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本編
第45話 運命を断ち切る力を(2)(SIDEエミリオ)
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彼女ではない誰かが話したなら、荒唐無稽だと笑い飛ばしたかもしれない。しかしフランカの為人を知る僕は、驚きに目を瞠りながらも最後まで聞いた。
「私が話したことを信じてください。17歳になったティファは王太子クラウディオに婚約破棄されるの」
フランシスカは王太子を「クラウディオ」と敬称なしで呼んだ。不敬罪に問われる呼び方を使ったのは、彼女にとって王太子は尊敬するに値しないと示したのだ。
「僕は君を信じる」
疑う要素はない。婚約破棄は願ったりだ。こちらから婚約解消する手間が不要になるなら、多少の不名誉は僕が晴らせばいい。
「ねえ、フランカ。僕達は良い協力関係を築けると思う。ティファのため、僕達の幸せな未来のため、王家を潰さないか?」
頷いて口元を緩めたフランカの、どこか黒い感情を滲ませた微笑が美しくて、彼女の婚約者になれた幸運に感謝した。
――数年後、過去にフランカに聞いた話が、予言のように実現されていく。愚かな王太子が、突然現れた小娘に夢中になり……ティファと距離を取り始めた。
悔しい気持ちはなく、残り時間を数えながら胸を弾ませる。その日のための布石は打った。あとは最後の楔を打ち込む、クラウディオの一手だけ。
「あと少しですわね」
「もうすぐ婚約破棄が行われ、ティファは自由になる」
薔薇の庭で顔を近づけて話し込む。はたからは仲のいい婚約者同士だと微笑ましく見守られているが、話の内容は人に聞かせられなかった。
フランカがもつ異世界の記憶は、父にも話していない。秘密を持つ者は、最低限でいい。僕とフランカだけ。父ベクトルと奮闘していた時期とは違う、共通の目線で隣に立つ婚約者の存在が心強かった。
ティファは、王太子に惚れていない。義務と諦めで嫁ぐだけだ。ならば、婚約を解消したら妹を僕達で守ればいい。
あの馬鹿王子の暴走を招くため、僕は妹から離れなければならない。勉学も剣術も、すべてにおいて僕に勝てない王太子は、妹だけの時を狙うだろう。奴がティファのエスコートをしない、王妃の誕生祝いの夜会が、婚約破棄騒動の合図だった。
せめてもの詫びにと、妹にドレスを贈った。淡いピンクのドレスは銀髪に映える。フランカは前世の記憶で、スチルと呼ばれる風景を覚えていた。ミントグリーンのドレスを着たティファが断罪されるシーンだったと聞き、違う色のドレスを用意した。
これが僕達の抵抗だ。思い通りになんてさせない。
「ティファが傷つかないか、心配だわ」
「大丈夫だよ、彼女は強いし……当日は君が隣にいてくれるんだろう?」
「ええ。もちろんよ」
フランシスカの手を握り、ガゼボのソファに並んで腰掛けた僕の耳に、駆け寄る足音が届いた。専属侍女を従えたティファだ。話は聞こえないが合図は見える位置で、侍女は足を止めた。
「リオ兄様、フランカも! 私も呼んでくれたらいいのに」
唇を尖らせて砕けた口調で文句を言う妹が、淡いオレンジのワンピースの裾を摘んで、向かいのソファに腰掛けた。自分に内緒で2人がお茶をしていたと拗ねている。可愛い妹の様子に顔を見合わせ、フランカと微笑んだ。
「私が話したことを信じてください。17歳になったティファは王太子クラウディオに婚約破棄されるの」
フランシスカは王太子を「クラウディオ」と敬称なしで呼んだ。不敬罪に問われる呼び方を使ったのは、彼女にとって王太子は尊敬するに値しないと示したのだ。
「僕は君を信じる」
疑う要素はない。婚約破棄は願ったりだ。こちらから婚約解消する手間が不要になるなら、多少の不名誉は僕が晴らせばいい。
「ねえ、フランカ。僕達は良い協力関係を築けると思う。ティファのため、僕達の幸せな未来のため、王家を潰さないか?」
頷いて口元を緩めたフランカの、どこか黒い感情を滲ませた微笑が美しくて、彼女の婚約者になれた幸運に感謝した。
――数年後、過去にフランカに聞いた話が、予言のように実現されていく。愚かな王太子が、突然現れた小娘に夢中になり……ティファと距離を取り始めた。
悔しい気持ちはなく、残り時間を数えながら胸を弾ませる。その日のための布石は打った。あとは最後の楔を打ち込む、クラウディオの一手だけ。
「あと少しですわね」
「もうすぐ婚約破棄が行われ、ティファは自由になる」
薔薇の庭で顔を近づけて話し込む。はたからは仲のいい婚約者同士だと微笑ましく見守られているが、話の内容は人に聞かせられなかった。
フランカがもつ異世界の記憶は、父にも話していない。秘密を持つ者は、最低限でいい。僕とフランカだけ。父ベクトルと奮闘していた時期とは違う、共通の目線で隣に立つ婚約者の存在が心強かった。
ティファは、王太子に惚れていない。義務と諦めで嫁ぐだけだ。ならば、婚約を解消したら妹を僕達で守ればいい。
あの馬鹿王子の暴走を招くため、僕は妹から離れなければならない。勉学も剣術も、すべてにおいて僕に勝てない王太子は、妹だけの時を狙うだろう。奴がティファのエスコートをしない、王妃の誕生祝いの夜会が、婚約破棄騒動の合図だった。
せめてもの詫びにと、妹にドレスを贈った。淡いピンクのドレスは銀髪に映える。フランカは前世の記憶で、スチルと呼ばれる風景を覚えていた。ミントグリーンのドレスを着たティファが断罪されるシーンだったと聞き、違う色のドレスを用意した。
これが僕達の抵抗だ。思い通りになんてさせない。
「ティファが傷つかないか、心配だわ」
「大丈夫だよ、彼女は強いし……当日は君が隣にいてくれるんだろう?」
「ええ。もちろんよ」
フランシスカの手を握り、ガゼボのソファに並んで腰掛けた僕の耳に、駆け寄る足音が届いた。専属侍女を従えたティファだ。話は聞こえないが合図は見える位置で、侍女は足を止めた。
「リオ兄様、フランカも! 私も呼んでくれたらいいのに」
唇を尖らせて砕けた口調で文句を言う妹が、淡いオレンジのワンピースの裾を摘んで、向かいのソファに腰掛けた。自分に内緒で2人がお茶をしていたと拗ねている。可愛い妹の様子に顔を見合わせ、フランカと微笑んだ。
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