【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(りょうが)今年は7冊!

文字の大きさ
25 / 82

25.お父さんが子どもみたいなの

しおりを挟む
「ウェパル、これはどうだ? ダメそうならこっちは?」

 お父さんがいっぱいご飯を並べる。溶岩の近くで焼いたお肉、まだ冷たい生のお肉、木の実……たくさん並んでるけど、どれも食べたくなかった。

 ベル様は何を食べたのかな? 僕があーんしなくても、美味しく食べた? それともお仕事で食べてなかったりして。いろいろ心配になってしまう。

 しょんぼりする僕の前で、お父さんががくりと崩れた。顎をぺたんと地面につけて、しくしくと泣き始める。

「お父さん?」

「可愛い息子と久しぶりのお泊まりなのに……」

 ご飯も食べないし、朝も早くから起きていた。寝転んでゴロゴロしたかった。お父さんが訴える内容を聞きながら、僕はペタペタと歩いた。お父さんが口を開けたら、僕は中に吸い込まれそう。そのくらい大きさが違うのに、子どもみたい。

「お父さん、焼いたのをあーんして」

「すぐ焼き直してくる!!」

 目の前にあるお肉は古いといって、また焼き始めた。すぐに火が通ったお肉を僕のところへ運んでくる。口先で温度を確かめ、小さく千切ってもらった。あーんと口を開ける。あんまりお腹空いてないけど、食べないとお父さんが泣いちゃうから。

 一応、火竜の中で一番偉い人なの。周りのドラゴンが驚いていた。だからお父さんの威厳を守ってあげないと。前に「ドラゴンは威厳が必要だ」ってお祖父ちゃんも言ってた。まだ威厳の意味は分からないけど、偉そうに見せる部分だと思う。

「お父さん……?」

 いつまでも口に入ってこないので、目を開けた。お肉はぶら下がっていて、ぶるぶる震えている。お父さんが口で咥えて運んだお肉を、手が掴んでいた。この黒い肌はベル様?!

「ベル様!」

「早起きだな、ウェパル」

 普通に挨拶したベル様は、握っていたお肉を離した。お父さんは顔に向かって飛んできた肉を、ぱくりと飲んだ。そのあと咳き込んでいる。

「まだ早朝……げほっ、早すぎ……うっ、ぐ!」

 ご飯はゆっくり食べないと、喉に詰まるってお母さんが話していた。これのことかな。お父さんが焼いたお肉はまだいっぱいあって、ベル様はその一つを選んで細かく切った。それを僕の口の前に差し出す。

「食事中だったのか。ほら」

「あーん」

 口に入れてよく噛んだ。お腹空いてないと思ったのに、すごく美味しい。もう一つ、また一つ。お肉を両手で掴んで齧る僕に、お父さんがそっとお肉を渡す。それも食べた。全部美味しい。

 苦しくなるまで食べて、汚れた手をお腹の鱗で拭く。それから近くにあったお肉を引っ張って、ベル様に渡した。

「ベル様も食べる?」

「そうだな、ウェパルが食べさせてくれるか?」

「うん」

 大きいお肉の上を爪で切って、ベル様のために焼く。ぺたぺた歩いて移動し、溶岩で焼いて戻った。ベル様は僕の手から食べて、ついでに手も舐める。美味しいって言ってくれた。

 往復する僕を見ていたお父さんが、溶岩を手で掴んで移動させた。近くなったので、ありがとうとお礼を言って使う。焼いたお肉をベル様が食べている間に、次のお肉をお父さんの口に入れた。

 だって、お父さんが子どもみたいに口開けて待ってるんだもん。溶岩の横に並んでるから、何度も入れたよ。大喜びして尻尾を振り回していた。

 すぐ帰るとお父さんが泣いちゃうから、夕方までお父さん達の巣でゆっくりする。僕はいいけど、ベル様は暑くないの? そう聞いたら、平気だって。魔王様は暑さにも強いんだね。
しおりを挟む
感想 56

あなたにおすすめの小説

【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。

カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。 異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。 ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。 そして、コスプレと思っていた男性は……。

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

完結·氷の宰相の寝かしつけ係に任命されました

BL
幼い頃から心に穴が空いたような虚無感があった亮。 その穴を埋めた子を探しながら、寂しさから逃げるようにボイス配信をする日々。 そんなある日、亮は突然異世界に召喚された。 その目的は―――――― 異世界召喚された青年が美貌の宰相の寝かしつけをする話 ※小説家になろうにも掲載中

異世界召喚チート騎士は竜姫に一生の愛を誓う

はやしかわともえ
BL
11月BL大賞用小説です。 主人公がチート。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 励みになります。 ※完結次第一挙公開。

a life of mine ~この道を歩む~

野々乃ぞみ
BL
 ≪腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者≫  第二王子:ブライトル・モルダー・ヴァルマ  主人公の転生者:エドマンド・フィッツパトリック 【第一部】この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~  エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。  転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。  エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。  死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。 「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」 「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」 【第二部】この道を歩む~異文化と感情と、逃げられない運命のようなものと~  必死に手繰り寄せた運命の糸によって、愛や友愛を知り、友人たちなどとの共闘により、見事死亡フラグを折ったエドマンドは、原作とは違いブライトルの母国であるトーカシア国へ行く。  異文化に触れ、余り歓迎されない中、ブライトルの婚約者として過ごす毎日。そして、また新たな敵の陰が現れる。  二部は戦争描写なし。戦闘描写少な目(当社比)です。 全体的にかなりシリアスです。二部以降は、死亡表現やキャラの退場が予想されます。グロではないですが、お気を付け下さい。 闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったりします。 本編ド健全です。すみません。 ※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。 ※ 閑話休題以外は主人公視点です。 ※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

炎の精霊王の愛に満ちて

陽花紫
BL
異世界転移してしまったミヤは、森の中で寒さに震えていた。暖をとるために焚火をすれば、そこから精霊王フレアが姿を現す。 悪しき魔術師によって封印されていたフレアはその礼として「願いをひとつ叶えてやろう」とミヤ告げる。しかし無欲なミヤには、願いなど浮かばなかった。フレアはミヤに欲望を与え、いまいちど願いを尋ねる。 ミヤは答えた。「俺を、愛して」 小説家になろうにも掲載中です。

処理中です...