18 / 82
18.魔族の一番の心配事
しおりを挟む
魔族が一堂に集まるのは珍しくて、ついでだからと話し合いがいくつも始まった。揉めていた地域もあるし、人間との戦いで手を組む話も出る。
持ちかけられた相談を、ベル様は簡単そうに振り分けた。それぞれ得意な種族が行えばいい。すべての手柄を王が独占する国はすぐに滅びる、だって。耳の長いお兄さんは手を叩いて喜ぶし、巨人も大きく頷いた。
魔王様になったベル様は、魔族の象徴になる。だから一番偉い人で、人間に狙われる人だ。狙われるのは怖いと言ったら、一番強い者が弱い者を守るのだと説明された。首を傾げる。意味がよくわからなかった。
僕はまだ弱いから、ベル様が守ってくれる。そう言い直されて、なるほどと理解した。僕が出来ないことをベル様がする。ベル様が苦手なことも、僕が覚えればいい。魔族はそうして補い合うの。
手がなくて翼になってる人は、細かい作業が出来ない。でも小人が代わりに作業をしてくれる。でも小人は遠くまで移動できないから、今日みたいな日は翼の手をした人に運んでもらう。お互い様だった。
「人間はそういった助け合いを忘れた種族だ。絶対に近づくなよ」
吸血鬼のおじさんに念押しされたけど、困ったな。僕がベル様と出会ったのは、いきなり知らない人間に召喚されたから。たぶん……呼んだ人はいなかったけど、人間が呼んだんだと思う。そういうのは、どうやって断ればいいんだろう。
ベル様の耳に口を近づけて、こそこそと相談する。真剣に聞いているベル様の耳を、ぺろりと舐めた。
「こらっ! 悪さをするな」
「今の、悪いこと? 口付けだよ」
「……そうだな、口付けは悪くない。だが今は人前だぞ」
言われて気づいた。吸血鬼のおじさんが真っ赤になって、横を向いている。見ないフリしたのかも。あとで頭をヨシヨシしてあげなくちゃ。
「ごめんなさい、次はいない時にする」
「そうしなさい」
ベル様が頷いたら、お父さんが何か叫んで、お母さんの尻尾に叩かれた。よく聞こえなかったけど、僕に話しかけたのかな?
「魔族で一番の問題は何だ?」
相談が一段落した明け方、ベル様はそう尋ねた。僕は途中で寝ちゃったり起きたりしたから、全部は覚えていない。今、目が覚めたら新しいお話が始まっていた。
「出産率の低下と人間による子どもの誘拐です」
「魔力量の低下が一番問題じゃないか?」
「そうだ。魔力が強ければ、出産率も上がるんだ」
「子どもも取り返せるし……そもそも奪われなくて済む」
種族関係なく、同じ悩みがあった。黙って聞いた後、ベル様は小さな声で何かを呟く。僕が知らない言語だから、ベル様がいた世界の言葉だと思う。綺麗な音で繰り返される部分が、歌みたいで好き。
ぶわっと……ベル様から何かが出てきた。溢れちゃった感じで、広がっていく。驚いた顔をする魔族の上に降り注いだ。きらきらした印象があるのに、色は見えない。
「魔力量の底上げは簡単だ。今の呪文一つで二割は増加しただろう」
二割って、どのくらいだろう。両手の指を広げて数えてみるが、よく分からない。吸血鬼のおじさんが驚いてるから、きっといっぱいだよね。
喜ぶ声が湧き上がり、ベル様を褒め称える響きに変わった。皆、魔王様とか魔王陛下と呼ぶ。カルティノスという単語をつけるのは、最高の意味だった。万歳とか、ありがとうとか。いっぱい混じった魔族の言語なんだ。
「子どもの誘拐対策は、結界を張る。範囲を指定するまで待て」
ベル様が命じるように告げると、賞賛の声はもっと大きくなった。僕も嬉しいな。
持ちかけられた相談を、ベル様は簡単そうに振り分けた。それぞれ得意な種族が行えばいい。すべての手柄を王が独占する国はすぐに滅びる、だって。耳の長いお兄さんは手を叩いて喜ぶし、巨人も大きく頷いた。
魔王様になったベル様は、魔族の象徴になる。だから一番偉い人で、人間に狙われる人だ。狙われるのは怖いと言ったら、一番強い者が弱い者を守るのだと説明された。首を傾げる。意味がよくわからなかった。
僕はまだ弱いから、ベル様が守ってくれる。そう言い直されて、なるほどと理解した。僕が出来ないことをベル様がする。ベル様が苦手なことも、僕が覚えればいい。魔族はそうして補い合うの。
手がなくて翼になってる人は、細かい作業が出来ない。でも小人が代わりに作業をしてくれる。でも小人は遠くまで移動できないから、今日みたいな日は翼の手をした人に運んでもらう。お互い様だった。
「人間はそういった助け合いを忘れた種族だ。絶対に近づくなよ」
吸血鬼のおじさんに念押しされたけど、困ったな。僕がベル様と出会ったのは、いきなり知らない人間に召喚されたから。たぶん……呼んだ人はいなかったけど、人間が呼んだんだと思う。そういうのは、どうやって断ればいいんだろう。
ベル様の耳に口を近づけて、こそこそと相談する。真剣に聞いているベル様の耳を、ぺろりと舐めた。
「こらっ! 悪さをするな」
「今の、悪いこと? 口付けだよ」
「……そうだな、口付けは悪くない。だが今は人前だぞ」
言われて気づいた。吸血鬼のおじさんが真っ赤になって、横を向いている。見ないフリしたのかも。あとで頭をヨシヨシしてあげなくちゃ。
「ごめんなさい、次はいない時にする」
「そうしなさい」
ベル様が頷いたら、お父さんが何か叫んで、お母さんの尻尾に叩かれた。よく聞こえなかったけど、僕に話しかけたのかな?
