89 / 100
89.思いつきは周囲を巻き込み
しおりを挟む
リクニス国で盛り上がった結婚騒動は、周辺国にピンク色を撒き散らした。小国の中には、便乗して恩恵に与ろうとするところも現れる。騒動はセントーレア帝国に、いち早く届いた。
「……コルジリネの嫁は変わり者だな」
「せめてやり手と言ってください」
会議の場で持ち上がった議題に、今回の騒動が足されていた。目を通す貴族の反応は概ね好評だ。国の施策として、一定期間に結婚式を集中させるのはどうかと、議案提起されるほどだった。
結婚式がバラつくことで、王侯貴族はあちこちへ移動した。辺境伯が結婚するなら辺境へ、中央貴族が結びつくなら帝都へ集まる。それに加えて夏は避暑地、冬は温暖な領地へと民族大移動は複数回発生した。
その都度、周辺領地が潤うので、移動自体は歓迎される。問題点があるとすれば、貴族が一カ所に集中することの弊害だった。一部の領地が恩恵を享受し、その期間は他方向の商売が滞る。金を落とす貴族は、兵や騎士、使用人を連れて移動するためだ。
偏る経済を調整するため、課税率を変えたりと対策を行うが、焼け石に水だった。そんな中、今回の結婚ブームは新しい集客の方法として認識される。今まで避暑などの恩恵に与れなかった地域で、結婚式を行ったらどうか。
祭りも開催できる、と貴族は盛り上がった。やはり領地が廃れていくのは悲しいし、税収の減少は生活の逼迫に直結する。回避しようと考えるのは、領主なら当然だった。
「未来の皇妃殿下は、素晴らしいお方ですな」
話がまとまると、避暑地の隣の領地を治める侯爵が満面の笑みを浮かべる。海沿いの廃神殿を整備し、式を挙げる会場を作るらしい。
コルジリネも、最愛の姫を褒められて悪い気はしない。本人の知らぬ場で勝手に評価が上がったが、下がるよりマシだろう。皇帝はにやりと笑い、結婚式の時期を種蒔きの前と定めた。
リクニス国は収穫後のお祭りと一緒に行うらしく、半年ずれている。セントーレア帝国の花祭りは有名で、観光客も多かった。その人々を、結婚式に絡めて長期滞在させる計画のようだ。
若い世代の思いつきを、年配者が補正して支える。理想の形で、新しい習慣が生まれようとしていた。
「俺の結婚式も、向こうでお披露目式をしてから……花祭りの時期に帝国で行います」
リクニス国で先にお披露目をする。誰かが抗議すると思ったが、誰も反対しなかった。ほっとするコルジリネは気づいていない。
皇帝が裏で手を回し、貴族の反論を潰し終えた後だということを。世界は綺麗事だけで動かない。それを知るには、コルジリネはまだ若かった。
「……コルジリネの嫁は変わり者だな」
「せめてやり手と言ってください」
会議の場で持ち上がった議題に、今回の騒動が足されていた。目を通す貴族の反応は概ね好評だ。国の施策として、一定期間に結婚式を集中させるのはどうかと、議案提起されるほどだった。
結婚式がバラつくことで、王侯貴族はあちこちへ移動した。辺境伯が結婚するなら辺境へ、中央貴族が結びつくなら帝都へ集まる。それに加えて夏は避暑地、冬は温暖な領地へと民族大移動は複数回発生した。
その都度、周辺領地が潤うので、移動自体は歓迎される。問題点があるとすれば、貴族が一カ所に集中することの弊害だった。一部の領地が恩恵を享受し、その期間は他方向の商売が滞る。金を落とす貴族は、兵や騎士、使用人を連れて移動するためだ。
偏る経済を調整するため、課税率を変えたりと対策を行うが、焼け石に水だった。そんな中、今回の結婚ブームは新しい集客の方法として認識される。今まで避暑などの恩恵に与れなかった地域で、結婚式を行ったらどうか。
祭りも開催できる、と貴族は盛り上がった。やはり領地が廃れていくのは悲しいし、税収の減少は生活の逼迫に直結する。回避しようと考えるのは、領主なら当然だった。
「未来の皇妃殿下は、素晴らしいお方ですな」
話がまとまると、避暑地の隣の領地を治める侯爵が満面の笑みを浮かべる。海沿いの廃神殿を整備し、式を挙げる会場を作るらしい。
コルジリネも、最愛の姫を褒められて悪い気はしない。本人の知らぬ場で勝手に評価が上がったが、下がるよりマシだろう。皇帝はにやりと笑い、結婚式の時期を種蒔きの前と定めた。
リクニス国は収穫後のお祭りと一緒に行うらしく、半年ずれている。セントーレア帝国の花祭りは有名で、観光客も多かった。その人々を、結婚式に絡めて長期滞在させる計画のようだ。
若い世代の思いつきを、年配者が補正して支える。理想の形で、新しい習慣が生まれようとしていた。
「俺の結婚式も、向こうでお披露目式をしてから……花祭りの時期に帝国で行います」
リクニス国で先にお披露目をする。誰かが抗議すると思ったが、誰も反対しなかった。ほっとするコルジリネは気づいていない。
皇帝が裏で手を回し、貴族の反論を潰し終えた後だということを。世界は綺麗事だけで動かない。それを知るには、コルジリネはまだ若かった。
182
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜
白崎りか
ファンタジー
「悪女オリヴィア! 白い結婚を神官が証明した。婚姻は無効だ! 私は愛するフローラを王妃にする!」
即位したばかりの国王が、宣言した。
真実の愛で結ばれた王とその恋人は、永遠の愛を誓いあう。
だが、そこには大きな秘密があった。
王に命じられた神官は、白い結婚を偽証していた。
この時、悪女オリヴィアは娘を身ごもっていたのだ。
そして、光の精霊王の契約者となる予言の王女を産むことになる。
第一部 貴族学園編
私の名前はレティシア。
政略結婚した王と元王妃の間にできた娘なのだけど、私の存在は、生まれる前に消された。
だから、いとこの双子の姉ってことになってる。
この世界の貴族は、5歳になったら貴族学園に通わないといけない。私と弟は、そこで、契約獣を得るためのハードな訓練をしている。
私の異母弟にも会った。彼は私に、「目玉をよこせ」なんて言う、わがままな王子だった。
第二部 魔法学校編
失ってしまったかけがえのない人。
復讐のために精霊王と契約する。
魔法学校で再会した貴族学園時代の同級生。
毒薬を送った犯人を捜すために、パーティに出席する。
修行を続け、勇者の遺産を手にいれる。
前半は、ほのぼのゆっくり進みます。
後半は、どろどろさくさくです。
小説家になろう様にも投稿してます。
異世界に行った、そのあとで。
神宮寺あおい@1/23先視の王女の謀発売
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
さようなら、私の初恋
しょくぱん
恋愛
「さよなら、私の初恋。……もう、全部お返しします」
物心ついた時から、彼だけが世界のすべてだった。 幼馴染の騎士団長・レオンに捧げた、十数年の純粋な初恋。 彼が「無敵」でいられたのは、アリアが無自覚に与え続けた『治癒の加護』があったから。
だが婚約直前、アリアは知ってしまう。 彼にとって自分は、仲間内で競い合う「賭けの対象」でしかなかったことを。
「あんな女、落とすまでのゲームだよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる