【完結】✴︎私と結婚しない王太子(あなた)に存在価値はありませんのよ?

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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本編

第43話 恩赦ではない(2)(SIDEクラウディオ)

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 凍る夜を過ごし、生きて朝を迎えたことに絶望する。これは恩赦による釈放じゃない。ただの集団暴行で民の怒りのはけ口にされた。

 歯向かおうとすると何らかの強制力で動けなくなる。ただ一方的にやられ、体中の骨を折られても数日で元に戻ってしまう。こんな体は要らない。死ねる私の身体を返してくれ。

 地面を這って、落ちていた食料を口に放り込む。腐ったゴミであっても、食べなければ腹が減るのだ。餓死できないかと試したが、途中で断念した。そんな苦しい死に方は無理だ。

 街を這って過ごすうち、父上に会った。街の片隅で、小汚い男達に毬のように蹴られて泣いている。情けない姿に、あれが私の父で国王だったのかと疑った。

 通りがかった子供から食料を奪おうとして、親らしき男に蹴られた。加減なく全力でだ。頭の骨が陥没した。目があらぬ方角を向き、バランスが取れない。呻くことも出来なくなり、数日転がっていた。街は徐々に豊かになっていく。

 それにつれて、食べ物を恵んでくれる人間が出てきた。殴らずに通り過ぎる人も増えてくる。人々の生活が豊かになれば、心も満たされていく――眠い授業で習った話が、目の前で実践されていた。

 この国は他国に比べたら豊かだ。それでもまだ豊かになる余地があり、父や私では成し遂げられなかった。身体を傷つけられることが減るにつれて、心が痛む機会が増える。

 幸せそうに歩く恋人や、小さな子供を連れた親子の姿に涙が零れた。まだ泣けることに安心する。大丈夫、死ねなくても私はまだ人間だ。

 ある日、懐かしい声を聞いた。誘われるように近づけば、カルメンがいる。

「ぐぎゃぁあああ! くそ、死ねっ! ぐああう」

 まるで獣のような声を上げる彼女の顔はぐちゃぐちゃだった。殴りながら犯される彼女を見て、助けに行こうと……思わない。なぜあの娘を選んだのか、自分が理解できなかった。身も心も汚れた彼女は、手に1枚の銅貨を握りしめて自ら足を開く。乱暴に犯されながら、顔も体もずたずたに傷つけられていた。

「なんだ、あんちゃんも犯りてぇのか? あのアバズレは銅1枚でやらしてくれるぜ。殴りながら犯すような犯罪者専門だから、首を絞めてやらねえとな」

 下卑た性癖を口にしながら、男は次の番を待つように並んだ。崩れた彼女の顔はあり得ない動きで元に戻っていく。すると元通りになったカルメンに、さっきの男が跨った。腰を振りながら首を絞める男に甘えるような声を出すカルメンに背を向ける。
 私は何を裏切ったのか。すべてを失って、ようやくその片鱗が見えた気がする。この罰がいつ終わるのか分からない。絶望に塗りつぶされた身体と心を引きずり、街の端で今日も蹲った。
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