「魔族で一番の問題は何だ?」
相談が一段落した明け方、ベル様はそう尋ねた。僕は途中で寝ちゃったり起きたりしたから、全部は覚えていない。今、目が覚めたら新しいお話が始まっていた。
「出産率の低下と人間による子どもの誘拐です」
「魔力量の低下が一番問題じゃないか?」
「そうだ。魔力が強ければ、出産率も上がるんだ」
「子どもも取り返せるし……そもそも奪われなくて済む」
種族関係なく、同じ悩みがあった。黙って聞いた後、ベル様は小さな声で何かを呟く。僕が知らない言語だから、ベル様がいた世界の言葉だと思う。綺麗な音で繰り返される部分が、歌みたいで好き。
ぶわっと……ベル様から何かが出てきた。溢れちゃった感じで、広がっていく。驚いた顔をする魔族の上に降り注いだ。きらきらした印象があるのに、色は見えない。
「魔力量の底上げは簡単だ。今の呪文一つで二割は増加しただろう」
二割って、どのくらいだろう。両手の指を広げて数えてみるが、よく分からない。吸血鬼のおじさんが驚いてるから、きっといっぱいだよね。
喜ぶ声が湧き上がり、ベル様を褒め称える響きに変わった。皆、魔王様とか魔王陛下と呼ぶ。カルティノスという単語をつけるのは、最高の意味だった。万歳とか、ありがとうとか。いっぱい混じった魔族の言語なんだ。
「子どもの誘拐対策は、結界を張る。範囲を指定するまで待て」
ベル様が命じるように告げると、賞賛の声はもっと大きくなった。僕も嬉しいな。
149
あなたにおすすめの小説
僕を惑わせるのは素直な君
秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。
なんの不自由もない。
5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が
全てやって居た。
そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。
「俺、再婚しようと思うんだけど……」
この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。
だが、好きになってしまったになら仕方がない。
反対する事なく母親になる人と会う事に……。
そこには兄になる青年がついていて…。
いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。
だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。
自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて
いってしまうが……。
それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。
何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。
a life of mine ~この道を歩む~
野々乃ぞみ
BL
≪腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者≫
第二王子:ブライトル・モルダー・ヴァルマ
主人公の転生者:エドマンド・フィッツパトリック
【第一部】この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~
エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。
転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。
エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。
死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。
「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」
「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」
【第二部】この道を歩む~異文化と感情と、逃げられない運命のようなものと~
必死に手繰り寄せた運命の糸によって、愛や友愛を知り、友人たちなどとの共闘により、見事死亡フラグを折ったエドマンドは、原作とは違いブライトルの母国であるトーカシア国へ行く。
異文化に触れ、余り歓迎されない中、ブライトルの婚約者として過ごす毎日。そして、また新たな敵の陰が現れる。
二部は戦争描写なし。戦闘描写少な目(当社比)です。
全体的にかなりシリアスです。二部以降は、死亡表現やキャラの退場が予想されます。グロではないですが、お気を付け下さい。
闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったりします。
本編ド健全です。すみません。
※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。
※ 閑話休題以外は主人公視点です。
※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。
