【完結】勇者に折られた魔王のツノは、幼児の庇護者になりました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

文字の大きさ
78 / 82

78.勝手に城に住み着く奴が多過ぎる

しおりを挟む
 宣戦布告にしか見えない騒動から3年――。

 琥珀王に逆らう恐怖を目の当たりにした人間は、すっかり大人しくなった。現時点で新たな勇者が生まれない。世界のことわりを管理する古龍シェンによれば、琥珀はイレギュラーだった。

 現時点で魔王ではないので、勇者の討伐対象にならない。さらに琥珀が王になっても他種族への侵略を行っていないため、理は反応しなかった。最強のお子様は野放し状態なのだ。

「そんなことないさ、シドウがちゃんと管理してるからな」

「ふむ。琥珀王はシドウ殿には従うからな」

 バルテルとシェンは酒を飲みながら、僕を肴にする。お前ら、他人の家に入り込んで図々しいぞ。酒はバルテルが、ツマミの干し肉をシェンが持ち込んだ宴会は、非常に盛り上がっている。

「おう! こっちの酒もどうだ?」

「俺は明日休むぞ」

 当然のように上がり込んだ森人達は、好き勝手な場所で集団を作って飲み会をする。琥珀城の一階に風呂を作ったのがいけなかったのか。最近では上階に住み着く者も出てきた。ツリーハウスの文化が廃れて、この城に全員居住する日も近い気がする。

『なんでこうなったんだ?』

「琥珀王は人気がありますからね。それにシドウ、あなたも森人に好まれるタイプですよ」

『え? そんなの初めて聞いたけど』

 森人は基本的に他種族と争うことをしない。それは穏やかという性質以外に、面倒だからの部分が強いのだとか。その面倒ごとを一手に引き受ける僕は、彼らにとって救世主らしい。

 確かにこの集落に来て風呂文化を作り、魔族の干渉を排除した。人族の宣戦布告も叩きのめしたし、新しい料理を伝え、狩りの道具も開発したけど。前世の知識チートと琥珀の魔力チートによる恩恵が大きい。僕は異世界人だったんだから。

「異世界人である時点で、平凡はあてはまりませんね」

 くすくす笑うベリアルに諭され、それもそうかと笑った。母猫ニーが大きなお腹を揺らしながら、ベリアルの膝に飛び乗る。3匹の子猫を育て終え、ついでに僕の子狼も育てたニーはまた妊娠した。魔猫の子ではないかと噂されているのは、腹が異常に膨らんだためだ。

 魔猫は体が大きい猫だから、赤子も大きいのかも知れない。先輩ママの貫禄たっぷりに腹を撫でさせ、あちこちで餌をもらい歩く。逞しい彼女は今も琥珀にとって母親に近い存在だった。

「ニー、もうすぐ産まれるね」

 人間から献上された毒入り菓子をぼりぼり齧りながら、琥珀はけろりとした顔でこちらに寄ってくる。

『琥珀、欠片を落とすから座って食べて』

「わかった」

 少し離れた場所に大人しく座る。食べ終えたら魔法で浄化して、食べ残しの粉を綺麗に消し去った。まったく毒が効かない上、毒のほろ苦さが癖になった琥珀は、献上される毒入り菓子を平然と食べる。子猫が産まれたら外で食べるように指導しなくては。

 間違えて粉を舐めたり、食べ残しを齧る事態になれば惨事だった。

「ところで、琥珀王。人間への警告はどうなさるのですか?」

 服従したくせに毒入り菓子を贈ってくる彼らに対し、ベリアルはお怒りらしい。まあ、主君に毒を盛る属国がいたら、不満に思うのが普通だろう。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います

あきた
ファンタジー
明治大正風味のファンタジー恋愛もの。 化物みたいな能力を持ったせいでいじめられていたキイロは、強引に知らない家へ嫁入りすることに。 所が嫁入り先は火事だし、なんか子供を拾ってしまうしで、友人宅へ一旦避難。 親もいなさそうだし子供は私が育てようかな、どうせすぐに離縁されるだろうし。 そう呑気に考えていたキイロ、ところが嫁ぎ先の夫はキイロが行方不明で発狂寸前。 実は夫になる『薄氷の君』と呼ばれる銀髪の軍人、やんごとなき御家柄のしかも軍でも出世頭。 おまけに超美形。その彼はキイロに夢中。どうやら過去になにかあったようなのだが。 そしてその彼は、怒ったらとんでもない存在になってしまって。

処理中です...