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本編
第17話 痴女乱入ですわ!
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目の前におられる方は、長身ですが人に見えます。竜とは大きな身体を持ち、全身を鱗に覆われ、背に翼を持つ生き物ではありませんの? 絵本ではそう描かれていましたのに。
「ですが、鱗がありませんわ。翼も……」
「後で見せてやろう。背に乗せて飛んでも良いぞ。其方は我が妻になるのだから」
話が理解できず、さらに首をかしげました。この方は説明が苦手なのではないかしら。頭にまったく内容が入ってきませんわ。
さすがに失礼な言葉を飲み込み、もう一度説明をお願いしようとした時、バタンと乱暴に扉が開かれました。伯母様が戻られた大広間の扉ではなく、廊下に繋がる扉が悲鳴をあげて開きます。お客様がいらっしゃらなくても、このような無作法をする侍女は王宮におりません。
「テュフォンは、竜帝陛下でしょお? あたくしの、『最推し』じゃなぁい! 素敵、あたくしを迎えにきてくれたのねぇ」
耳障りな声で飛び込んだ痴女に、私を含め部屋にいた全員が同時に眉をひそめました。
お可哀そうなこと、多少どころでなく頭がおかしいみたいですわ。陛下の敬称を持つ異性を呼び捨て、訳の分からない単語を叫び、迎えに来たと縋る……貴族令嬢でなくとも許されない無礼と非礼のオンパレードでした。
「無礼なっ」
入室許可もなく入り込んだカルメンに、声を上げたフランカが間に立ちます。ひらりと彼女のドレスが広がりました。勇敢ですが、大丈夫でしょうか。カルメンはワイン瓶で殴りかかる礼儀知らずの女性ですのに。万が一にもフランカがケガをしたら……リオ兄様に合わせる顔がありません。
風に押されるように、スカートが廊下の方へ引かれます。そこで気づきました。隣のテュフォン様の表情が強張っておられることに。
他国の国王陛下を怒らせてしまったわ。
「申し訳ございません、陛下。この哀れな者の無礼をお許しくださいませ」
そもそも許可なく入室するなんて、どうお詫びしたらいいのか。こんな女性でも我が国の民ですもの、やはり状況を理解できる上位者が詫びるべきよね。丁寧に頭を下げる私に頷いた様子だが、その表情はまだ和らぐには程遠いものでした。
「なるほど、お前が『異物』か」
立ち上がった彼が、手のひらをカルメンへ向けます。次の瞬間、彼女は飛ばされて部屋から廊下に転がりました。転がったカルメンの足が露わになります。赤ワインで濡れた夜着のような姿が廊下に横たわり、その太腿まで布がめくれました。
今の……魔法かしら。本当に竜なの? カルメンに触れずに追い出したテュフォン様に驚いた私ですが、親友はまったく別の視点で驚いていました。
「やだ……あの子、下着履いてないの?」
茫然と素で呟いたフランカが、慌てて扇で赤い顔を隠しました。言われて気づいたのですけれど、確かにカルメンの捲れた布に下着の線が見えません。薄いドレス一枚なのだから、濡れたら下着の線や色が透けるのが普通……そこまで考えてぞっとしました。
貴族令嬢でない市井の女性も、下着は当然身につけます。夜の商売をする女性であっても、下着くらいは身に付けると思いますけれど。これでは本当に痴女じゃありませんか。
女性たちが注目する場所と、テュフォン様が眉をひそめた理由は違っていたようです。
「予言は崩したというに忌々しい」
予言って何かしら?
