【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(りょうが)今年は7冊!

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16.新しい魔王陛下の誕生に忠誠を

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 魔王城は人間に壊された。だから、ボロボロの瓦礫が残っている。ここに来ると悲しくなるって、お祖父ちゃんが言っていた。僕はお話で聞いただけなのに、やっぱり悲しいよ。直接嫌な思いをしたお祖父ちゃんは、もっと悲しいよね。

 昔、勇者じゃなくて、偉そうな人がたくさんの兵隊で押し寄せたの。魔王様は頑張って戦ったけれど、幼い子竜を盾にされて負けてしまった。このお話はお母さんが教えてくれた。そのあと、お祖母ちゃんにも聞いたよ。

 人間は卑怯だから、絶対に信じてはいけない。子どもを人質にするのは、魔族にとって最低の行為だった。それを平然としただけじゃなくて、魔王様の後で子竜も殺されちゃったんだ。それが僕のお兄ちゃん、僕の半分の大きさの頃だよ。お母さんはすごく泣いて、しばらくご飯も食べられなかった。

 お父さんとお母さんは、それから長い間、僕を生むか迷ったの。考えて悩んで、それで生まれたから僕は大事にしてもらった。きっとお兄ちゃんの分まで愛されてる。

 抱っこしたベル様の腕で、そんなお話をした。お祖母ちゃんは聞いていないフリをして、空を眺めている。遅れて追いかけるお祖父ちゃんを待ってるんだね。

 お父さんはお母さんを促して歩いた。泣いているお母さんは、ここに来るとお兄さんのことを思い出しちゃうの。それに魔王様も亡くなってるし。

「なるほど。ウェパルは二人分、幸せにならないといけないな」

「うん、頑張る」

 お兄ちゃんの分も幸せになる。そうしたら、お母さんはもう泣かないよね。笑っていてほしいな。尻尾を振る僕を抱いたベル様は、お父さんの後ろをついて行った。壊れたお城の破片をいくつも潜って、ようやく広場が見える。

 昔はここに魔王様の椅子があった。今は壊れて半分に割れている。その椅子の周囲にいっぱい集まっていた。吸血鬼のおじさんに狼獣人のおばあちゃん、耳の長い綺麗なお姉さんと、骸骨を連れたお兄さん。あれ? 大きい人がいない。

「遅れた」

 瓦礫の下を潜れない巨人のお爺さんが、のそっと上から顔を見せた。他にもいるけど、僕は直接お話ししたことがない人なの。魔族の種類はいっぱいあって、夢の中で強い種族や、尻尾のある人もいるんだよ。

 今日はほとんどの種族が集まるって聞いていた。彼らはベル様を見て、ざわざわと騒がしくなる。少しして、半分くらいは膝を突いた。残った人は迷ってるみたいだ。

「ドラゴンは決めたのか?」

 吸血鬼のおじさんが尋ねると、お祖父ちゃんは頷いた。

「ああ、我らは新たな魔王陛下に従う」

 わっと騒がしくなった人達に、ベル様は静かに声をかけた。びっくりするくらい落ち着いた感じで、声も大きくないの。皆がなぜか話すのをやめた。上から押される感じがするけど、これってベル様かな?

「こことは別の世界の魔王だったが、呼ばれた以上は魔族を守る。俺はこの世界で伴侶を見つけた。この子が脅かされない世界を保つのが、夫として俺の役割だ。従えぬ者は言え。裏切りは許さんが、離脱は自由にしろ」

 難しい。離脱と自由と裏切りって何? 脅かすとか保つとかも分からない。でもベル様だから正しいと思う。にこにこと腕に頬擦りしたら、吸血鬼のおじさんが笑った。口を開けて大きな声で、楽しそう。

「はははっ、これは勝てない。番を得た魔王陛下に忠誠を」

「我らが王の誕生に祝いを」

 吸血鬼の人達が声を揃えて、一斉に頭を下げた。揃っててすごい。他の魔族の人はどうするんだろう。
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