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06.口がくっついたら口付け
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僕がいきなり消えたから、お母さんはすぐにお父さんを呼んだ。いっぱい探してくれたの。隣の山にあるお祖父ちゃんの洞窟にも行ったんだって。
「僕は人間に呼ばれちゃったの」
「応えたの?」
「ううん。無理やり」
事情をお母さんに説明する。お父さんはベル様とお話があるんだ。僕はいい子だからちゃんと待っていられるよ。お母さんが僕を抱っこして、頬を擦り寄せた。人の姿をしていると、細かい作業が出来るんだよ。僕も早く覚えたい。
ベル様も人の形をしている。背が高くてがっちりした筋肉があって、長い黒い髪なの。人間の腕が太いゴツい奴と違って、細っそりしてるかも。硬い筋肉はあるけど、動物と同じで無駄じゃなかった。人間は変なところに、使わない筋肉つけてる人がいるんだよね。
「どうやって出会ったの?」
「ベル様? えっとね、僕は人間に捕まったの。殺すぞって言われて、切られちゃったんだ」
指の先……説明する前に、お母さんが悲鳴をあげた。体中を撫でてくる。擽ったくて笑ったら、どこをケガしたのかと怖い顔をする。
「この指だよ。でもベル様が治してくれた」
もう傷はない。痛いのも消えた。ベル様はすごい人なんだよ。お肌も黒くて艶があって、魔王様と同じ金色の目をしている。お顔も綺麗だし、僕に優しいから大好きだった。
身振り手振りで説明を終えると、お母さんは頬を擦り寄せて強く抱っこした。苦しいくらいだけど、嬉しくて僕も手を伸ばす。ドラゴンの手は短くて、お母さんの背中まで届かなかった。
「良かったわ。人間は危険な生き物よ。大きくなるまで……いえ、大きくなっても近づいたらダメよ」
「うん。ベル様と一緒にいる」
「……あのお方が大好きなのね」
「大好き!」
腕の力を緩めて頭を撫でるお母さんは、変な顔をした。残念そう……でも怒ってない。悲しいのともちょっと違うみたいだ。
「これから義父殿のところへ向かうが……危険だから一緒に行こう」
ベル様とお父さんのお話が終わって、手招きされた。お父さんはお祖父ちゃんの家に行く。僕とお母さんも一緒、ベル様は? 首を傾げて見つめたら、笑って手を出してくれた。くっと掴んだ僕を、軽々と抱き上げる。
「安心しろ、一緒だ」
「やった! お祖父ちゃんは黒いんだよ。お父さんより大きくて、こんななの」
両手を広げて説明した。本当はベル様の髪と違って、真っ黒じゃない。濃い灰色なんだけど、黒く見える。お話しする僕を嬉しそうに見るベル様は、ちゅっと音をさせて額に唇を当てた。
「うわっ、今のなぁに?」
「口付けだ」
「口付け……口をくっつけるから?」
「賢いな、ウェパル」
やっぱり、背中がぞわっとする。でも嫌な感じじゃなくて、気持ちいいの延長だった。ぶるっと身を震わせ、僕は背伸びをする。口をくっつけたら、口付け……あとちょっと。
「何を……っ?!」
ぐらぐらする僕を抱き直そうとしたベル様の顔が近づいて、口同士がくっついた。ベル様も僕も驚いたけど、お母さんの大声が一番びっくりした。
「きゃぁぁあ! 嘘っ、もう嫁も同然よ」
「いや、まだだ。あの子は幼いんだ」
ぶつぶつ文句を言うお父さんが、お母さんの尻尾にビシバシ背中を叩かれていた。楽しそうだな。僕の尻尾を揺らしたけど、ベル様の腕にぴちっと小さな音をさせただけ。
ぎちぎちと変な動きで僕に目を合わせたベル様は「さすが我が伴侶だ。俺の隙をつくとは」と褒めてくれた。好きってつつくの?
「僕は人間に呼ばれちゃったの」
「応えたの?」
「ううん。無理やり」
事情をお母さんに説明する。お父さんはベル様とお話があるんだ。僕はいい子だからちゃんと待っていられるよ。お母さんが僕を抱っこして、頬を擦り寄せた。人の姿をしていると、細かい作業が出来るんだよ。僕も早く覚えたい。
ベル様も人の形をしている。背が高くてがっちりした筋肉があって、長い黒い髪なの。人間の腕が太いゴツい奴と違って、細っそりしてるかも。硬い筋肉はあるけど、動物と同じで無駄じゃなかった。人間は変なところに、使わない筋肉つけてる人がいるんだよね。
「どうやって出会ったの?」
「ベル様? えっとね、僕は人間に捕まったの。殺すぞって言われて、切られちゃったんだ」
指の先……説明する前に、お母さんが悲鳴をあげた。体中を撫でてくる。擽ったくて笑ったら、どこをケガしたのかと怖い顔をする。
「この指だよ。でもベル様が治してくれた」
もう傷はない。痛いのも消えた。ベル様はすごい人なんだよ。お肌も黒くて艶があって、魔王様と同じ金色の目をしている。お顔も綺麗だし、僕に優しいから大好きだった。
身振り手振りで説明を終えると、お母さんは頬を擦り寄せて強く抱っこした。苦しいくらいだけど、嬉しくて僕も手を伸ばす。ドラゴンの手は短くて、お母さんの背中まで届かなかった。
「良かったわ。人間は危険な生き物よ。大きくなるまで……いえ、大きくなっても近づいたらダメよ」
「うん。ベル様と一緒にいる」
「……あのお方が大好きなのね」
「大好き!」
腕の力を緩めて頭を撫でるお母さんは、変な顔をした。残念そう……でも怒ってない。悲しいのともちょっと違うみたいだ。
「これから義父殿のところへ向かうが……危険だから一緒に行こう」
ベル様とお父さんのお話が終わって、手招きされた。お父さんはお祖父ちゃんの家に行く。僕とお母さんも一緒、ベル様は? 首を傾げて見つめたら、笑って手を出してくれた。くっと掴んだ僕を、軽々と抱き上げる。
「安心しろ、一緒だ」
「やった! お祖父ちゃんは黒いんだよ。お父さんより大きくて、こんななの」
両手を広げて説明した。本当はベル様の髪と違って、真っ黒じゃない。濃い灰色なんだけど、黒く見える。お話しする僕を嬉しそうに見るベル様は、ちゅっと音をさせて額に唇を当てた。
「うわっ、今のなぁに?」
「口付けだ」
「口付け……口をくっつけるから?」
「賢いな、ウェパル」
やっぱり、背中がぞわっとする。でも嫌な感じじゃなくて、気持ちいいの延長だった。ぶるっと身を震わせ、僕は背伸びをする。口をくっつけたら、口付け……あとちょっと。
「何を……っ?!」
ぐらぐらする僕を抱き直そうとしたベル様の顔が近づいて、口同士がくっついた。ベル様も僕も驚いたけど、お母さんの大声が一番びっくりした。
「きゃぁぁあ! 嘘っ、もう嫁も同然よ」
「いや、まだだ。あの子は幼いんだ」
ぶつぶつ文句を言うお父さんが、お母さんの尻尾にビシバシ背中を叩かれていた。楽しそうだな。僕の尻尾を揺らしたけど、ベル様の腕にぴちっと小さな音をさせただけ。
ぎちぎちと変な動きで僕に目を合わせたベル様は「さすが我が伴侶だ。俺の隙をつくとは」と褒めてくれた。好きってつつくの?
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