「も、申し訳ございません。騎士を突き飛ばして逃げました。すぐに牢へ運びます」
貴人へ無礼を働く女に縄をかける騎士は、どこを掴んで連れていけばいいか困惑していた。
当然でしょうね。ほとんど裸と呼んで差し支えない格好なのです。王宮に勤める騎士は貴族の次男や三男が多く、女性は優しく扱うマナーが身についています。罪人といえど、裸の女性を連行する経験はありません。
「よい、我が飛ばしてやろう」
呆れ声のテュフォン様が虫を追い払うような所作で手を振り、廊下で失神するカルメンが消えました。忽然と消えた彼女を探す騎士へ、テュフォン様は足元を指差します。
「地下牢だ。一番手前の部屋に入れた。我が命があるまで、外へ出すな」
目の前で無造作に行われた出来事に目を瞠り、私は言葉を失いました。
「はっ」
慌てた騎士は言葉を疑うことなく一礼して下がりますが……。今の魔法のような出来事は何でしたのかしら。フランカと顔を見合わせたところに、今度は礼儀正しいノックの音が響きました。
「ですが、鱗がありませんわ。翼も……」
「後で見せてやろう。背に乗せて飛んでも良いぞ。其方は我が妻になるのだから」
話が理解できず、さらに首をかしげました。この方は説明が苦手なのではないかしら。頭にまったく内容が入ってきませんわ。
さすがに失礼な言葉を飲み込み、もう一度説明をお願いしようとした時、バタンと乱暴に扉が開かれました。伯母様が戻られた大広間の扉ではなく、廊下に繋がる扉が悲鳴をあげて開きます。お客様がいらっしゃらなくても、このような無作法をする侍女は王宮におりません。
「テュフォンは、竜帝陛下でしょお? あたくしの、『最推し』じゃなぁい! 素敵、あたくしを迎えにきてくれたのねぇ」
耳障りな声で飛び込んだ痴女に、私を含め部屋にいた全員が同時に眉をひそめました。
お可哀そうなこと、多少どころでなく頭がおかしいみたいですわ。陛下の敬称を持つ異性を呼び捨て、訳の分からない単語を叫び、迎えに来たと縋る……貴族令嬢でなくとも許されない無礼と非礼のオンパレードでした。
「無礼なっ」
入室許可もなく入り込んだカルメンに、声を上げたフランカが間に立ちます。ひらりと彼女のドレスが広がりました。勇敢ですが、大丈夫でしょうか。カルメンはワイン瓶で殴りかかる礼儀知らずの女性ですのに。万が一にもフランカがケガをしたら……リオ兄様に合わせる顔がありません。
風に押されるように、スカートが廊下の方へ引かれます。そこで気づきました。隣のテュフォン様の表情が強張っておられることに。
他国の国王陛下を怒らせてしまったわ。
「申し訳ございません、陛下。この哀れな者の無礼をお許しくださいませ」
そもそも許可なく入室するなんて、どうお詫びしたらいいのか。こんな女性でも我が国の民ですもの、やはり状況を理解できる上位者が詫びるべきよね。丁寧に頭を下げる私に頷いた様子だが、その表情はまだ和らぐには程遠いものでした。
「なるほど、お前が『異物』か」
立ち上がった彼が、手のひらをカルメンへ向けます。次の瞬間、彼女は飛ばされて部屋から廊下に転がりました。転がったカルメンの足が露わになります。赤ワインで濡れた夜着のような姿が廊下に横たわり、その太腿まで布がめくれました。
今の……魔法かしら。本当に竜なの? カルメンに触れずに追い出したテュフォン様に驚いた私ですが、親友はまったく別の視点で驚いていました。
「やだ……あの子、下着履いてないの?」
茫然と素で呟いたフランカが、慌てて扇で赤い顔を隠しました。言われて気づいたのですけれど、確かにカルメンの捲れた布に下着の線が見えません。薄いドレス一枚なのだから、濡れたら下着の線や色が透けるのが普通……そこまで考えてぞっとしました。
貴族令嬢でない市井の女性も、下着は当然身につけます。夜の商売をする女性であっても、下着くらいは身に付けると思いますけれど。これでは本当に痴女じゃありませんか。
女性たちが注目する場所と、テュフォン様が眉をひそめた理由は違っていたようです。
「予言は崩したというに忌々しい」
予言って何かしら?
「も、申し訳ございません。騎士を突き飛ばして逃げました。すぐに牢へ運びます」
貴人へ無礼を働く女に縄をかける騎士は、どこを掴んで連れていけばいいか困惑していた。
当然でしょうね。ほとんど裸と呼んで差し支えない格好なのです。王宮に勤める騎士は貴族の次男や三男が多く、女性は優しく扱うマナーが身についています。罪人といえど、裸の女性を連行する経験はありません。
「よい、我が飛ばしてやろう」
呆れ声のテュフォン様が虫を追い払うような所作で手を振り、廊下で失神するカルメンが消えました。忽然と消えた彼女を探す騎士へ、テュフォン様は足元を指差します。
「地下牢だ。一番手前の部屋に入れた。我が命があるまで、外へ出すな」
目の前で無造作に行われた出来事に目を瞠り、私は言葉を失いました。
「はっ」
慌てた騎士は言葉を疑うことなく一礼して下がりますが……。今の魔法のような出来事は何でしたのかしら。フランカと顔を見合わせたところに、今度は礼儀正しいノックの音が響きました。
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