【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい
御堂あゆこ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。
生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。
地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。
転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。
※含まれる要素
異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛
※小説家になろうに重複投稿しています
異世界で聖男と呼ばれる僕、助けた小さな君は宰相になっていた
k-ing /きんぐ★商業5作品
BL
病院に勤めている橘湊は夜勤明けに家へ帰ると、傷ついた少年が玄関で倒れていた。
言葉も話せず、身寄りもわからない少年を一時的に保護することにした。
小さく甘えん坊な少年との穏やかな日々は、湊にとってかけがえのない時間となる。
しかし、ある日突然、少年は「ありがとう」とだけ告げて異世界へ帰ってしまう。
湊の生活は以前のような日に戻った。
一カ月後に少年は再び湊の前に現れた。
ただ、明らかに成長スピードが早い。
どうやら違う世界から来ているようで、時間軸が異なっているらしい。
弟のように可愛がっていたのに、急に成長する少年に戸惑う湊。
お互いに少しずつ気持ちに気づいた途端、少年は遊びに来なくなってしまう。
あの時、気持ちだけでも伝えれば良かった。
後悔した湊は彼が口ずさむ不思議な呪文を口にする。
気づけば少年の住む異世界に来ていた。
二つの世界を越えた、純情な淡い両片思いの恋物語。
序盤は幼い宰相との現実世界での物語、その後異世界への物語と話は続いていきます。
あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
【完結】僕はキミ専属の魔力付与能力者
みやこ嬢
BL
【2025/01/24 完結、ファンタジーBL】
リアンはウラガヌス伯爵家の養い子。魔力がないという理由で貴族教育を受けさせてもらえないまま18の成人を迎えた。伯爵家の兄妹に良いように使われてきたリアンにとって唯一安らげる場所は月に数度訪れる孤児院だけ。その孤児院でたまに会う友人『サイ』と一緒に子どもたちと遊んでいる間は嫌なことを全て忘れられた。
ある日、リアンに魔力付与能力があることが判明する。能力を見抜いた魔法省職員ドロテアがウラガヌス伯爵家にリアンの今後について話に行くが、何故か軟禁されてしまう。ウラガヌス伯爵はリアンの能力を利用して高位貴族に娘を嫁がせようと画策していた。
そして見合いの日、リアンは初めて孤児院以外の場所で友人『サイ』に出会う。彼はレイディエーレ侯爵家の跡取り息子サイラスだったのだ。明らかな身分の違いや彼を騙す片棒を担いだ負い目からサイラスを拒絶してしまうリアン。
「君とは対等な友人だと思っていた」
素直になれない魔力付与能力者リアンと、無自覚なままリアンをそばに置こうとするサイラス。両片想い状態の二人が様々な障害を乗り越えて幸せを掴むまでの物語です。
【独占欲強め侯爵家跡取り×ワケあり魔力付与能力者】
* * *
2024/11/15 一瞬ホトラン入ってました。感謝!
炎の精霊王の愛に満ちて
陽花紫
BL
異世界転移してしまったミヤは、森の中で寒さに震えていた。暖をとるために焚火をすれば、そこから精霊王フレアが姿を現す。
悪しき魔術師によって封印されていたフレアはその礼として「願いをひとつ叶えてやろう」とミヤ告げる。しかし無欲なミヤには、願いなど浮かばなかった。フレアはミヤに欲望を与え、いまいちど願いを尋ねる。
ミヤは答えた。「俺を、愛して」
小説家になろうにも掲載中です。
俺の妹は転生者〜勇者になりたくない俺が世界最強勇者になっていた。逆ハーレム(男×男)も出来ていた〜
陽七 葵
BL
主人公オリヴァーの妹ノエルは五歳の時に前世の記憶を思い出す。
この世界はノエルの知り得る世界ではなかったが、ピンク髪で光魔法が使えるオリヴァーのことを、きっとこの世界の『主人公』だ。『勇者』になるべきだと主張した。
そして一番の問題はノエルがBL好きだということ。ノエルはオリヴァーと幼馴染(男)の関係を恋愛関係だと勘違い。勘違いは勘違いを生みノエルの頭の中はどんどんバラの世界に……。ノエルの餌食になった幼馴染や訳あり王子達をも巻き込みながらいざ、冒険の旅へと出発!
ノエルの絵は周囲に誤解を生むし、転生者ならではの知識……はあまり活かされないが、何故かノエルの言うことは全て現実に……。
友情から始まった恋。終始BLの危機が待ち受けているオリヴァー。はたしてその貞操は守られるのか!?
オリヴァーの冒険、そして逆ハーレムの行く末はいかに……異世界転生に巻き込まれた、コメディ&BL満載成り上がりファンタジーどうぞ宜しくお願いします。
※初めの方は冒険メインなところが多いですが、第5章辺りからBL一気にきます。最後はBLてんこ盛りです※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる