍、どちらも攻撃的な種族だ。琥珀がしたことが異常だと思ってない。もしかして僕がおかしいのか? この世界で異端者なのかも。
「シドウ、具合悪い? もっとやっつけてくる?」
『やっつけなくていいよ』
次からはやっつける前に相談して欲しい。だがそう願ったら、琥珀は素直に受け止めて律儀に守ろうとする。その結果、危害を加えられても反撃しないかも知れない。あれこれ考えたら何も言えなくて、今日の襲撃を止めるだけに留めた。
「琥珀王の名も広まったし、これで他の国は動かないだろ」
満足げなシェンの言葉に、結果よければすべて良しと自分を納得させた。早くこの世界の考え方に染まらないと、僕が辛い。優しく撫でる琥珀が僕を抱き寄せた。
「シドウは僕のお嫁さん、僕が守るんだよ」
『あ、うん。お願いします』
嬉しそうに笑う琥珀を見ながら、彼が幼子であることに心の底から感謝した。成人してたら、襲われる心配しないといけなかったし。しばらく家族ごっこしながら……うん、琥珀が幸せならいいや。基準をすべて一点に絞ることにした。
呟いた僕を心配そうに撫でる琥珀の手は、子ども体温で温かい。嫌がる耳を避けて間を撫でる気遣いはありがたいが、それを他人に発揮できないのはどうなんだろう。僕らはどこかで教育を間違えたのか? それとも琥珀自身の素質だったり?
「嘆くことはありません。ロルフから聞く限り、かなり失礼な態度でしたし。舐めた態度の相手を叩くのは賢い選択ですよ」
間違っていませんと、ベリアルは笑顔で肯定する。満足げに笑う琥珀……項垂れる僕が間違ってる気がしてきた。ベリアルが知らせたのは、昨日脅しをかけに行った国が、砂の王国になった事実だ。無機物はすべて砂に変わり、命ある者だけがおろおろ動き回ってるらしい。
無機物と断定されたのは、食材や宝石、家具といった何もかもが砂に変化したためだ。もちろん建物が残っているわけもない。噴水があった広場も、観賞魚を残して砂になった。地面に生えた草は生き残ったし、もちろん家庭菜園の野菜やペットも生きている。ちなみに観賞魚は砂の上で瀕死だったので、見つけたベリアルが川に放してあげたとか。優しい。
『琥珀がやったのか?』
「うん!」
褒めてもらえると思った琥珀は、嬉しそうだ。尻尾があったら全力で振り切ってるだろう。目を輝かせる幼児の脇を、元気よく子狼が走った。後ろを母猫ニーが唸りながら追いかける。あれこれと留守にする僕に代わり、ニーが子狼の面倒を見てくれていた。お陰で狼なのに毛繕いが上手になり、時々「ぅにゃー」と鳴く。
いけない、思わず現実逃避してしまった。
『理由を聞いてもいい?』
叱る前に理由を聞いて、事情を理解する必要がある。確かに対応が失礼だったし、琥珀が舐められて危害を加えられる可能性があったなら、不可抗力だった。そう自分に言い聞かせないと、罪悪感がすごい。
「あの国に行ってから、シドウは具合悪くなった。やられたらやり返す!」
「さすがです、琥珀王」
「おう! 邪魔するぞ。昨日は派手にやったな、今度は我も混ぜてくれ」
シェンが窓から入り込む。絶句した僕は注意するのも忘れて、彼らを凝視した。魔族と古龍、どちらも攻撃的な種族だ。琥珀がしたことが異常だと思ってない。もしかして僕がおかしいのか? この世界で異端者なのかも。
「シドウ、具合悪い? もっとやっつけてくる?」
『やっつけなくていいよ』
次からはやっつける前に相談して欲しい。だがそう願ったら、琥珀は素直に受け止めて律儀に守ろうとする。その結果、危害を加えられても反撃しないかも知れない。あれこれ考えたら何も言えなくて、今日の襲撃を止めるだけに留めた。
「琥珀王の名も広まったし、これで他の国は動かないだろ」
満足げなシェンの言葉に、結果よければすべて良しと自分を納得させた。早くこの世界の考え方に染まらないと、僕が辛い。優しく撫でる琥珀が僕を抱き寄せた。
「シドウは僕のお嫁さん、僕が守るんだよ」
『あ、うん。お願いします』
嬉しそうに笑う琥珀を見ながら、彼が幼子であることに心の底から感謝した。成人してたら、襲われる心配しないといけなかったし。しばらく家族ごっこしながら……うん、琥珀が幸せならいいや。基準をすべて一点に絞ることにした。
11
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる