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29.最悪のシナリオを避ける
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集まった顔ぶれを確認し、カレンデュラは切り出した。
「物語に強制力があったと仮定し、隣国がホスタ王国ではなかった場合が、最悪のシナリオなの」
ティアレラの場合、カージナリス辺境伯領が攻め込まれている。国境を接するのはホスタ王国だが、実は別の国とも繋がっていた。国境のわずか一割程度だが、ホスタ王国の隣にあるエキナセア神聖国が食い込んでいる。
もし敵が神聖国だったら、カージナリス辺境伯家が滅ぼされた後、間違いなくリクニス国も崩壊する。この世界で宗教はさほど強い勢力ではないが、エキナセア神聖国は別だった。女神エキナセアを信奉し、他国の神々を否定する。
住民も狂信者と呼ぶレベルで女神に傾倒しており、依存状態だった。彼らが敵になれば、面倒なことになる。隣国がホスタ王国以外にならないよう、確定させる必要があった。勝ち目のある相手を、匿名から実名にすることで、物語の強制力を潰す。
カレンデュラは不安をすべて吐き出し、彼らの反応を窺う。クレチマスの知るアニメの原作小説は、後半で独立した。領地を一つの小国として立ち上げ、周囲と距離を置いた形だ。タンジー公爵家の領地は国土の北側を縦断する形になっており、一部が神聖国と接していた。
「現時点で、考えにくい」
国境を接しているからこそ、タンジー公爵家はエキナセア神聖国の情報を握っている。それを公開した。コルジリネにチラリと視線を向けたものの、クレチマスが言い淀むことはなかった。
神聖国で内紛が起き、上位の神官による権力争いが激化している。現時点で、他国に攻め込む余裕はないだろう。
クレチマスの情報に、コルジリネも握る情報を一つ返した。日本繋がりで信用したクレチマスへの、心ばかりの礼だった。
「神聖国の内紛は簡単に終わらない。そのように仕向けたのは父上だからな」
セントーレア帝国の皇帝が動いた。仕掛けは大掛かりだが、しっかり準備されている。抜け道を残さぬよう、何度も練った作戦だと明かした。
「つまり……ホスタ王国を物語の隣国として確定可能なのね」
「ああ、父上にそんなつもりはなかったと思うが」
苦笑いするコルジリネによれば、一人の侯爵令嬢の入信が発端らしい。エキナセア神聖国の神官が、帝国の侯爵令嬢を入信させて操ろうとした。帝国の貴族を切り崩そうと画策したことへの報復。
偶然にも、それがリクニス国にとって幸運をもたらした。敵国がホスタ王国に確定できる。
「ほっとしたわ、これで余計な心配をしなくても済むもの」
嫁ぐから関係ないと思ってみても、やはり母国だ。生まれ育った土地、優しい人々、家族、友人達。彼らが犠牲になる未来を、素知らぬ顔で流すことはできなかった。
「役に立てたかな? 我が最愛の姫」
「ええ、とても助かりますわ。大好きな皇太子殿下」
軽口のように確認しあい、二人は微笑んだ。ティアレラも安堵の表情を浮かべる。
「よかった、ホスタ王国なら対応が間に合います」
じっと考え込んでいたクレチマスが、ぼそっと指摘した。
「内通者を洗い出して処分すれば、かなり有利に交渉を進められる、か」
「ええ、交渉で済むことを祈りましょう」
にっこり笑うカレンデュラに、三人は心の中で同じ思いを抱いた。おそらく、交渉だけで済ます気はないだろう、と。
「物語に強制力があったと仮定し、隣国がホスタ王国ではなかった場合が、最悪のシナリオなの」
ティアレラの場合、カージナリス辺境伯領が攻め込まれている。国境を接するのはホスタ王国だが、実は別の国とも繋がっていた。国境のわずか一割程度だが、ホスタ王国の隣にあるエキナセア神聖国が食い込んでいる。
もし敵が神聖国だったら、カージナリス辺境伯家が滅ぼされた後、間違いなくリクニス国も崩壊する。この世界で宗教はさほど強い勢力ではないが、エキナセア神聖国は別だった。女神エキナセアを信奉し、他国の神々を否定する。
住民も狂信者と呼ぶレベルで女神に傾倒しており、依存状態だった。彼らが敵になれば、面倒なことになる。隣国がホスタ王国以外にならないよう、確定させる必要があった。勝ち目のある相手を、匿名から実名にすることで、物語の強制力を潰す。
カレンデュラは不安をすべて吐き出し、彼らの反応を窺う。クレチマスの知るアニメの原作小説は、後半で独立した。領地を一つの小国として立ち上げ、周囲と距離を置いた形だ。タンジー公爵家の領地は国土の北側を縦断する形になっており、一部が神聖国と接していた。
「現時点で、考えにくい」
国境を接しているからこそ、タンジー公爵家はエキナセア神聖国の情報を握っている。それを公開した。コルジリネにチラリと視線を向けたものの、クレチマスが言い淀むことはなかった。
神聖国で内紛が起き、上位の神官による権力争いが激化している。現時点で、他国に攻め込む余裕はないだろう。
クレチマスの情報に、コルジリネも握る情報を一つ返した。日本繋がりで信用したクレチマスへの、心ばかりの礼だった。
「神聖国の内紛は簡単に終わらない。そのように仕向けたのは父上だからな」
セントーレア帝国の皇帝が動いた。仕掛けは大掛かりだが、しっかり準備されている。抜け道を残さぬよう、何度も練った作戦だと明かした。
「つまり……ホスタ王国を物語の隣国として確定可能なのね」
「ああ、父上にそんなつもりはなかったと思うが」
苦笑いするコルジリネによれば、一人の侯爵令嬢の入信が発端らしい。エキナセア神聖国の神官が、帝国の侯爵令嬢を入信させて操ろうとした。帝国の貴族を切り崩そうと画策したことへの報復。
偶然にも、それがリクニス国にとって幸運をもたらした。敵国がホスタ王国に確定できる。
「ほっとしたわ、これで余計な心配をしなくても済むもの」
嫁ぐから関係ないと思ってみても、やはり母国だ。生まれ育った土地、優しい人々、家族、友人達。彼らが犠牲になる未来を、素知らぬ顔で流すことはできなかった。
「役に立てたかな? 我が最愛の姫」
「ええ、とても助かりますわ。大好きな皇太子殿下」
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「よかった、ホスタ王国なら対応が間に合います」
じっと考え込んでいたクレチマスが、ぼそっと指摘した。
「内通者を洗い出して処分すれば、かなり有利に交渉を進められる、か」
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にっこり笑うカレンデュラに、三人は心の中で同じ思いを抱いた。おそらく、交渉だけで済ます気はないだろう、と。
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